俺、家にテレビないから
これまでテレビのない生活を続けていて、特に問題がなかった。実家の自室にはテレビが置いてあったのだけど、邪魔だから処分している。ニュースや話題などはインターネットで完結するものと思っていた。
しかし、メディア運営寄りのウェブ系企業に転職活動をしていると「家にテレビがない」がハンデキャップとなっていると感じた。面接中にも「ボリュームが取れる話題へのアンテナ」を確かめているのであろう質問が見受けられる。そこで「特定のネット空間でのみ話題の出来事」を言ってしまったら負けだ。
要素技術に特化したエンジニアとして採用されるのであれば、そのような事を意識する必要性はないのかもしれないが、ウェブメディアを成長させたり、商品購入に至りやすくするためにはマスメディアの動きにも呼応せざるをえない。『ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)』とも言われているが、それだけ「消費者」の利用が一般化したという話だ。
アドテクノロジーはインターネットの中だけで完結しない
例えばアドテクノロジー(広告技術)の分野では「フリークエンシー」といって、特定のインターネット広告と特定個人の接触頻度を重視する。まだ認知していない商品やサービスの広告は複数回見てやっと「クリックしようかな」と思いやすく、さらに多く見ると嫌悪感に変わりやすい。FacebookやTwitterのタイムラインなども同じだ。
フリークエンシーを考える時に重要なのは「テレビCMや情報番組における接触頻度」も実態的には加算されているという事実である。「この人はこの広告を1回見て成約した」という指標がインターネット内で取れていても、「その前にワイドショーの特集を観ていた」が購入理由である事も多い。逆に言うと、そこで広告が出せなかったら成約機会を逃してしまうし、急激なトラフィック増大を予測して事前に対応しておく必要もある。
プランニングにはマスメディアの動きや、こちらからの働きかけを含めておくべきだし、単純なフックや検索ボリュームとしても、現在のマスメディアの潮流を日常的に感じていた方が有利である。「俺、家にテレビないから」とシャットアウトしていると視野が狭くてボリュームの小さい選択しかできなくなってしまう。個人の日記にそんな事は求められていないけど、数値管理された仕事としてウェブメディアに関わっていくには命取りになりかねないのだろう。