250 年前のチェス AI とバズったタークの正体
『ヴィクトリア朝時代のインターネット』著者、もうひとつの傑作。18 世紀のウィーンにチェスを指す自動人形(オートマトン)が現れた。あまりに優れた性能のためたちまちヨーロッパ中で話題になるが、その真相は? 荒俣宏推薦「早すぎた人工知能の歴史としてフルコース料理級の満足感がある」
18 世紀後半のウィーンで花開き始めたオートマトン技術について「陛下がいまちょうど目にされたものより、自分ならもっと驚くような効果を発揮し完璧に人を騙せるような機械を作れると信じております」と啖呵を切ったヴォルフガング・フォン・ケンペレン。
半年後、本当にチェスを指すオートマトン「ターク」を完成させ、当時のヨーロッパ中で権力者から科学者、一般市民まで熱狂したり疑ったりの大論争となるのだけど、この瞬間から始まる 250 年間の「機械 vs 人間」「本物 vs 偽物」「透明 vs 不透明」の攻防戦こそ、現代 AI 革命の起源がある。
この時点で、『美味しんぼ』の山岡士郎であり、『スーパーくいしん坊』の鍋島香介のように「出来らあっ!」で苦悩する現代のスタートアップ起業家そのものの姿に一気に話に引き込まれる。"Fake it till you make it."(できるまで、できるふりをしろ) の精神は 250 年前から変わらない。