10 クローバーフィールド・レーンを観た
ずっと気になっていたが見れていなかった『10 クローバーフィールド・レーン』が、 Amazon Prime ビデオで無料になっていたので鑑賞した。『[asin:B00FYNCCYK:title=クローバーフィールド/HAKAISHA]』の直接的な続編ではなく、世界観の一部を共用したソリッドシチュエーション・サスペンス。
ファッションデザイナーの女性が自動車事故から目覚めたら、田舎の大柄親父が構築した地下シェルターに連れされていることに気づく。地下シェルターから出ようとすると、なんらかの攻撃によって空気汚染が起こっているから絶対に外に出るなと食い下がられて鍵をかけられる。彼女と大柄以外にもうひとりの男がシェルターに移ってきおり、彼も大柄に助けられたという。
シェルター生活のワクワク感と閉塞感
シェルターには備蓄食料やシャワーや娯楽などの施設が充実しており、最低限の生活をしていくには困らない。外に出たいが絶対に出られないという刷り込みをされながら、目の前に恵まれたシェルター生活がある状況で自発的に監禁を受け入れていく過程は、本作と同じく J.J エイブラムス が制作した『LOST』を思い出す。
本当に核ミサイルなどで攻撃されて「外にいた全員が死んだ」という話が真実であれば、助けてくれた命の恩人だが、本棚に「終焉の備え」という本があったり、「洪水が来てから箱庭を作ってどうする?」といった台詞などの終末思想妄想が見え隠れしており、ただの異常者による監禁事件の可能性を残す。
徐々にエスカレートする大柄の異常行動や、様々な疑念と証拠。それでいて汚染は本物であるというエビデンスがある状況。このあたりの「正解」は視聴者にとってもラスト近くまで明らかにならないのが良い感じ。異星人を匂わせるなかでの籠城生活はシャマラン監督の『サイン』も彷彿とさせる。ここまでで気になった人は是非本編を観て欲しい。
衝撃のラスト10分に頭がクラクラ(ネタバレ注意!!)
色々なイベントの結果として男が死んだり、お手製の防護服を作ってシェルターから脱出するのだけど、ここから先の展開は頭おかしい。普通の映画だったら汚染なんて嘘だったと分かったり、『1999年のゲーム・キッズ』の一編のように何らかの破滅が明らかになって、薄れゆく意識のなかで絶望エンドを迎えるもんだと思っていたが、そうは問屋がおろさない。
パッケージで思いっきりネタバレされているから今更だが、要するに言えば毒ガス攻撃が得意なフレンズやエイリアン型モンスターがでてきて、即席の防護服や火炎瓶で応戦する過激なジャンル変更。ただのファッションデザイナーがなんでそんなことができるのかの説明は一切なし。大柄親父や男は殺され損の可能性が微レ存だが、そこに対する内省も一切なし。そもそも男の防護服を作ってない時点で自分のことしか考えてない。
シャマラン監督って丁寧だったんだな
「衝撃のラスト10分を見逃すな!」というありがちな宣伝は出落ちに至るまでの伏線回収のカタルシスありきなのに、この作品は唐突なモンスター出落ちからSFアクション映画としての爽快感とかヒロイズムとかの話になってて、頭がクラクラ。ヒロインがモンスターと戦えるなら、これまでの人間相手のサスペンスはいったいなんだったのか。
ちなみに最大の謎だった『10 クローバーフィールド・レーン』というタイトルの由来は『10 Cloverfield Lane』という住所の看板で明らかとなる。清涼院流水なみの地名オチ。視聴体験としては先にも挙げたシャマラン監督の『サイン』に似ているが、シャマラン監督って意外に丁寧だったんだなと思えてくる。だけど、決して貶しているわけではなくて、想像の範疇を超えた面白さというかすごいものを観てしまった。