『ドライブ・マイ・カー』感想
舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。
2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を抱える寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。
悲しみと“打ち明けられることのなかった秘密"に苛まれてきた家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく――。
『ドライブ・マイ・カー』を配信で観た。村上春樹の『女のいない男たち』内の短編を原作にしているし、周りの評判も良かったので観たかったのだけど、上映時間3時間に日和って配信になるまで待った。正直なところで導入部分は話が見えず、退屈に感じてしまったところもあるのだけど、アバンタイトル以降から流れる瀬戸大橋や広島の街並みなどの美しい風景に引き込まれていき、徐々に激しくなっていく情報の奔流が怒涛のように押し寄せてくる映画体験となった。エンターティメントとして面白く、語りたくなる部分が何箇所も出てくる。
すぐに2回目を観返して導入部の意味合いが分かったり、原作やモチーフとなっている『ワーニャ伯父さん』を読み直したり、スクリーンショットをとりながら検証したりして多層的な理解を深めたりする受容体験は良くも悪くもポスト配信時代のものであった。長大な文章になってしまうことが想像されるが、ひとつひとつ語っていきたい。以下、ネタバレを含む。