太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

松澤大之『リングノートでムダな勉強をやめなさい』〜本のミニチュア化で「分かる」から「できる」へ

捨てる技術で能率アップ リングノートでムダな勉強をやめなさい 階層構造化で難関試験もらくらく突破!

リングノート勉強法

 『捨てる技術で能率アップ リングノートでムダな勉強をやめなさい 階層構造化で難関試験もらくらく突破!』で紹介されるリングノート勉強法は、資格を効率的に取得することを主目的とした勉強法です。リングノートというよりも、ファイリング勉強法という感じで、その手順は以下の通りです。

  • 教科書や参考書などのテキストに直接書き込む
  • テキストを断裁
  • 必要なページを選別
  • そのページだけをルーズリーフやファイルに綴る
  • ルーズリーフやファイルを持ち歩く

 この仕組み自体は、特別なことではありませんが、引っ越しを控えて本を捨てていくことを考える自分にとってある意味フィットしています。100%を資源ごみに出すのではなくて、必要なページだけを取っておくという事もできるからです。本エントリでは、なぜ効率がよくなるのかについて本の内容を噛み砕いて紹介しつつ、具体的なテクニックや応用について考えます。

「わかる」と「できる」は違う

 教科書を読んだ段階では分かった気になっても、試験問題に回答するとなるとできないという事がよく起こります。分かっても回答できない時には「覚えているか?」「表現できるか?」の阻害要因が考えられます。これについて本書では、解答への4ステップとして表現しており、前工程を「インプット」、後工程を「アウトプット」に位置づけています。

まずは「覚える」という状態を目指す

 そして、「分かる」と「暗記する」が組み合わさった状態を本書では「覚える」と表現しています。単純な丸暗記だけでは解答できないような問題も多いため、あくまで「理解を伴った暗記」である必要があります。

 これはブログなどでも同じかもしれません。細かい数値などは「毎回ググれば良い」というのはある意味では正しいですが、「覚える」という状態にないと、そもそも組み合わせるための道具の候補として思いつかない事が多いですし、概念からの逆引き検索は意外に難しいものです。

 今回に限らず自身の経験則を苦労して説明したら「それって○○効果だよね」みたいに一言で言われて、調べると「確かに・・・」ということは時々ある。例えば「無能は無能故に自身の無能さに気づけない」という事象にすら「ダニング・クルーガー効果」という名前がついていて驚いたのだけど、大抵の「あるある」には名前がついているものなのかもしれない。

 とはいえ意味の方を検索エンジンに入れても出てこないわけで、Google逆引き検索があれば良いのにとは思う。学問として体系的に学んだわけではないので、そういう部分は出てくるのだろう。

「覚える」ためのコツ

 「覚える」ためには以下の3ステップが必要であると本書には書かれています。

  • 必要な情報を1箇所にまとめる
  • なるほど感を得る
  • 繰り返す

 このうち「情報を1箇所にまとめる」の部分が冒頭に説明したリングノート作成です。教科書や参考書などのテキストをバラして必要なページだけをファイルしていきます。それを読み込んで理解し、設問を繰り返し解きます。

どの情報をまとめるのか

 ここで「必要」の選別基準が重要になってきます。そもそも資格試験であれば7〜8割方得点できれば合格できますので、試験範囲の全てを学ぶ必要はないわけです。ここでの基準は過去問からの「出題確率×配点」であり、期待配点順に優先順位をつけるとのことです。例えば「過去に3回に一度出題されて平均20点」の問題の期待配点は6.6点です。

 確かに、この期待配点が高い順に選別していき、期待配点の合計が合格点に達せば合格できる可能性がかなり高いという計算になります。ここまでを必須範囲にして、それ以降は学習時間の配分を減らしていき、一定以降を捨てられます。その代わり、選別した部分は何度も繰り返して必ず解けるようにします。学習時間配分=正答率とかんがえると「出題確率×配点×正答率」であり、学習期待値が算出できます。それって人生の問題もそうかもしれません。

リングノート学習法

 復習する時に情報が集約されてないと非効率的です。その一方で初期段階からスクラップを作ってしまうと入れ替えが難しくなるため、ファイル形式にして必要があれば入れ替えるようにします。情報集約の観点から、講義ノートや関連トピックなどもテキストに直接書き込むことを前提にします。必要があれば問題集のページも挟み込みます。

 ここで重要なのは根幹となるテキストは同じものを使い続けることだと本書は言います。「覚える」時に同じテキストを繰り返し使い続けることで「あのページの右下の部分」みたいな形で思い出しやすくなりますし、同じことを何度も繰り返した事が安心感にも繋がってきます。

テキストの階層構造をイメージとして頭に入れてアウトプットする

 繰り返して覚える時に必要なテクニックとして、ある項目が何個あるか?を中心に覚えていくということが挙げられています。例えば法律問題であれば、「◯◯法は4つの対象があって」みたいな部分を最初に覚えて、その上で何があるかをたぐり寄せられるようにする事で、モレやダブリが起こる可能性を少なくします。それを行いやすくするために重要単語にはラインマーカーを引き、その個数も書いておくそうです。

 そして繰り返し読んだ事について、ページに書かれている階層構造を何もみないでメモ帳に再現することで、どこを覚えてないかが明確になるし、記憶をイメージで定着させる事ができるようになります。一字一句再現する必要はなくて、トピックスのタイトルや重要単語を再現します。これを本書では「書き捨て法」と呼んでいます。

 次のステップとして目次を読んだだけで再現していくようになれば教科書の内容はほぼモノにしたと判断できます。その上で問題文を読んだだけで、関連するページがイメージできるように対応付けを行っていきます。問題文に出てくる単語からページのイメージを連想できるようになれば、確実に関連事象を思い出せるとのことです。

 なかなか難しいとは思いますが、そこまで記憶に定着できれば確かに合格できそうです。

本のミニチュア化と効率主義

 この本を読んで連想したのは、岡田斗司夫がいう「本のミニチュア化」でした。ここでは単純に電子書籍化やライフログなどで考えていたのですが、断裁したり、記憶に定着させるというのも「ミニチュア化」なのかもせれません。というか4ヶ月も片付いてないのか。。。

 いくら本を持っていても読む時間が足りませんし、定着できているかは別問題です。正直な事を言えば、この本も捨てる前に何か書いておくかと思ったわけですが、こんな事が書かれていたというのを完全に忘れてました。

 自分なりのまとめノートを全ての本に作れればよいのかもしれませんが、それこそいくら時間があっても足りません。何を読むべきか、何を買うべきかについてもう少し意識的になるべきでした。

 もちろん教養とは無駄なことを知るためのものであり、必要かどうかの判断には、相応のメタ認知が前提になります。そもそも期待配点なんてわからないものが普通です。それでも、その場で分かったつもりになるだけでなくて、それなりに当たる可能性のある壁について「できる」状態になっているものを増やしていかなければ実際的な意味は何もないのかもしれません。

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