太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

広告視聴というのはユーザーが金をケチったことに対する懲役なのか?

広告という罰金と懲役

Xのアプリに「表示されなかった広告数」を見られる機能がリリースされた。Xのプレミアムプラスは過去30日間で8,432件の広告を非表示にし、4時間を節約したという。プレミアムプラスは月額6,080円と非常に高価であるため、節約時間に換算したら時給1,500円でバランスする難しいラインだ。

マーク・ザッカーバーグは「広告費というのは、企業がつまらないサービスやプロダクトをつくったことに対する罰金である」と言ったらしい。この言葉は「広告視聴というのはユーザーが金をケチったことに対する懲役である」なんてことも想起させる。企業が払う「罰金」は、ユーザーの「懲役」によって回収される。

最近はNetflixYouTubeのように「安い課金+広告」という第三の選択肢も登場している。完全な懲役免除ではなく、執行猶予や仮釈放のようなものだ。全額の罰金を払えない人には、軽い懲役と少額の罰金を組み合わせるプランが用意される。

時間と金のトレードオフは、もはや二者択一ではなくグラデーションになりつつある。つまり、広告モデルとは、時間で払うか金で払うかのポジション取りを迫る経済システムなのだけど、それだけでもないと感じている。

課金とは時間を買うこと?

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Amazonはコンビニ3Dプリンタがない時代のゆっくり転送方式になっていくのかも

Bambu Lab A1 mini 3D プリンター、組立簡単、500mm/s 高速高精度、全自動キャリブレーション&流量補正、静音造形(<48dB)FDM 3D プリンター、初心者向け、家庭用、日本語UI対応、造形サイズ:180 * 180 * 180mm³

デジタルな成果物を物理世界に召喚する

2026年のCESでNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「ChatGPTモーメントがフィジカルAIにもやってくる」と宣言した。フィジカルAIとは、AIがデジタル空間に閉じ込められた存在から脱却し、物理世界と直接相互作用する技術のことだ。自動運転やヒューマノイドロボットが代表例として語られるが、僕が注目しているのはもっと身近な接続点である。Physical(フィジカル)とDigital(デジタル)を融合した「Phygital(フィジタル)」という概念が2007年から提唱されてきたが、2026年の今、その実現コストが劇的に下がっている。

すでに3Dプリンタは3万円台で買える時代になっている。Bambu Lab A1 miniが39,800円、さっき見たらタイムセールで3万円を切っている。生成AIで3Dモデルを作り、3Dプリンタで出力すれば100分でフィギュアが完成する。専門的なモデリングスキルがなくても、プロンプトを入力するだけで「デジタル民芸品」を生み出せる時代だ。デジタルデータを物理世界に召喚する装置が、趣味の道具として手の届く価格になっている。

ちなみに、本作で作った刀剣はSTLファイル形式でエクスポートすることができる。つまり、3Dプリンタで実際に手に持てるものとして出力することが可能だ。刀鍛冶として生きていくストーリーモードとは別に、最初からあらゆる要素を使えるクリエイティブモードも存在する。なんでもありの3D刀剣デザインツールのように使うこともできるわけだ。

刀鍛冶シミュレーションゲームブレイドソング』が2026年1月22日にSteamで早期アクセスを開始した。本作では150種類以上のパーツと30種類以上の素材を組み合わせて、西洋剣から日本刀まであらゆる刀剣を鍛造できる。興味深いのは、ゲーム内で作成した剣をSTL形式でエクスポートし、3Dプリンターで出力できる機能が標準搭載されている点だ。デジタル空間で鍛えた「僕が考えた最強の剣」をオンデマンドに現実世界に生成できる。これはもはやファンタジーRPGの召喚魔法に近い体験なのではないか。

ラストワンマイルを繋ぐコンビニ3Dプリンタ

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普通にブログ更新しているのに「消えたブロガー」「あの人は今」という文脈で語られる存在になっていくおかしみ

消えたマンガ家

アルゴリズムから消えると存在しないことになる

「池田さんは今何しているんですか?」とはてな同窓会のような場で懐かしがられる存在になっていると聞いて少しむず痒くなった。過去のブックマークランキングを取得してみたら、2013〜2015年に集中していたし、10年以上前にいた懐かしい存在と言われればそうなのだろう。

# タイトル ブクマ数 投稿月
1 「30過ぎたら利息で暮らせ」を意識しないと人生が詰んでいく 1127 2015年09月
2 所得控除が受けられる積立制度を全力活用して月15万円で暮らせば貯まるよ 1108 2013年11月
3 不注意が起こるアーキテクチャを作っておきながら、不注意を責め立てて小銭を巻き上げる「フールペナルティ型ビジネス」 512 2013年11月
4 Google Docsのスプレッドシートで多言語対訳表が簡単に作れるよ 503 2015年07月
5 いまさらだけど梅田望夫の『ウェブ進化論』って正しかったよね 405 2013年11月
6 MacBook Proを売りに行ったらAppleIDとパスワードの提示を求められた話 387 2013年07月
7 1泊1400円のドヤでクラウドを活用して「暮らし」「働く」〜ノマドヤ・ワーキング 290 2013年08月
8 老害が「害」と言われる本質は正しいフィードバックを受けられないまま固定観念を強化してしまうこと 279 2013年10月
9 【都内近郊】超美味いおススメカレーベスト10をランキング形式で紹介する 271 2015年12月
10 プロブロガーはもう終わり! いま話題の「マイルドはてな男子」が キラキラTwitter女子を... 265 2014年05月

「フールペナルティ」という造語がバズって一般用語化したのが2013年。プロブロガーを皮肉りながらブログ論をしてたのが2014年。『エンゼルバンク』の名言を紹介して1000ブクマされたのが2015年。あの頃は確かにホットエントリの常連だったし、トークショー電子書籍や外部媒体への執筆依頼なんかもきていた。今読むと何も面白くないし、みんなどうかしていた。

自分の名前を出してもらえるだけでもありがたいことだが、定期的な生存報告どころかブログ更新だって普通にしているのにという複雑な感情もある。更新頻度は落ちているものの、今まで通りの場所で、あまり主張も文体も変わらずに書いているつもりだが、はてなブックマークに載らず、Xのおすすめタイムラインに流れていかず、検索エンジンにろくにインデックスされず、中国IPアドレスの謎BOTからのアクセス履歴ばかりが並ぶ。

選ばれざる者の安堵と諦念

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Web3をロールバックしてWeb2.1ブランチからやり直そう

ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ゼロ年代に戻りたい

このツイートを見て、ゼロ年代に提唱された「ゲームプレイワーキング」という概念が思い起こされてきた。ゲームプレイワーキングとは東浩紀らが「ギートステイト」というプロジェクトで提示した概念で、「労働がゲームそのものになる」という未来像である。

前回の記事でギートステイトについて書いたこともあって、ゼロ年代への郷愁を感じている自分がいる。Web 2.0マッシュアップ、フィードがGoogleを超える、トーナメントからバトルロイヤルへ、新本格ミステリの条件、ハイテンションな自己啓発。あの頃のインターネットには、まだ見ぬ未来への期待があった。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』では、ノスタルジーに囚われた大人たちが「20世紀」に回帰しようとする。僕自身、あの映画を見たときは「懐古厨乙」ぐらいの感覚だったのだが、ひろしの涙を他人事として見ていた僕たちが、気づけばひろしの立場にきてしまったということなのだろう。2026年2月から放送開始の『名探偵プリキュア!』では、主人公が2027年から1999年にタイムスリップするという。今度は平成というゼロ年代前後への懐古が子供向けコンテンツのモチーフになる時代が来ている。

作品 放映年 親世代 郷愁の対象
『オトナ帝国の逆襲』 2001年 団塊世代 万博の時代(1970年)
『名探偵プリキュア!』 2026年 氷河期〜ゆとり世代 1999年/ゼロ年代

決定的な違いは、子供達と一緒に観るであろう親の世代が変わったということだ。かつて「懐古厨乙」と冷笑していた側が、今度は懐古される側になった。ゼロ年代テン年代ときて、2020年代には思想的なディケイド表現がない。語呂の悪さやコロナ禍による断絶もあるだろうが、「令和」という元号にディケイド表現を取られてしまった側面が大きい。

Web2.0に戻りたい

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リアルタイムストラテジーゲーム化していくマルチエージェント開発はギートステイトにおけるスーパーゲーマーの夢を見るか

波状言論S改: 社会学・メタゲ-ム・自由

RTS インターフェースで複数エージェントを操作する時代

このツイートを見て、ゼロ年代に提唱された「ゲームプレイワーキング」という概念が思い起こされてきた。ゲームプレイワーキングとは東浩紀らが「ギートステイト」というプロジェクトで提示した概念で、「労働がゲームそのものになる」という未来像である。

実のところ僕は現物の『ギートステイト・ハンドブック』を読んだことがないので的外れかもしれないが、この概念だけはずっと心の中に残っていた。2009年に放送された神山健治監督の『東のエデン』のクライマックスで、ニートたちがエデンシステムを通じてミサイル迎撃のアイデアを出し合い、日本を救う場面を見て断片されたゲームプレイの Map-Reduce で物事が成し遂げられる時代になっていくのだと思ったことを覚えている。グリッドコンピューティングによるタンパク質解析なんて話もあった。

あいつらは直列に繋いでやれば、結構なポテンシャルを発揮するんだ。

主人公・滝沢朗のこのセリフは、分散した知的リソースを並列に動かして一つの成果を出すという構造を端的に表している。「上がりを決め込んだおっさんたち」に対抗するニートたちの集合知。その構造が今、AI エージェントのオーケストレーションとして目の前に現れている。RTS(Real-Time Strategy)ゲームのようなインターフェースで、複数の Claude Code エージェントを同時に操作するという発想だ。これは単なる GUI の改善ではなく、AIコーディングエージェントとの関わり方を根本から変える可能性を秘めている。

Claude Code の作者である Boris Cherny 氏は、常時 10〜20 のエージェントを並列で動かしているという。シングルエージェントの時代から、マルチエージェントオーケストレーションの時代へ。その流れの中で、複数エージェントを効率的に管理するための UI が次々と登場している。

マルチエージェント管理ツールの百花繚乱

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