太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

『ボクソール★ライドショー』感想〜日本初の4DX専用POVでカメラに憑依

日本初の4DX専用ムービー

 ちょっと前になるのだけど、日本初(おそらく世界初)の4DX専用ムービーである『ボクソールライドショー』の初日舞台挨拶を観てきた。4DXフル活用、白石晃士監督、『コワすぎ!』のコンビが出演とオレ得要素が詰まっている。

 4DX映画とは、席の移動・匂い・水滴・フラッシュ・スモークなど現実の環境効果が含まれた映画のこと。これまでにも『マッドマックス〜怒りのデスロード』や『進撃の巨人』などが4DX化されているのだけど、4DXのために撮り下ろされた作品は初めてだそう。『ボクソール★ライドショー』は4DXといえども映像は3Dではなく2Dであり、また25分間の体感型ショートムービーである。

 4DXを上映できる映画館は限られており、今回は豊洲ユナイテッド・シネマまでいく必要があった。豊洲駅周辺はショッピング・モールと住宅地しかなくて、東京じやない雰囲気。

 事前情報で「びしょぬれになる」「揺れが激しい」ときいていたのでコートや荷物をどうしようと思っていたら、コインロッカーの利用が半必須であるよう。コインは戻ってくるので、利用しない手はない。

白石監督ユニバースに放り込まれる

 映画が始まる前に4DXのデモンストレーションムービーや他の映画の予告編がワクワク感を高める。特に音楽ライブ映像と席の振動やフラッシュの相性が良い。大音響のダンスミュージックに包まれながら身体を揺さぶられると、自分で身体を動かしているわけじゃないのに、後付でノリノリの気分がついてくる。「感じる→動く」ではなく「動く→感じる」でも同じような体験だと誤認できることに少し怖くなる。

 没入映像と動く座席によって作られる体験としてはディズニーランドのスターツアーズとそう違わないし、映画のストーリーも特にないのだけど、宇宙やカーアクションではなくホラー映画体験として白石監督ユニバースに放り込まれる感覚がよかった。地獄だぞ!と4DX演出の相乗効果ともいう。

 近くでゲロを吐かれれば水滴シャワーで顔が濡れるし、鎌で攻撃されれれば耳の近くで風を切られたりする。「興奮」「驚き」を呼び起こさせるべき4DXの特殊効果を良い意味で悪用して「嫌な気分」のためにも活用できる事例になったのではないかと思われる。その一方で女子高生に近づくと良い匂いがするとか、まぁうん。利用される4DX効果は全11種類だそう。

  1. 座席が動く
  2. 水噴射
  3. ミスト
  4. エアー噴射
  5. フラッシュ
  6. 香り
  7. スモーク
  8. シャボン玉

 座席は常に動いていて、エアー噴射が多用されるイメージ。スモークは想像以上に残るので前の席だと楽しそう。匂いについては注意しないと気付かないかな。シャボン玉は幻想的で非常に良かった。

カメラに憑依して揺さぶられる

 POV形式のフェイクドキュメンタリーなので白石監督の追体験をするのかと思っていのだけど、自身はカメラに憑依しているんだなと見方が変わってくる。POVの伝統としてカメラと撮影者の切り離しはラストシーンぐらいで、あくまで撮影者と一体化するための手法であるという固定観念があったが、白石監督の手を離れるシーンもそれなりにあるし、ドローンを駆使したであろう映像まである。

 カメラに憑依というか、カメラに乗り込んだ(ライドした)ミクロ戦士として揺さぶられた気分。先にも触れたがエンディングのダンスミュージックと4DXの相乗効果で作られる人工的な高揚感は本能的にヤバイと感じる。

 25分間の上映は特殊効果が使われっぱなしであっと言う間に終了。これを1時間半やったら気持ち悪くなるだろうし、流石に飽きてくる。「ライドショー」の名の通りで、遊園地のアトラクション感覚にするのは正解だろう。ちなみに『ボクソール★ライドショー』の由来は、ロンドンの「ヴォクソール・ガーデンズ」という遊園地の起源と言われている公園にあるそう。

日本初の4DX舞台挨拶

 初日だったので舞台挨拶あり。主演の岡本夏美ちゃんが可愛い。大迫さんは出演直前でリアル鼻血を出すというハプニング。4DX舞台挨拶とのことで、舞台挨拶中に4DX特殊効果で攻撃?されるというおまけつき。舞台挨拶中まで水滴シャワーをされた時に後ろの人が半ギレになっていて面白かった。「びしょぬれ」と言っても、すぐに乾く程度なのに人の感情を動かす力は強い。

 コミュニケーションの手段としての新作映画とか、名画座やミニシアターでスクリーンと対峙するとか、テレビやレンタルビデオで気怠く観るとか、ひとくちに映画といっても様々な体験があって、その中のひとつに4DXもある。「映画体験を現実の感覚に近づけるほど非日常性が高まる」という逆転現象は「現実には起こりえないことに臨場感を持たせる」という白石監督がフェイクドキュメンタリーに期待する効果との相性がよいと改めて感じた。