うなぎ串カブトには2号店がある
鰻の絶滅危惧が叫ばれて値段も高騰しているため、鰻重を食べる機会も殆んどなくなってしまったのだけど、好きか嫌いかで言えば最も好きな食べ物のひとつである事には変わりがない。
中でも、うなぎ串とお新香だけで飲む事に憧れがある。うなぎ串とは蒲焼に使わないうなぎの部位を使ったおつまみ。身の部分の切れ端を串に巻いた倶利伽羅や頭を焼いた半助。ひれ巻きも肝焼きもレバーも美味いのだけど、専門で出している店は殆んどなくなってしまった。
そんな我慢しているうちに店も鰻も本当に待ったなしだという危機感を覚えて早速新宿に行ってみた。が、電気のついていない店内に胸騒ぎ。また間に合わなかったのか……?
ガックリしながら近づいたら、本日は臨時休業かつ2号店がやっているとの事。Google Map にもなくて知らなかったが思い出横丁内にはカブトの2号店もあるのだ。
思い出横丁の雰囲気が好き
勢い勇んで13時に来ていたが2号店は15時開始とのことなのでバーミヤンで餃子やメンマをつまみながらビールと中国茶で優勝。改めて店舗に行ったら狭い店内は早速の満員だったので外でしばし待つ。
新宿の一等地が未だに手付かずなのは不思議だけど、思い出横丁の雰囲気が好きだから残して欲しい。もつ焼きウッチャンや岐阜屋など社会人なりたての頃からよく通っていた。
そんな事を思っていると人がぞろぞろと出てくる。焼き物は基本的にうなぎ串のひと揃えしか注文できないので、50分程度で7人が入れ替わるシステムのようだ。ラーメン二郎におけるロットのイメージ。
鰻が焼き上がるまで待つ時間もおいしい
カウンターだけの店内。おばちゃんが気さくに話しかけてきてくれる。
お供の日本酒。同行人は焼酎を頼んでいたが、割り物なしのストロングスタイル。でも脂の強いうなぎ串には焼酎のが合うかも。
お新香をツマミに焼き上がるのを待つ期待感を含めて鰻体験であろう。
鰻の頭から尻尾まで食べて応援
えり。小骨の残った頭のコリコリ感。柔らかく煮た半助しか食べた事がなかったのでいきなり野趣が溢れる。
まる。首のぶつ切り。
脊髄のコリコリと周りの肉のジューシーさが癖になる。一号店では裏メニューらしい。
こんなに美味しい部分を他の鰻屋はどうしているのかと与太話をしているとおばちゃんが「捨ててんのよ」と小声で話しかけてくる。色々な問題があるのは前提としても捨てるなら食べたい。
渇望していたヒレ焼きに舌鼓
ひれ。そもそもうなぎ串屋に行こうと思った鰻の尻尾。サクサク感と濃厚な鰻の脂で蒲焼きより美味いまである。鮭の皮が好きなら絶対にハマる。追加注文不可が恨めしいが1本限定だからの美味さもある。
きも。レバー以外の内臓。焼き鳥ややきとんだと肝=レバーなのでちょっと混乱。お吸い物で食べる事が多かったがタレを付けて串焼きにすると香ばしさと苦味のコントラストでまた違う旨さ。
蒲焼きとレバーでクライマックス
蒲焼き。ここで投入されるメインイベント。倶利伽羅にしないことでミニチュアながらも「本物」の満足感。岡田斗司夫が「ポテチで一番美味しいのは最初の一口」と書いたけど、鰻の蒲焼きへの付き合い方に通づる所があるのかも知れない。
レバー。これを作るまでの業の深さを感じるが、美味しんぼのフォアグラ対決に出てきてもおかしくなかった旨味だ。
そんなこんなでロット終了。次のロットのえりが焼き上がるまでの余韻を楽しんで退店する。夢が叶ったという充足感と、もっと食べたいという渇望感の相克。自然と込み上げてくるニヤケ顔を堪えて感想戦に向かう。