妻が口を聞いてくれません
連ちゃんパパのようにバズっていたので読んでしまったのだけど、なかなか考えさせられる。自分が毎日毎日口を聞いてくれなくなったら眠れなくなって、仕事が手につかなくなって、酒で紛らわせて毎日鬱々とすごしているうちにドヤ街に流れ着いたら連続行き倒れ事件に遭遇して断酒を試みたり朝定食を食べたりするのではないかと思える。
この作者さんは夫が全く気が付かないうちに妻の地雷を踏み抜いてる姿を端々で実に巧みに散りばめてるんだけど、例えばこれね。これの何が問題か20文字以内で答えよ、というのに全く解答できない人は多分この漫画の妻がサイコパスに思えて終わるだろう。 pic.twitter.com/PAt9qJn7fs
— 櫛 海月 (@kusikurage) 2020年6月29日
はたから見たら旦那が家事をしないで独善的な事を言ってくるから口を聞かなくなってしまったというのは分かるのだけど、それに対して「俺だったら上手くやれる」と思うのは「ここが問題ですよ」という演出アシストがあるから「進研ゼミでやったところだ!」となっているだけの可能性もあって危険だ。
他人同士の人生に「一機やらせて!」はできない
夫婦や恋人のコミュニケーションすれ違い問題の愚痴を聞いた時。自分ならこうやってこじれないようにできそうだと思うことも多々あるけど、別にそれ単体で正解が選べるかはあんまり重要ではない。連続性のある他者同士の生活に対して「一機やらせて!」という介入をすることはできないし、その言葉を全然違う意味に取られて手が後ろに回る。
そもそもは問題自体を認知できてるかという話なので、「これは問題です」って提示されていることをどうにかできるのは当たり前で、普段の生活のなかで実は問題だと思われていたことを早めに正確に把握するのは「今のところ普通に暮らしていけている」という正常性バイアスが強い時ほど難しい。
意識的に描かれた物語を読解できることと、「問題」をだしたつもりになっている普段通りの他者の認知や演出をエミュレートして共感できるかは別物だ。後者を繊細に読み取れる人こそ、さまざまな悪意を見出して失調していく可能性すらある。
家庭を安全地帯と思ってしまってからが夫婦関係ハンター裏試験
例の漫画が女性作者らしいなぁとひしひしと感じる点が、妻の日常のストレスは事細かく描写できるのに、夫の仕事の描写は一切ないところ。ただ通勤して、職場の人と雑談してるだけ。46歳のサラリーマンなんてちょうど中間管理職で、上司と部下の間で一番キツい時期なのに。仕事のストレスは無いことに。
— イルカ🐬 (@diablo_delfin) 2020年6月29日
おそらく夫の側も仕事が大変だったりして余裕がないし、稼いでいる側だから役割分担したいという感覚がある上で家庭内を安全地帯だと思って子供のようなワガママや笑えない冗談を言っているとも想像できるのだけど、それらの全てがかんに触ってくるのが夫婦関係ハンター裏試験なのかもしれない。言ってくれなきゃ分からない話と、言っても分かってもらえなかったという学習性無力感が同居する。
“嫁抱きすぎ芸人”アルピー・平子が夫婦円満の秘訣をレクチャーする授業で「家で彼女・妻がすっぴんボサボサでだらしない」という意見を「もったいない。奥さんのそんな姿を見れるのは宇宙でアナタだけなのに」と一蹴してて真のイケメンだった pic.twitter.com/XluwMrQxkv
— ジェラくる/YouTube (@graduate_RPG48) 2020年6月28日
結婚するまでは良くも悪くもよそ行き同士での対応が多いのだけど、結婚してからも緊張感が維持できるのかは難しい。僕自身はだらしない同士を許容してほしいと思ってしまう方なのだけど、だからこそ独身のままになってしまった可能性も大いにある。相性問題や話合いの余地はあるだろうけれど。
何にせよ。永続的な関係なんてないと思いながらスキルチェックを回していくしかないのだと思うのだけど、それを毎日15回ぐらい繰り返すのは厳しいし、疲れる。凝った手料理とかと同じで「一機やらせて!」とは思うけれど、全部を上手くこなせる人が超人的に思えてくる。