デリタゲが重要となる時代
デリタゲとは「デリートターゲティング」の略称で、一般的には既に商品購入済みのユーザーを広告配信ターゲットから除外するような手法を指す。商品購入済みのユーザーを広告ターゲットから外す理由は「再度購入する確率が低いから」という当たり前の話だ。
しかしながら、ここのところでは「契約しても厄介な人」を除外するためにデリタゲが活用されているとも聞く。信用スコアが低い人とカードローンを契約しても焦げ付く可能性があるし、リテラシーが高くない人にサポートが薄いプランを契約されたら余計にコストがかかる。
このような齟齬やクレームが生まれているのは、デリタゲ戦略が不十分であったことの証左となる。デリタゲは単純なターゲティングリストの効率化の問題に限らず、契約後のリスクを減らすための「足切り」として重要な役割を担っている。
デリタゲは広告手法に限らずとも「玄人志向」なんてブランディングや最低限の前提知識がないと理解できない用語を羅列する手法もある。一見しては理解できないようにすることそのものが "not for me" のメタメッセージとなるのだ。
転換的デリタゲの問題
スポーツ新聞系サイトのよくわからん広告。「65歳のおばさんなのに20代の彼氏から毎晩」みたいなところまでインフレしてて、そこまでくると彼氏が特殊な性癖である可能性のが高い
— 池田仮名 (@bulldra) 2021年2月6日
ところで、ここ最近は「あからさまに怪しい広告」がむしろ増えたと感じている。「怪しい広告」は昔からあったが、プリクラに映る瞳の大きさのように徐々にインフレーションし続けて、「流石にそれはない」と一見して分かるレベル感にまでなっている。
https://twitter.com/yusumimi/status/1376881097619894277
この例だと振り込め詐欺の架け子や受け子だったり、夜逃げ業者を模した組織的空き巣の可能性があって、関わり合いになるのも怖いと思うのが普通の感覚だろう。つまり、そう思う人はデリタゲされているが、逆に言えば少しでも魅力に感じる人には「適性」がある。
つまり、リテラシーが低い人を排除するために使われてきたデリタゲが、今度はリテラシーが高い人を排除するために使われるようになった転換が起こっている。モスキートノイズを不快な音として認識できるからこそ排除対象となるように。
フールペナルティによるLTV向上
表現のインフレが進んで65歳までいってしまったのかは定かではないが、一見して怪しいと思ってしまう人をデリタゲして、こんな広告文でも問い合わせるような人は解約妨害や勝手追加購入をしやすいし、クレーム発生率も低いと統計分析的に極めて正しい行動をしている可能性もある。
これは過去に自分が「フールペナルティ型ビジネス」として指摘した話との共犯関係もあって、ちょっとした「障害」を並行的に用意することで、面倒だからサブスクリプションを続けるという「バカになる瞬間」を統計的に作り出せる。
解約妨害や勝手追加購入をシステム的に行う「ダークパターン」も契約者のリテラシーが低いほど効果が高くなる。フールぺネルティだ。このような広告を出すと自動的なデリタゲによってコンバージョン率こそ低くなるか、それでも契約してしまった人のLTV(顧客生涯価値)の期待値は大きいわけで、一見して分かる怪しい広告が転換的デリタゲとして悪用されていくのかもしれない。