アルプススタンドのはしの方
高校野球夏の甲子園大会一回戦。
夢の舞台でスポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめる冴えない4人。
夢破れた演劇部員・安田と田宮、遅れてやってきた元野球部・藤野、帰宅部の成績優秀女子・宮下。
安田と田宮はお互い妙に気を使っており、宮下はテストで吹奏楽部部長・久住に学年一位を明け渡してしまったばかりだ。
藤野は野球に未練があるのかふてくされながらもグラウンドの戦況を見守る。
「しょうがない」と最初から諦めていた4人だったが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開と共にいつしか熱を帯びていき...。
第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞を受賞した演劇の城定秀夫による映画化。ほとんどが野球の応援席での演劇的な台詞や人物配置で話が進んでいく青春ドラマ。野球自体のシーンは一切画面に出てこない一方で、アルプススタンドの中央にいる吹奏楽部や応援団とアルプススタンドのはしの方で会話をしている男女グループの対比と相互影響が描き出される。
応援しているのは甲子園大会一回戦から応援に動員がかかっている埼玉の高校。あまり興味のないスポーツの応援観戦は退屈なものだ。僕自身も部活の応援に駆り出されて「負ければ早く帰れるのに」というサイコパスな感情を抱いたことを思い出したりもしたが、斜に構えながらも「はしの方」でしていた会話は残っている。