太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

清野とおる『東京怪奇酒』〜怪談ディテールへの「おこだわり」の実在性

東京怪奇酒【電子特典付】

東京ウォーカーで東京怪奇酒

 普段から Kindle Unlimited で『東京ウォーカー』を毎月購読しているのだけど、現在の東京ウォーカーは東京の名所やグルメ情報に加えて、コナリミサトや新久千映などのコミックエッセイが集まる漫画雑誌の様相を呈してきている。

清野とおるが友人知人他人から直接聞いた恐るべき「怪談」の数々…。 その怪奇現場に実際に足を運んで「酒」を飲んじゃおうってワケ。

 なかでも異色な漫画連載が清野とおるの「東京怪奇酒」である。東京ウォーカーとの親和性が高い『東京都北区赤羽』そのものを描くのをよしとせず、東京で怪奇で酒である。

ディテールへの「おこだわり」の怪奇性

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町中華探検隊『町中華とはなんだ』〜「正解」がないから集まる複数の視点

町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう (角川文庫)

町中華とはなんだ

 ここ最近、中華料理を食べようと思うと日高屋や王将などのチェーン店か来日中国人の本格仕様に二極化していて、炒飯や中華丼やレバニラ炒めなんかを提供する大衆的な個人店に入る事がめっきり少なくなったと気づく。

うまいわけではない。安いわけでもない。中華料理屋のたたずまいだが、カレーやオムライスも提供する。何に惹きつけられるのかと問われれば説明が難しい大衆中華食堂。本書では「町中華」と呼び、北尾トロらが探訪する。

 本書で言われている「町中華」はさらにズレていて、例えばカツ丼やオムライスがあるような中華料理屋だという。オムライスであればウェイバー炒飯などの中華風な逃げ道があるが、カツ丼は中華風になり得ない。あくまで佇まいだけが中華風の定食屋が「町中華」となるようだけど、その定義はひどく感覚的だ。

絶滅してしまうかもしれない町中華を巡る仲間を探す旅

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中目黒灼味噌らーめん八堂八〜自家製味噌と麹豚が織りなす理想の豚汁

TRYラーメン新人賞2020年度味噌部門3位

 なんとはなしにTRYラーメン大賞の本を読んでいたら、気になるお店があったので早速中目黒まで行ってみた。

 灼味噌らーめん八堂八(やどうや)は北海道産の大豆、麹、塩だけで作っているという自家製味噌のラーメン。既に極まっていると言われるラーメンスープにおいても、味噌の旨味が作り出せるポテンシャルはまだまだ大きいのではないかと感じることがある。

 路地から一本入った小道の二階。意識していないと見逃してしまう立地だけど、それでも美味しい店へのアクセスを作り出すのがTRYラーメン大賞の役割でもあろう。

どこか懐かしい味噌スープ

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