「話題のスマホ」という隠語キャッチコピー
携帯キャリアが流しているテレビCMやネット広告において「話題のスマホ」というキャッチコピーが使われているが、これはAppleが自社製品における広告素材(クリエイティブ)を指定しており、独自の広告素材を使うことを許可していないからであろう。実際、iPhoneのテレビCM映像がすべてのキャリアで共通になっており、最後の一瞬だけそれぞれのキャリアのロゴが出るようになっている。
編集部・三太郎・白戸家といった独自ブランドCMを流したい携帯キャリア側からしたら最新のiPhoneであることを忖度してもらう隠語が必要となり、「話題のスマホ」という隠語が生まれた。これだけでは、それぞれのキャリアで独自に指定してもよさそうなものだけど、結果として統一されているので、なんらかの談合が行われたのだろう。
想起隠語としての「アイ」
そんな各社横並びのなかで、UQモバイルのCMがちょっと面白かった。はるな愛が登場して「ともだちのアイよ」「アイは話題のスマホを持ってるの」と続いて最後に「見せてよアイのスマホ」「それは無理」と締める。
UQモバイルはAU系列なので「話題のスマホ」も忘れていないけど、「アイ」を強調しつつの事情説明で綺麗に想起させる。とはいえ、現在のテレビCMとしては流れておらず、CMギャラリーからも削除されているから、Appleからクレームがきたのかもしれない。あれがOKならソフトバンクあたりがもっとえげつない連想CMをやっていそうだ。
ところで、あやまんJAPANの『ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー』は、『LOVE & JOY』が元歌だからか「宮里藍、宮里藍、福原愛、福原愛から、はるな愛」という合いの手があったのだが、CD化の際にはるな愛からだけ許諾がとれたことを踏まえて「降りない、降りない、許諾が降りない〜はるな愛だけ降りたよ!」と差し替えられており、はるな愛の「アイ」は使い勝手がよい存在なのかもしれない。
明確に対象を示す隠語に意味があるのか
そんなわけで「話題のスマホ」という隠語キャッチコピーが当たり前に使われているのだけど、こうやって明確に対象を示す隠語を作り出すことに意味があるのかとも思える。もちろん「話題のスマホ」だけであれば「Galaxyのことも言ってるんです!」という言い訳がたつが、「これぐらいは忖度できるよね?」という前提があってのクリエイティブとなっている。
Apple側の本来の意図は製品独自の世界観を他者CMによって壊されたくないからというところにあるのだろうけれど、逆に「名前の言えないあの方(笑)」みたいな連想大喜利状態を誘発しているのではないかと思える。
薬事法絡みの表現についても、制限が生まれるたびに「こんなに辛そうだった妻が……!」という効能連想型や「がん ばる貴方へ」という単語含有型のような抜け道がカオスな状況を生み出している。だから制限がいらないということではないのだけど、こういう「抜け道を考えられる人がクリエイター」みたいな風潮ごとなくす施策になってないとまずい気がする。