太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

フールペナルティビジネスはパニック時にこそ忍び寄る

panic anxiety 071

鍵のレスキューに11万円

 鍵を落として、深夜にウェブサイト経由で鍵のレスキューを頼んだら11万円支払ったことが話題となっている。冷静な状態なら請求時点で断ることもできたし、疑義を唱えることもできたはずなのだけど、提示どおりに支払ってしまえば、後から取り返すのは難しい。

①不正を行う「動機・プレッシャー」がある ⇒ 営業ノルマが課されている。達成すれば高給を得られる。次の客がいつ来るか不明。
②不正を行うことができる「機会」がある ⇒ 客と会うのは一回限り。客は動揺・切迫している。客は適正価格について無知である。
③不正を行っても自分を「正当化」できる ⇒ 客が困って助けを求めてきたからサービスを提供してあげている。鍵開けは高度な職人技であり、人件費・技術料として当然だ。

 ある種の不正を行う前提条件を業者側がもっている場合、彼らはパニック状態の人間に親切な顔をして忍び寄ってくる。パニック状態の人を「情弱」と嘲笑うことはできないし、自分だってそうなる可能性がある。

フールペナルティビジネスはパニック時にこそ忍び寄る

 繰り返しますが、ひとつひとつは冷静になれば大した話ではないのです。それでも契約数が多くなるごとに暴力性を帯びてくるように思われます。短時間のうちに使える意志力の合計量は個々に決まっており、それを超える意志力を発揮するのは難しいわけで、10個までなら冷静に対処できても100個になれば1個ぐらいバカになる瞬間がでてきてしまうのも仕方がないのです。

 フールペナルティビジネスは「馬鹿な人」ではなく「馬鹿になった瞬間」を狙い撃つ。切迫した状況やある種の自罰思考があいまった人間はカモになりやすいから、申し込みサイトのSEOを万全にし、問題が起こった人間を24時間体制で捕獲していく。

 まずは管理会社に連絡するのはもちろんだが、連絡がつかなくても深夜のうちに解決しようとするのではなく、サウナや漫画喫茶にでも泊まって、朝になってから管理会社や不動産仲介会社を訪問すれば結果として大きな出費を防げる可能性が高い。

葬式もフールペナルティビジネスが発生しやすい

 パニック状態を誘発する状況には親族の葬式も挙げられる。突発的な事故や病気はもちろんだが、すでに入院していても葬式業者まで決めておくことは珍しい。『しくじり先生』によれば、臨終してから葬式業者を決めるまでには2時間程度しかないという。厳しいタイムリミットのなかで選んでしまいがちな選択肢は以下の通りである。

  • 病院と提携してる業者(マージンバックありき)
  • SEOを強化して地域名と葬式関連の単語で検索すればでてくるウェブサイト

 どちらも、パニック状態を狙って足元を見てくる業者である可能性が高い。基本料金が安くても、「みなさんやってる」「それが普通」と十分な説明のないままオプションを追加していったり、様々なサービス料や手数料を2階建て3階建てでつけていくため、葬式が終わってから高額な請求書が残る。

 「とりあえず検索してでてきた業者」を信用できる時代ではなくなったことも認識しておく必要がある。その業者が良心的だから検索上位にいるのではなく、強引なSEO施策やリスティング広告から誘導されている可能性が高い。口コミサイトすら自作自演やアフィリエイターが運営していることが珍しくないから、冷静に情報の真偽を判断する必要がある。

結局のところで日々の備え

 鍵をなくしたり、親族が亡くなってしまう状況は100%起こらないわけではない。パソコンが壊れた。トイレが壊れた。スマートフォンを落とした。パニックになりそうな状況は色々とある。

 結局のところで、それが起こったらどうすればよいのかを事前に調べて手帳などに書いておく備えが重要なのだ。冷静になればひとつひとつは大したことではない。

 家族をフールペナルティビジネスの餌食にしないという観点であれば「終活」もひとつの手段だ。冷静な状態での事前調査と手順書作成こそが「情強」としてやっておくべきことなのだろう。