太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

ラーメンライス麺抜きおかず付きとしてのダルバート

ラーメン食べ歩きの引退とダルバートとの出会い

 『ラーメン発見伝』や『らーめん才遊記』を読み直したのをきっかけにラーメンの食べ歩きをゆるゆるとしていたのだけど、正直なところでピンと来る店がほとんどなかった。人気店だったり、レビューが高い店で食べているのだから、おかしいのは世界なのか自分なのか悩むこととなったが、家系ラーメンや天下一品でスープカレーのようにご飯を食べる美味さだけは衰えずにいた。それでも麺とご飯を一緒に食べるのはカロリーオーバーだし、麺抜きご飯大盛りを頼むわけにもいかないし、味の変化が少ない。

 そんな中、ダルバートと再会して沼に落ちた。3年ぐらい前に食べて美味しかった記憶があるのだけど、自分の中ではインド料理のミールズとの区別がついておらず、辛味が苦手な自分にとっては一緒くたに敬遠する対象となっていたのだった。

滋味深いスープと惣菜でご飯を無限に味変する

ダルバートネパール語:दालभात dālbhāt)は、ネパールの代表的な家庭料理で、ダル(daal=豆スープ)とバート(bhaat=米飯)の合成語であり、それにカレー味の野菜などのおかず(タルカリ)、漬物(アツァール)の2つを加えた4つがセットになった食事をいう。ネパールでは毎日食べられている、日本でいう定食にあたるものである[1]。

 ダルバートとはインドではなくネパールの定食で、ダル(豆スープ)とバート(ご飯)といくつかの惣菜を組み合わせたワンプレート料理。インドカレーを中心としたミールズから想像される複雑な辛さとは違い「滋味深い」という表現が合う旨味と塩気と香りがご飯を進ませる。

 いきなりスープやカレーや各種惣菜をご飯にかけて混ぜてしまうのが本場の食べ方だそうなのだけど、自分としてはグンドゥルック(発酵青菜炒め)やサーグ(青菜のスパイス炒め)などでご飯を進め、次にご飯をスプーンにとってスープやカレーにくぐらせる「ざるそば食べ」でご飯を綺麗なまま腹六分目にしたいところ。

 しかる後にスープやカレーや各種惣菜をご飯にかけては食べてを繰り返して旨味と食感を複雑化させる「ゾーン」を形成していく。味変の連続という観点においては鰻のひつまぶしにも近しいものがあるんじゃないかと。とにかく様々な角度からご飯を美味しく食べられるのがダルバートなのだ。

 ダルのお代わり自由なお店も多い。複雑化したご飯を食べきった後の締めにすするダルもまた美味い。濃厚な豆のポタージュはなぜだか天下一品のこってりをも想起する。

自分にとってのラーメンはご飯を美味しく食べるものだったのかもしれない

辛味噌をスープに置き、ごはんをすくったレンゲでスープインし、ご飯がスープと絡まりあった三位一体を口の中に運ぶ作業を繰り返す。これはスープカレーにおける「ざるそば食べ」である。スープカレーはご飯をスープにくぐらせることで飛躍的にうまくなる。そう考えていくと、天下一品はスープカレーなのではないかと思えてきた。

 思えば、天下一品が好きになったのはご飯との相性の良さであり、濃厚なスープカレーとしての美味さだった。その世界観において麺を邪魔者に感じており、ご飯とスープだけのセットがあれば良いのさえ思うようになっていた。

 複数の濃厚で滋味深いスープと惣菜とご飯の組み合わせを楽しめるラーメンライス麺抜きおかず付きとしてダルバート。それだけが答えではないと思うのだけど、ラーメンオタクではない自分がラーメンライスに求めてきた要素を満たすソリューションはこれだったのかもしれない。