『2016年の週刊文春』とノンフィクション
いま、日本で最も恐れられる雑誌と、
愚直な男たちの物語――。花田紀凱と新谷学。ふたりの名編集長を軸に、昭和、平成、令和の週刊誌とスクープの現場を描く痛快無比のノンフィクション。
2016年頃の週刊文春といえば「文春砲」として芸能人の不倫や政治の不正などのスクープを連発していたイメージがある。ゲスな好奇心を満たしつつもスキャンダルで芸能界や政権が動いていく効果を感じつつも自分の読書遍歴には縁遠い存在であった。
それが、僕自身の愛読書でもある『1985年のクラッシュ・ギャルズ』などのプロレス系ノンフィクションに定評がある柳澤健が『◯◯年の〜』シリーズとして書いていて、著者自身も週刊文春出身と知って俄然興味が湧いてきた。
週刊文春編集部に所属した花田紀凱と新谷学という世代の異なるふたりの名物編集長が時に邂逅する展開はアントニオ猪木と棚橋弘至の関係をも彷彿とさせる。総合週刊誌の編集部でありながら否、だからこそ体育会系な現場と時代感覚と歩みながらも大きな時代の流れに抗っていく様は編集者スーパースター列伝のような趣きがある。