気づけば同じラーメンを食べている
20代の頃はラーメン本を読みながらの食べ歩きやインターネットでの情報収集が日々の生活に根付いていたのだけど、今となっては天下一品や家系ラーメンばかりを食べるようになってしまった。
名店と言われる店に行列しても上がりすぎた期待値を大きく超えてくるのは難しいし、そもそもラーメンは食べたい時に食べたい。美味いカレーの伸び代はまだまだありそうだが、美味いラーメンの伸び代は正直少ない。気づけば同じラーメンを食べていた。
知らないラーメン屋が増えた
「東京で一番うまいラーメンを決めよう!」をコンセプトに、雑誌『TOKYO★1週間』誌上で始まった、ラーメン業界最高の権威を誇るTRY(Tokyo Ramen of the Year)。記念すべき第20回となる今回は、2019-2020年度の最高の一杯を決定するとともに、20周年の特別企画を多数収録。審査員は大崎裕史、青木誠、しらす(斉藤光輝)、レイラ、吉本匠将、石神秀幸など本アワードでお馴染みのラーメン評論家に加えて、ゲスト審査員が今年も参加。乞うご期待!
そんななか、TRYラーメン大賞2019が発表された。結果を確認するとボスキャラ扱いされている中華蕎麦とみ田は殿堂入りで参加していないし、10年前に定番だと思っていた名店も殆んど姿を消している。想像以上に知らない店が増えているのは、自分のアンテナ感度が低くなっている事と新しい味が評価されやすくなっている事の両面だろう。
灼味噌らーめん八堂八(やどうや)は北海道産の大豆、麹、塩だけで作っているという自家製味噌のラーメン。既に極まっていると言われるラーメンスープにおいても、味噌の旨味が作り出せるポテンシャルはまだまだ大きいのではないかと感じることがある。
実際に行ってみるとまた違う美味しさに出会えるし、それこそがガイドブックとしての役割だ。宍道湖シジミ中華蕎麦、名門ホテルの元総料理長が作る生ハム出汁、海苔出汁をかけるつけ麺。いいじゃないか。いいじゃないか。
審査員やラーメン評価の岐路
今回のTRYラーメン大賞は大崎裕史と石神秀幸の引退回でもあって、その対比のようにラーメンブログを運営するブロガーがゲスト審査員に参加している。「有名人が選ぶこの一杯!」コーナーにもラーメン Youtuberが参戦。
ラーメン情報はインターネットと共にある。影響力という観点ではブロガーやYoutuberの方が強くなってしまったし、ラーメンデータベースや食べログなどの匿名 CGM のが運営コスト対効果が高い実情もある。
私個人としては、現在はレビューサイトなどのアルゴリズムが進化しており、以前のように評論家が活躍するような時代ではないと思っておりますが、残る審査員の方々には、また違う評論家のあり方を示していただけることを期待しています。
石神秀幸は、そう残して完全引退する。ラーメンという大衆食の評価を少数の権威に任せるのは難しい時代になった。大衆が人気店を決める中でも評論家に意味があるのは、まだ知られていない新しい切り口の発掘となる。
ラーメン燃え尽き症候群と「情報が美味い」
その一方で、そういう探究心のような物が10年前ぐらいから折れていってるのではないかとも感じる。前述の通り、既に研究され尽くした感のあるラーメンに残っている美味さの伸び代は少ないし、家系ラーメンのガッツリとした味だけを求めている自分もいる。そもそも「仕事場からの帰り道にある」がそのラーメン屋に通う理由の8割だ。
ラーメン再遊記
— 汚点 (@ODEN_BB) 2020年2月27日
芹沢サンが完全に燃え尽きてて以前の面影が全くないどころか
以前は蛇蝎の如く嫌ってたラーメン食べて安心してるの見るとかなりキツいものがある pic.twitter.com/khoi12VsYB
そう言う意味では既に燃え尽き症候群に入ったラーメンハゲこと芹沢が言うように、「奴らはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」に状況が戻っているようにも感じる。大賞の店は湯河原にあっておいそれといけないし、行ってしまえば想像を大きく超える期待が持ちにくい。まだまだ自分が知らない凄い物があるという「情報」のままにしておくのが一番美味しい味わい方なのかもしれない。