太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

映画

『ドライブ・マイ・カー』感想〜赦すための怒りをやり過ごしてしまった絶望と悲しみを乗り越えずに受け入れる

『ドライブ・マイ・カー』感想 舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。 2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を抱える寡黙…

『東京自転車節』感想〜東京2020の焼け野原を往復し続ける人間という名のロボットになりきれないロボット

『東京自転車節』レビュー 東京都でのコロナウィルス新規罹患者が5,000人を超え、台風も近づいているなかで家にいるべきかを悩んだが、今見ておくべき映画だと思いポレポレ東中野で鑑賞。奇しくも『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』の予告が流れて、ち…

『ミセス・ノイズィ』感想〜在宅ワークとワンオペ育児の両立という無理ゲーを覆い隠すノイズを発していたのは誰か

『ミセス・ノイズィ』感想 映画公開された時から気になっていたが、コロナ下で観られていなかった作品が配信レンタル解禁されたので鑑賞した。 小説家であり、母親でもある主人公・吉岡真紀(36)。 スランプ中の彼女の前に、ある日突如立ちはだかったのは、…

『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』感想〜拡張現実で「弱々しさ」を炙り出すホラー抜きのホラー映画に残る業

『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』 あなたは日本最凶の心霊スポット“犬鳴村"を知っていますか? 九州に実在する最恐の心霊スポット旧犬鳴トンネル。その近くには日本政府の統治が及ばない集落“犬鳴村"があり、そこに立ち入った者は決して戻れないという、都市伝…

『花束みたいな恋をした』感想〜サブカル神経衰弱では立ち向かえなかった<生活>といううすのろと<恋愛>という邪魔者

同じ音楽を違う音で聞いていた最高の5年間 配信解禁を待ち侘びていた『花束みたいな恋をした』をU-NEXTで観た。すでに Clubhouse やネットラジオなどで詳細なネタバレをされても何も感じない人間になってしまっていたのだけど、初鑑賞をすると全く語り尽くさ…

『ピーターラビット』感想〜「かわいい」にチャックがついたゴブリンスレイヤーと監視カメラの真実

映画『ピータラビット』レビュー ピーターは世界で一番幸せなウサギ。たくさんの仲間に囲まれ、画家のビアという心優しい大親友もいる。亡き両親のことを想うと寂しいけれど、ビアの存在がすべてを吹き飛ばしてくれる。ところがある日、大都会ロンドンから潔…

『アルプススタンドのはしの方』感想〜「進研ゼミの漫画」のようにいかなかった送りバントの青春と腹から声を出す瞬間への羨望

アルプススタンドのはしの方 高校野球夏の甲子園大会一回戦。 夢の舞台でスポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめる冴えない4人。 夢破れた演劇部員・安田と田宮、遅れてやってきた元野球部・藤野、帰宅部の成績優秀女子・宮下。 安田と…

『ノマドランド』感想〜アメリカ開拓者の伝統を背負わされた現代の楢山節考のロマンと実像の余白

『ノマドランド』感想 企業の倒産とともに、長年住み慣れた企業城下町の住処を失った女性、ファーン。彼女の選択は、一台の車に亡き夫との思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)"として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。 毎日…

『ジョーズ』感想〜4K HDR で観返すジョーズは現代のコロナ行政映画だった!?

『ジョーズ』を 4K HDR Dolby ATOMS で観る アカデミー賞受賞監督スティーヴン・スピルバーグ演出の『JAWS/ジョーズ』は、当時サスペンス映画に驚異的な新風を吹き込み、映画鑑賞そのものを変えてしまったと大きな話題を呼んだ作品だ。平和な海水浴場のアミ…

『鍵泥棒のメソッド』感想〜記憶喪失者のメソッド演技法によるリサーチと感情の差異的な追体験

鍵泥棒のメソッド 部長が観た邦画リストは打率7割5分は固い邦画リストなので初心者にもおすすめなのです pic.twitter.com/LtCEldwOIR— 服部昇大/映子さんseason8準備中 (@hattorixxx) 2020年12月14日 『鍵泥棒のメソッド』といえば『邦キチ!映子さん』の部…

『事故物件 怖い間取り』感想〜若手芸人にとっての実存的恐怖は心霊なんかよりも10年やってても売れないこと

事故物件住みます芸人の史実を元にしたフィクション TV番組への出演を条件に、「事故物件」で暮らすことになった芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)。その部屋で撮影した映像には白い“何か”が映っていた…。番組は盛り上がり、ネタ欲しさに事故物件を転々とするヤ…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想〜THRICE UPON A TIME

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観た もちろん総括的に観ることになると思うが、現時点で映画館に行くには密が過ぎるし二時間半の上映時間には憂鬱も混じってくる。自宅には快適なホームシアター環境があるし、他と同じように配信レンタルが出てからで…

ネタバレ回避駆動と感想戦参加チケットに変わりゆく映画館での鑑賞体験

シン・エヴァンゲリオンで揺れる思い 新世紀エヴァンゲリオンが完結する。深夜放送で話題になった頃に録画したり、考察コミュニティに入り浸ったり、二次創作やゲームを含めて楽しんでいたのだけど旧劇場版で自分の中ではいったんの終結。序破Qも映画館で鑑…

『カメラを止めるな!』に描かれる野戦昇進の爽快さと危うさ

カメラを止めるな! 映画館で『カメラを止めるな!』を観ていたのだけど Amazon Prime で無料になったのでもう一度見直した。当時はリピーター客が多くて序盤の伏線で「分かっている笑い」をされてちょっと嫌だったのだけど、確かに二回目こそが面白い映画で…

『10 クローバーフィールド・レーン』〜シャマラン監督が丁寧と思える衝撃のラスト10分に頭がクラクラ

10 クローバーフィールド・レーンを観た ずっと気になっていたが見れていなかった『10 クローバーフィールド・レーン』が、 Amazon Prime ビデオで無料になっていたので鑑賞した。『クローバーフィールド/HAKAISHA』の直接的な続編ではなく、世界観の一部を…

映画『闇金ウシジマくん』感想〜原作継ぎ接ぎシチュエーションを踊らされる人物の代替可能性と現実侵食

ドラマの流れを組む映画版 漫画版の『闇金ウシジマくん』が好きで、ときどき読み返している。ドラマ版についてもリアルタイムで観ていたのだけど、出来としては微妙であったので映画版は未見であった。『山田孝之主演「闇金ウシジマくん」がドラマ&映画で再…

『貞子vs伽椰子』のメイキング特報で明らかになる貞子役の爽やかな素顔

Amazonプライムでメイキング映像が公開 エイプリルフール企画から始まった白石晃士監督の『貞子vs伽椰子』 https://sadakaya-sousenkyo.jp/ さやかや総戦恐の政見放送などの企画が展開されているのだけど、最近になってメイキング映像が、Amazonプライムビデ…

『黒い家』感想〜サイコパスにとっての保険金殺人の位置付けとは?

黒い家に住まう奇妙な家族の物語 ここのところでAmazonプライムで90年台後半〜ゼロ年代に流行ったジャパニーズホラーを観ることが多い。レンタルビデオ屋で取り寄せ対象になっている作品も無料で観られるのがありがたい。 「この人間には心がない」 現代人の…

『ボクソール★ライドショー』感想〜日本初の4DX専用POVでカメラに憑依

日本初の4DX専用ムービー ちょっと前になるのだけど、日本初(おそらく世界初)の4DX専用ムービーである『ボクソールライドショー』の初日舞台挨拶を観てきた。4DXフル活用、白石晃士監督、『コワすぎ!』のコンビが出演とオレ得要素が詰まっている。 4DX映…

『インターステラー』感想〜愛は正直度90%の約束を遡って本物にする引力

名画座でインターステラ―を観た 『インターステラ―』を名画座で改めて観る機会があった。DVDでは鑑賞済みであり、僕の書く文章に「宇宙」「五次元」「引力」といった単語が出てくるのも、この映画の影響が大きかった。 「恋に落ちる」と表現するように恋愛感…

1300円で名作映画2本立てが大スクリーン観られる名画座に連れていこう

いま名画座がアツい 最近になって、名画座通いが趣味のひとつになってきている。名画座と言えば「昭和!」っていう雰囲気もあるのだけど、探せば結構残っているし、上映する映画やサービスも現代化している。例えば池袋の新文芸坐の今週末は激アツ2本立てで1…

『戦慄怪奇ファイルコワすぎ!最終章』感想〜運命に叛逆するために確固たる意志で「間違ってライ麦畑の崖から落ちる」物語

戦慄怪奇ファイルコワすぎ!最終章 『戦慄怪奇ファイルコワすぎ!最終章』について、発売記念イベントの話を書いたのだけど、内容については書いていなかった。劇場で観てからDVDでも見なおしたり、白石監督本人による「パンフレット同人誌」である非公式報…

『ゴーン・ガール』感想〜完璧なエイミーのために塗り替える記録と現実

[asin:B00U0U5TBU:image:large] ゴーン・ガールを観た GWは実家に戻ってきていて暇なので映画を何本も観ている。ボンクラ映画が多いのだけど一本ぐらいはまともなのを観ようと『[asin:B00NLZRZ4A:title=ゴーン・ガール]』を借りてきた。『ミステリー好きで『…

コワすぎ!最終章DVD発売イベントで呪力注入をしてもらった

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』に蝕まれていく ニコニコ生放送の怪奇ドラマ特集で気になり、『オカルト』で完全にハマった白石晃士監督の世界。フェイクドキュメンタリー(=モキュメンタリー)を軸にしつつ、低予算ながらも貪欲にアイディアを取り込んで…

白石晃士監督『オカルト』感想~「渋谷駅前交差点自爆テロ事件」の深層を淡々と抉りだすモキュメンタリー

渋谷駅前交差点爆弾テロ事件のモキュメンタリー 本作は派遣社員による渋谷駅前交差点爆弾テロ事件に至る経緯を描いたモキュメンタリーである。「モキュメンタリー」とはドキュメンタリー風の映像で虚構を描いていく手法で『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』…

哲学的ゾンビ映画 としての『苦役列車』とパラレルワールドトラベラーとしての森山未來

映画『苦役列車』感想 第144回芥川賞受賞・西村賢太の小説を映画化。1986年。19歳の北町貫多は、明日のない暮らしを送っていた。ある日、職場で新入りの専門学生・日下部正二と知り合い、友達と呼べる存在となっていく。やがて、古本屋で店番をしている桜井…

坂口恭平『MY HOUSE』『モバイルハウスのつくりかた』〜所有の揺らぎの中を生きる

坂口恭平が気になる 坂口恭平については、佐々木俊尚が「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」をキュレーションしていたことから気になりはじめて「段ボールハウスで見る夢―新宿ホームレス物語」をはじめとして貧困問題や車中泊、ノマドなどを下衆な娯楽的要…

1作品520円でヨーロッパ各国の映画とトークショーが楽しめる『EUフィルムデーズ2014』でお洒落映画を観てきた

EUフィルムデーズ2014 昨日は東京国立近代美術館フィルムセンターで開催している『EUフィルムデーズ 2023』に友人と行ってきた。最近観ているのがアニメ映画や邦画ばかりになってきていて、ヨーロッパの映画について開拓するのもよいと思ったのだ。『EUフィ…