太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

書評

水曜どうでしょうディレクター対談『腹を割って話した』で語られた「自分にとっての温泉を掘る」話

温泉を掘り出していく 『水曜どうでしょう』は、良くも悪くも藤村Dと嬉野Dがいなければできない番組であろう。ローカルテレビ局のディレクターでありながら、ナレーションやカメラも担当しながら、大泉洋や鈴井貴之というタレントと掛け合う「出演者」として…

村上春樹『風の歌を聴け』感想〜「風の歌」とは何か?

『風の歌を聴け』再々読 『風の歌を聴け』を15年ぶりに再読したのはちょうど1年前。決してハルキストとは言えなかった僕は「はしか」に掛かったかのように読み直していって、パロディらしきものも書いたり、『風の歌を聴け』を題材にした読書会を実施したり…

内田樹『街場のメディア論』〜贈与と反対給付義務の「前借り」で読み解くメディア論

講義録のような「街場」シリーズ 内田樹の「街場」シリーズ4作目。「街場」シリーズとは、大学でのディスカッションのテープ起こしを元に書かれた本であり、既に多数の「街場」本が出版されている。 街場の現代思想 (文春文庫)作者:内田 樹文藝春秋Amazon 街…

『地獄先生ぬ〜べ〜NEO』〜12年後の僕らは「ぜんぶ悪霊のせい」とは言えなくなったけれど

地獄先生ぬ~べ~再び 『地獄先生ぬ~べ~』と言えば僕自身のバイブルでもあった。「鬼の手」を持つ小学校教師ぬ~べ~の圧倒的な強さや優しさを軸にしながらも、妖怪、都市伝説、時事ネタ、ホビー、ラブコメ、お色気などの要素がないまぜになった1話完結の…

いのうえさきこ『私のご飯がまずいのはお前が隣にいるからだ』〜メシマズになる料理ウンチクに気をつけたくなる漫画

私のご飯がまずいのはお前が隣にいるからだ 思わずドキリとさせられる強烈なタイトル。確かに同席をすると「ご飯のまずくなる」相手というのは居て、ひたすらマウンティングしてきたり、興味のない話題をごり押ししては反応が悪いとご機嫌ななめになるといっ…

クリス・アンダーソン『フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略 』〜「情報はフリーになるべきだ」から「情報はフリーになりたがる」への変遷にみるモノの式神化

「情報はフリーになりたがる」の歴史 「情報はフリーになりたがる」という言葉を聞く機会が増えた。インターネットに限らず、情報を引き出すためのコストは下がり続け、提供者の側も無料であることを前提としている人が多いです。『フリー 〈無料〉からお金…

かとうちあき『野宿入門』で野宿道における「建てる・住まう・考える」に入門する

究極のノマドとしての野宿 ノマドについて考えていくと、ある系譜においてはホームレスの意味と方法論に行き着く。「ホームレス」とは文字通り、「家がない」という意味であるが、出張が多い仕事を続けていると「自分の家を持っている」という状態に疑問を持…

平野啓一郎『私とは何か――「個人」から「分人」へ』〜ソーシャルメディア時代における「本当の私」はどこにある?

「分人」再検討 本書は平野啓一郎が自著の小説である『ドーン』で描いた「分人(dividual)」という概念について、著者自身の自伝的な要素を含めて一般に向けて解説した書籍である。 ドーン (講談社文庫)作者:平野 啓一郎講談社Amazon すべての間違いの元は…

岡田斗司夫『いや、上京するの面倒くさいし地元の方が楽だよね』〜地元で楽に暮らせるナリワイを作るには「えこひいき」されるようにしよう

地元志向とネット 本書は香川県で行われた岡田斗司夫の講演「ネット時代こそ地方在住者のチャンスだ!」を再構成した電子書籍である。東京と地方での活動の違いや、今後の働き方や人口流動などが話題になっている。 無理やり一人暮らしする必要はないし、親…

毎日新聞社『リアル30's "生きづらさ"を理解するために』〜何かを期待して裏切られた世代のダウナーなオフ会

30代のリアル 本書はいわゆる「失われた20年」に青春期を過ごして、就職時には氷河期だった30代の人々へのインタビュー集である。現在における30代の人々はバブル景気の中で幼少期を過ごし、学歴重視や大手企業信奉の非常に強い時期に青春を過ごしている。そ…

東浩紀『弱いつながり』〜環境管理型権力を出し抜く「観光客」の生き方

Googleが予測できない言葉を手に入れろ! 東浩紀の新著である『弱いつながり 検索ワードを探す旅』。現代日本におけるインターネット論でありながら旅行記でもあり、著者の思想が平易な言葉で引用・解説されながら、一種の自己啓発的な様相も帯びる自在性が…

久住昌之『野武士、西へ 二年間の散歩』〜孤独の東海道中膝栗毛

月一散歩で大阪まで 『野武士のグルメ 増量新装版』から勝手に続いていく野武士シリーズ。もともと「野武士」というのは『孤独のグルメ (扶桑社文庫)』の文庫版にのみ収録されてる巻末エッセイで、店に入ったら野武士のように一言「酒!」と言えば万事が済む…

三部けい『僕だけがいない街』〜小学生時代にバイツァ・ダストしながら明らかになっていく連続誘拐殺人事件の真相

僕だけがいない街 『僕だけがいない街(1) (角川コミックス・エース)』を4巻まで読んだ。自分の周りで事件が起きそうになると事件の原因が取り除かれるまで事件の直前の状態に巻き戻る(=タイムリープする)能力が勝手に発動してしまう主人公が18年前に体験…

答えのない謎は結果平等〜Skype読書会『ドグラ・マグラ』雑感

スカイプ読書会をした 昨夜は『第3回Skype読書会「ウィスキーを片手に『ドグラ・マグラ』(夢野久作)」開催のお知らせ - 太陽がまぶしかったから』をしていた。花火大会やお祭り情報を眺めながら、Skypeを介して『ドグラ・マグラ』について話し合うというのは…

第3回Skype読書会「ウィスキーを片手に『ドグラ・マグラ』(夢野久作)」開催のお知らせ

Skype読書会を開催します 『Skype読書会を開催して難しい本を理解できるようにしよう - 太陽がまぶしかったから』においてSkypeを用いた音声チャットによる読書会を紹介しました。これまで2回やってきたのですが、第3回は『ドグラ・マグラ』 を題材に下記の…

切符を耳の穴に入れて運ぶライフハック

photo by ed_needs_a_bicycle 切符をなくさないように 村上春樹おじさんのエッセイ集である『村上朝日堂 (新潮文庫)』を少しづつ読んでいるのだけど、その中にある「電車の切符を耳の穴に入れる」という話が頭の中に残っている。曰く、切符をポケットにいれ…

谷崎潤一郎『痴人の愛』感想〜馬乗りされたい僕と応じるたびに変わる君

婚活小説としての痴人の愛 谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んだ。馴染み深い表紙の新潮文庫版ではなくて中公文庫版。Kindleで買うと新潮文庫版が490円で、中公文庫版が350円だったという即物的な理由なのだけど、そもそも電子書籍で価格差が発生することがある…

Skype読書会を開催して難しい本を理解できるようにしよう

第二回Skype読書会 昨夜は『一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』を題材にしたSkype読書会をしていた。Skype読書会とはその名の通り、テーマとなった本についてSkypeの音声チャット機能を用いて複数人で語り合う会合のこと。前回は『車輪の下で (光文社…

第2回Skype読書会『一九八四年』〜意志力対決に勝ち続ける意志力

photo by Diodoro 自己洗脳 連続出張でやられてるからちゃんと寝ようとしてるのに、夜中に会社からの電話で起こされたり、仕事量がパンクしてるのに長時間のMTGがあったりして頭がラリックマになっている。壊れかけのレディオがターゲットだったと想定できな…

『1984年』の言語論的転回と際限のないバズワード生成について

photo by Nina J. G. 1984年 『一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』を読んでいる。この作品って「監視社会」の代名詞的に言われるけれど、むしろ「言語論的転回」の話だと思う。「ニュースピーク(=新言語)」がまさにそうなのだけど、例えば「国家社会…

松澤大之『リングノートでムダな勉強をやめなさい』〜本のミニチュア化で「分かる」から「できる」へ

リングノート勉強法 『捨てる技術で能率アップ リングノートでムダな勉強をやめなさい 階層構造化で難関試験もらくらく突破!』で紹介されるリングノート勉強法は、資格を効率的に取得することを主目的とした勉強法です。リングノートというよりも、ファイリ…

Kindleのアンダーライン共有でミステリ小説のネタバレをされるかも

アンダーライン共有機能の悪用 以前にKindle Paperwhiteのアンダーライン共有機能を紹介した。 それで、Kindle Paperwhiteで本を読んでいると「◯◯人がハイライト」って感じでアンダーラインが既に引かれていて、ちょっと驚くとともにそんなことを思い出した…

『金田一耕助ファイル』の番号は発売順や事件順と違っているので36年間の探偵生活を並べ直す

金田一耕助ファイル Kindle で横溝正史の金田一耕助シリーズが配信されて揃えていたのだけど、ファイルの番号が実際の発売順と違っているので混乱する。『金田一耕助ファイル1 八つ墓村 (角川文庫)』に『金田一耕助ファイル2 本陣殺人事件 (角川文庫)』や…

第1回Skype読書会『車輪の下で』結論:恋って素敵

photo by katsrcool (Kool Cats Photography) 1,000,000 + View Skype読書会 今日は『http://circle.hatenablog.jp/entry/2013/12/30/190151』をやっていた。19時から23時までの長丁場。書評的なものはまた書くとして、一番伝えたかったのは『車輪の下で (光…

車輪の下「で」

photo by Pauline Mak 車輪の下で 『http://circle.hatenablog.jp/entry/2013/12/30/190151』の課題になっていた『車輪の下で (光文社古典新訳文庫) 』を読み終わった。光文社版の邦題は珍しい。これまで『車輪の下に (角川文庫 赤 79-4)』が例外的にあった…

大槻ケンヂ『サブカルで食う』〜普通の事が出来ないボンクラがサブカルで食うための4Jとは?

サブカルで食う 全国のサブカル糞野郎の皆さんハロニチワ。僕はサブカル糞野郎のフリをしている普通の人です。『渋谷直角 『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』〜自意識の不良債権を背負ったサブカルクソ野郎達への鎮魂歌 - …

山口揚平『なぜゴッホは貧乏、ピカソは金持ちだったのか?』〜ピカソはなぜ小切手を使い続けたか

photo by eVo photoゴッホとピカソ ゴッホといえば、「死後に評価された悲劇の画家」として有名です。生前に売れた作品は1点のみであったり、耳を切り落としたエピソードなどが思い起こされます。一方でピカソと言えばオークションを活用するなどして莫大な…

全ては自分メディアへの養分とするために。でもそんなに育ててどうするの?〜ちきりん『「Chikirinの日記」の育て方』

「Chikirinの日記」の育て方 本書は人気ブログである『Chikirinの日記』が、どのような戦略をもって運営されてきたかの裏側が書かれた本です。KDPによる自費出版であり、レイアウトを含めて id:Chikirin さん自身がされたとのことです。 その中の「気づき」…

梅田望夫の『ウェブ進化論』って正しかったよね

ウェブ進化論を読む 節約生活をしながら、趣味プログラミングを再開したり、毎日ブログを書くのが当たり前になったりしてくると、過去に読んだ梅田望夫の『ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)』が思い出されてきた。 そもそもウェブ上…

小玉歩『クビでも年収1億円』〜「年収1億円のうちの9900万円で『レスペクト』を買っているのさ」と言いたくなるけれど・・・

photo by 401(K) 2013クビでも年収1億円 (角川フォレスタ)作者:小玉 歩角川学芸出版Amazon 年収1億円の世界 『http://www.ikedakana.com/entry/2013/11/22/081408』では、年収100万円の中で、どのようにセツヤクエストをしていくかという話が展開されていく…