所得控除で貯金
僕自身が貯金額を増やすにあたってもっとも効果高かったのは、生活用口座に振り込まれる額を一定にして、その中で生活するようにすることだった。そうすれば、後のお金は「余裕資金」として勝手に運用されていくから植物のような心持ちでいられるし、給料の増減も直接的には気にならない。
現在は月15万円(通勤費は定期券)になるように調整している。「手取り15万円なんてプチブルだろ!」「15万じゃ絶対に暮らせない」といった声も上がるのだろうけれど、あくまで自分の生活クオリティを必要以上に下げない最低金額はこのぐらいの額というだけで、ひとによって調整すればよい。
残った額を積み立てる方法については色々とあるが、その中でも所得控除が効く制度を限度額まで活用するのがローリスク・ハイリターン。通常の投資はそもそも給料の段階で所得税が掛かっており、そこから運用益をだせばさらに税金が取られるという二重課税なのでそれらに比べれば期待値が低い。流動リスクやインフレリスクはどんな投資にもあるわけで、だったら別の観点からマシな方を選ぼうという事だ。
企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金は企業年金や退職金について明示的な管理を自身で行う制度。「拠出額」は確定していても、「受給額」は未確定であるため、「確定拠出年金」と呼ばれる。最大の特徴は、給料から天引きされる拠出金額が所得の扱いにならないために所得税が掛からず、かつ運用利益も非課税になること。また老齢給付金として受け取る場合は公的年金控除の対象となるため、給付時の税金も無料ないし超低水準に抑えられることも期待できる。
拠出額は企業の制度によって異なるが、国の制度としては企業拠出の最大が25,500円。それに加えて個人拠出を「企業が拠出する掛金額以内」かつ「企業拠出分と従業員拠出分の合計が法定の拠出限度額以内」となる範囲まで追加できる。つまり月額合計が最大51,000円円。年額612,000円がデフォルトで非課税になって、運用益まで非課税というのはメリットが大きいので、可能な限り割り振っておきたい仕組みである。単純に計算しても10年間で612万円、30年で1,836万円+運用益が積み上がっていくため、これだけでも老後の安心感が違ってくる。
拠出上限金額の引き上げも検討されているそう。確定拠出年金にさえ入れてしまえば定期預金への拠出に割り振っても十二分にメリットがあるので、とりあえず拠出できるだけ拠出しておけっていう制度だと考えている。
個人年金
個人年金は保険会社に自分用の年金を厚生年金や企業年金とは独立して積み立てておくもので、支払い期間が10年の場合は所得控除の対象になる。僕自身が加入した時点おいては年間支払額の半額かつ最大50,000円までが控除対象となっていたため、アフラックで月9,000円=年額108,000円の契約をした。年末調整で返ってくる額を「運用益」として考えるとなかなか素晴らしい利率の金融商品であると考えられる。現在の最大控除額は40,000円になってしまったのが残念。
クレジットカード決済が可能な保険会社である場合は、楽天カード等によって1%のポイントを得ることができ、そのポイントで投資信託を買うこともできる。この低金利下における利息の1%積み増しは非常に大きい。
所得控除のメリットだけではなく、月9,000円の積み立てであれば生活にクリティカルな影響が発生しにくいにも関わらず、シミュレータによれば30年間で350万円近くまで膨らむ見込み。現在はマイナス金利の影響で新規販売の受付を中止している保険会社が増えてしまったが、再開時にはぜひ入っておきたい。
ネット銀行の定額自動入金
SBIネット銀行にはメイン口座のお金を自動的に引き落として自身の口座に入金する『定額自動入金サービス | 振込・振替・支払 | NEOBANK 住信SBIネット銀行』という仕組みがある。
これを利用すると都市銀行からでも振込手数料が掛からずに毎月一定額が自動で資金移動される。あとはこの口座のお金しか利用できないという縛りプレイをすれば良い。会社の仕組みで振込先を複数指定できる場合はそちらを利用することもできる。移動されなかった側のお金は、もしもの時の流動資金を除いて定期預金、仕組預金、投資信託、個別株などに割り振っておく。
楽天銀行では小額決済取引で手数料無料にしつつポイントがもらえる手法が確立しているため、余剰資金で少しづつ株や投資信託を買っているが、期間分散で少しづつ買うことは結果としてドルコスト平均法による買い付けになっている。
自分のお金じゃない自分のお金を作っておく
自力で資産運用をして10%も増やすのは結構大変だし損をするリスクも高いが、所得控除になる制度を利用することで対象金額の合計10~20%程度の税金が戻ってくる。あくまで「自分の場合は」ということであり、現在の適用基準や具体的な金額についてはそれぞれで調べた方が良いとは思いますが、そのキッカケになれば幸いである。
最低限の生活費で暮らしていると、物事への優先順位を付けられるようになる。15万円というのは計画的に使えばわりと簡単に達成できるが、野放図に使えば途端になくなる金額。基本的には自炊だし、本は図書館、服はユニクロ。合コンも異業種交流会も難しい。
もちろん、仕事や生活に関わる絡みの避けられない高額出費もありえるので、絶対に設定金額を超えないわけではないが、それぞれが出来る範囲の縛りプレイをしながら「余裕資金」を拠出して効率の良い資金運用に回す方針自体を崩さなければ問題。
収入を先取り貯金していく際の心構えは、本多静六の著作が詳しい。また、この手の資金は基本的に60歳以降のためのものであるため、絶対に長生きしてやろうという意識も生まれてくる。どんなにネガティブになっていても「死にたい」とは言いたくないのはこういう「債権」が残っているからという側面も少しはあるのかもしれない。