アドブロック業者の養分乙
Murphy Appsを運営するDean Murphy氏にとって、わずか1週間で900万円という利益は好調以外の何ものでもないわけですが、Murphy氏はさらにこのアプリを活用したビジネスを展開し始めているとのこと。Murphy氏は、有名な広告ブロックツール「Adblock Plus」を開発・提供しているEyeo GmbHとの間で、AdBlock Plusが運用している広告ブロック回避の「ホワイトリスト」を共有することで合意に達しています。
AdBlock Plusで運用されている「ホワイトリスト」は、広告主がEyeoに料金を支払うことでAdBlock Plusのブロック機能を回避するというもの。
PCブラウザにおけるアドブロック業界のヤクザな流れについて、案の定でiOSのコンテンツブロッカー界隈も取り込まれつつある。1ヶ月近く前から予告していたので、せやな……って気分になる。
Safariで表示している任意のコンテンツブロックを「プログラミングできる」というのがポイント。逆に言えばそういうプラグインを作成して配布しなければならない。PCの世界にもアドブロックのためのプラグインがあるけど、どこまで普及したのかという話であるし、大抵のアドブロック開発会社はブロック解除のミカジメ料で成立している。iPhoneのアドブロック普及も彼らのヤクザな政治力を高める養分にすぎない。
結局のところで、アドブロック業者の目指すビジネスは広告主からのミカジメ料を安定的に手に入れるところにあって、その仕組みの普及は利己的な儲けのための養分にすぎない。もちろん、「ちゃんとした審査をする」とは言い張るだろうけれど、割り込んで審査できるだけのオーソリティーがあるのかという話だ。
「重要なもの」を判断する権限はだれにあるのか
以前からApple Storeを通さないアプリ内課金手段を設けた方が相対的に利益が上がるという問題があって、アプリ内課金を不可能にしたり、アプリ内課金の場合のみ価格が高くなるという露骨な措置をとっているアプリもあった。特に大きいのが電子書籍である。
GoogleもAppleもプラットフォームの構築と普及のための方策を練りながら「(自分たちにとって)重要なもの」を判別し、マージンをもらう権限を得るために血で血を洗う争いをし続けているのだけど、アドブロック業者のそれは横入りであり、プラットフォーマー競争としてのフェアネスに欠けていると個人的には思う。
GoogleもAppleも絶対の存在ではないけど、彼らに委ねることを選んだのはユーザーからの多数決的な総意がある。アドブロック業者についても総意であるなら仕方がないけど、嫌儲厨なのにミカジメ料をもらって解除するような儲け方を許容するロジックは少々厳しい。どうせ養分になるなら養分になる相手を選びたい。
正義とかフェアネスなんてどこにもない
検索キーワードなどの流入情報をもとにランディングページの文言やデザインを差し替えるLPOという技術があるのだけど、「アドブロックの有無」もLPOのシグナルになりえる。アドブロックの有無自体が顧客セグメンテーションの軸になるし、プレミアム広告ターゲティングの足切りにも使えるというわけだ。Google Analyticsへのイベント登録も可能だろう。
アドブロック利用者向けの対応はそれ自身で色々と考えられるし、別にアドブロックを使うなとは言わないけど、この辺の界隈における「正義」とか「フェアネス」なんてどこにもないんだなぁと改めて。