太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

Youtube動画をOpen AIで文字起こし&要約で観ていない動画について堂々と語る方法

Youtube動画をOpen AIで文字起こし&要約

 字幕や書き起こしがAIによって自動的にできるようになり、AIに調査や要約をさせることまで可能になっていく中では「早送り」もまた過渡期のかけ金節約方法なのかもしれず、さらにコスパやタイパを追求するチートスキルが開拓されていくだろう。できるのにやらないことを情弱と責め立てる残酷な世界においては、「編集権の簒奪」というチートスキルに覚醒せざるを得ない。

 これまで『稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』感想〜万人の万人に対する象徴闘争から覚醒させられる「編集権の簒奪」というチートスキル - 太陽がまぶしかったから』や『ピエール バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』感想〜読書感想という書物と書物の外側にある実と虚の皮膜 - 太陽がまぶしかったから』について語っていたのは、技術的にそれができることが分かってしまったことが大きい。

 Youtubeで様々な動画が無料公開されているのはありがたいことだが、1時間のセミナー動画のために1時間座りっぱなしはしんどいし、倍速で見ても30分はかかる。それでいて得られるものは限定的だったりもするが、要約であれば3分もあれば読むことができるし、理解できない話があるならちゃんと観れば良いという選択ができる。今回はYoutube動画をOpen AIで文字起こし&要約して観ていない動画について堂々と語るために利用している具体的なプログラムについて解説する。

利用する技術要素

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ピエール バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』感想〜読書感想という書物と書物の外側にある実と虚の皮膜

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

読んでいない本について堂々と語る方法

本は読んでいなくてもコメントできる。いや、むしろ読んでいないほうがいいくらいだ――大胆不敵なテーゼをひっさげて、フランス文壇の鬼才が放つ世界的ベストセラー。ヴァレリーエーコ漱石など、古今東西の名作から読書をめぐるシーンをとりあげ、知識人たちがいかに鮮やかに「読んだふり」をやってのけたかを例証。テクストの細部にひきずられて自分を見失うことなく、その書物の位置づけを大づかみに捉える力こそ、「教養」の正体なのだ。そのコツさえ押さえれば、とっさのコメントも、レポートや小論文も、もう怖くない!すべての読書家必携の快著。

 以前の書評で『映画を早送りで観る人たち』(流)を取り上げたが、実は「早送り」なんてのはまだ誠実で、読んでいない本について堂々と語ることが横行している。僕自身もクリシェの原典を読まず多用していたことがあるし、流し読みでチェリーピッキングをしているのもしょっちゅうだ。

 ブログに長文感想を書いているのに2回目に読むと初めて読んだ章が足されているかのように感じてしまうことすらある。時間も体力も有限なので仕方がないが、それでも感じる後ろめたさについて、読書にまつわる「偽善的規範」として以下の三つが挙げられている。

  • 読書義務
  • 通読義務
  • 本について語ることに関する規範

 すなわち読書は神聖な行為であり、全てを隈なく読む必要があり、ある本について語るのであれば通読は必須であるという観念だ。しかしながら、ある本について語るために本を読んでおく必要はないし、何なら読んでいない方が雄弁かつ意義深く語れることすらあるというのが本書の主張である。著者は文学を巡るパラドックスについての書物を多く出版している精神分析家。「読んでいない本を語る」というテーゼも実にパラドックス的だ。

「読んでいない」にも色々とある

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稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』感想〜万人の万人に対する象徴闘争から覚醒させられる「編集権の簒奪」というチートスキル

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

映画を早送りで観る人たち

なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか――。なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという事実に突き当たる。一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか? いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。

 本書は『「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来(稲田 豊史) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)』から始まった早送り論についての、派生記事のとりまとめや書き下ろしを含んだ総括である。コンテンツの消費者にも、脚本家にもインタビューしており、また博報堂DYMPのメディア環境研究所やマーケティング調査結果などからの示唆なども入ることで、印象論を超えた仕上がりとなっている。つまり、面白かった。改めて本書を読んで思ったことを書いていく。

タイトルの「映画」と「人たち」という錯誤とフック

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