デニーズのオリエンタル冷やし担々麺にハマっている
ここ最近、ハマっているのが、デニーズのオリエンタル冷やし豆乳担々麺だ。ファミリーレストランで麺類を食べたいと思うこと自体がなかったのだけど、毎週末になると妙に食べたくなってしまう。セットのドリンクバーも頼んで、食後にゆっくりと読書をしている時間も楽しい。Kindle があれば、ファミレスは実質漫画喫茶となる。
デニーズの冷やし担々麺は、飯田商店が監修したというので試しに頼んでみたのがきっかけだ。固めで喉越しの良い細麺にパクチーや揚げ白玉団子や大ぶりの海老フリットなどが美味いのだけど、何よりも驚くのはマヨネーズを思わせるほどに濃厚な豆乳スープに黒酢の酸味やオリエンタルなスパイスが効いており、スープというよりも酸っぱ辛いマヨネーズタレを絡めた麺を啜るような背徳感である。付け合わせの唐揚げもライムの酸味が効いている。
苦手な人は苦手だろうし、そもそもこれは担々麺なのか?と思いつつも、子供の頃から冷やし中華にマヨネーズと和辛子をたっぷりかけて食べるのが好きだったので、そういう人には異常に刺さる味であった。SNS の反応を見てみると案の定での賛否両論で、よくもファミレスの期間限定看板メニューとしてこんな攻めたメニュー設計を通したものだと感心する。
「冷やし中華にマヨネーズ」の起源と広がり
そもそも冷やし中華にマヨネーズを添えるという食文化は、1957 年ごろに名古屋を中心に店舗展開するラーメンチェーン「スガキヤ」で初めて提供されたとされる。ラーメンをまろやかにする目的で試験的にマヨネーズを添えたのがきっかけであり、その後東海地方を中心に学校給食や地元の飲食店を通じて広がりを見せているという。現在では愛知県では 70%以上、岐阜・三重でも 60%以上の支持を獲得し、地域の夏の風物詩となっているという。
記憶をたどってみると子供の頃から冷やし中華にはマヨネーズをかけていて、「そういうものだ」という認識だった。なのにコンビニで買ったり、店で食べたりすると和辛子は付いているけどマヨネーズがなくて物足りない。袋入りのマヨネーズを別途買うことすらある。それで、ちょっと調べてみると東海地方や東北地方の一部ではマヨネーズをかけているという事が分かった。
全国的にはまだそれほど浸透していないと言われるものの、僕自身にとっては子供の頃から当たり前の懐かしい味であり、東京のコンビニの冷やし中華にマヨネーズの小袋がつかないのは良くない文化であると感じている。サラダコーナーに小袋のマヨネーズが置いていなかったら冷やし中華を買わない理由になるって 11 年前にも書いてて何も成長していない。
攻めた企画を大企業で通すための「監修」
今回の事例から感じたのは、大企業において大胆な企画を成功させるためには、有名なクリエイターや専門家による「監修」が重要であるということだ。内情は分からないけれども、この冷やし坦々麺は試食会においても議論が紛糾したと思われる。
それでも、飯田商店のような信頼できる監修者の名前があることで、決裁プロセスの迅速化であったり、消費者として試したり、一口目ではとっつきにくい味を受け入れやすくしたりすることができたのではないか。飯田商店側としてもブランドエクイティのリスクを飲んででも、全国展開のファミレスで展開することにしたのが攻めている。実は飯田商店店主の飯田将太は、デニーズでのアルバイト経験もあるとのことで、その縁もエモい。
また、7 月 9 日には温かいメニューとして「担々麺 Neo 分離の魔力~際立つスパイス」の販売もスタートする。こちらも 8 月下旬までの期間限定での販売となる。
同メニューは、ファミリーレストランの厨房という制約のなかでおいしさに妥協することなく開発した一杯の中にストーリー展開を持たせた自信作で、飯田氏は「よくぞ OK するなと思った」と振り返る。
7 月からは新メニューも出て、こちらも自ら「よくぞ OK するなと思った」と振り返っており、今から期待しているのだけど、そもそも「デニーズにラーメンを食べにいく」というパーセプション・チェンジを起こしている自分自身にも驚いている。
生成 AI と攻めた企画を裏付ける「監修」の役割
顧客企業が抱える課題を読み込ませると、細田氏の発想法をベースに AI がターゲットやインサイトの候補 3 つを生成。博報堂が持つ 32 年分の生活者観測データに基づいて評価したり改善案を提示したりする。競合ブランドなどの情報を整理し、10 の基本構文に沿って文言の完成度を向上。イラスト付きのコンセプトシートまで出力する
ところで、広告業界では博報堂グループが TBWA\HAKUHODO の細田高広を監修者とした AI ツール「細田 AI」を導入。氏のクリエイティブ思考を再現した AI を運用することで、半年間で 4,000 時間もの工数を削減することに成功し、企業が大胆な企画をよりスピーディーに推進できる環境を整備したという。
これ自体は AI による効率化が前面に出ているが、監修者 AI の存在自体がスキャフォールディングとして攻めた企画やキャッチコピーを提案するための追い風のような役割になる可能性が大きいのではないかと考えている。それは若手自身だけで考えたと言えば一蹴されてしまうような一見突飛なアイディアであっても、監修者の名前があることで一考してみる価値はあるのではないかと思わせる力だ。
デニーズの「オリエンタル冷やし担々麺」は大企業でもリスクを取るための手法として「監修」が重要であり、それをスケーラブルにするための監修付き AI ツールという話が出てくるのかもしれない。もちろん、監修の名前だけついていれば良いということではないのだけれども、守破離の守を AI がやってくれることで通しやすくなる企画は増えていくのではないかと考えている。