太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

清野とおる『東京怪奇酒』〜怪談ディテールへの「おこだわり」の実在性

東京怪奇酒【電子特典付】

東京ウォーカーで東京怪奇酒

 普段から Kindle Unlimited で『東京ウォーカー』を毎月購読しているのだけど、現在の東京ウォーカーは東京の名所やグルメ情報に加えて、コナリミサトや新久千映などのコミックエッセイが集まる漫画雑誌の様相を呈してきている。

清野とおるが友人知人他人から直接聞いた恐るべき「怪談」の数々…。 その怪奇現場に実際に足を運んで「酒」を飲んじゃおうってワケ。

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 なかでも異色な漫画連載が清野とおるの「東京怪奇酒」である。東京ウォーカーとの親和性が高い『東京都北区赤羽』そのものを描くのをよしとせず、東京で怪奇で酒である。

ディテールへの「おこだわり」の怪奇性

 この漫画が面白いと思うポイントは怪奇現場で酒を呑むという不謹慎さや精神的高揚による酒の美味さよりも実話怪談の当事者や現場との細かやかな対話にある。証言通りの再現漫画だけが描かれても他人事になりがちだが、「そこを気にする?」という部分まで当事者から聞き出したり、現場で感じることで、実在性と解像度を高めている。

 作者本人が突っ込んだディテールを聞き出す手法は『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! 』にも見られたものだが、実話怪談と実話風怪談の間にある谷を埋めていく効果がある。おまけページの補足を読んでから本編を読み直すと味わいがさらに深くなる。

精神的な事実と舞台装置をツマミに呑む

 いわゆる怪奇現象そのものが物理的に起き得るのかを追求してもどうにもならない。実話怪談においては、少なくとも当事者の心の中で起こった事実であったのかが争点となる。リアリティラインを軽々と超えてしまうと味わいが減る。

 それには事前情報なり想起事象なりという舞台装置が必要だし、ディテールを突っ込まれた当事者が「そこまでは設定を考えてなかったわ」と口籠ったり、出任せをしはじめたら興醒めである。あくまで淀みなく答えられる実在性と解像度の高さが大事だ。

 思えば、東京ウォーカーの店主インタビューに細かいおこだわりが書かれていると、その店に行ってみたくなりがちであった。東京にある(怪奇)名所で(ツマミや酒の)グルメを高解像に楽しむというのは正しく東京ウォーカーなのかもしれない。

東京怪奇酒

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