太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

朝ビールは良いけどウィスキーや焼酎はダメだと思うアル中の倫理感

寂しい朝にはアルコールが飲みたくなる

 婚活を無期限休止して、学生時代や新卒時代の友人達と疎遠になって、仕事の疲れを自覚していると予定のない週末を迎え入れることになる。映画を観たり、本を読んだり、小旅行をしてみたりという程度の充実はあるが、ついついアルコールに手が出てしまう。

 夜に飲むよりも昼に飲む方が美味しいし、昼に飲むよりも朝に飲む方が美味しい。そして昼下がりには寝入って夜に眠れなくなる。酒に溺れて朝から会社に来れない人間を叱責しながらも自分がいつそうなってもおかしくない。田代まさしの薬物依存に対して半ば嘲笑めいたことを言いながら、内心では何も笑えていない。

アル中小説

雪の夜、チンピラ二人組にボーナス袋を強奪され、北岡吾郎の平凡なサラリーマン人生は終わりを告げた。彼は相手を叩きのめしてドロップアウト、いつしか山谷に流れついていた。自由気儘なその日暮らし、今では立派なアル中だ。そんな彼が、同じ山谷のアル中で、連続行き倒れ事件を追うライターの初島から誘われ、一念発起して断酒に挑むが…謎の連続怪死事件を縦糸に、男たちの勇気と友情を感動的に描く、地獄の断酒小説。

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)

 そんなかで読んだ『地図のない街』は自分の心に刺さった。

 若い頃には東京の山谷とついをなす大阪のドヤ街である西成に暮らしていた時期がちょっとだけあるし、結局のところでアルコールと手を切れていない。この記事だってビールを飲みながら書いている。

朝ビールは良いけどウィスキーや焼酎はダメだと思う

 ただし、弱い酒の代表、アルコール度約五パーセントのビールだけでアル中になる者は滅多にいない。
 初島の話では、ビールだけでアル中になった者は、医学界に公式に発表された例は日本ではただ一人しかいないそうだ。その男は、ビール以外のアルコール飲料は一切呑まず、しかし一日にビールの大壜を二○本以上、約五年間毎日呑み続けて、はれてアル中になったそうだ。

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)

 この小説の中で一番好きなのは「ビールだったらいくら飲んでも大丈夫」という妙なお墨付きだ。フリーライター初島の本当か嘘か分からないウンチクの妙。断酒小説なのに朝から豚汁定食を食べながらビールを飲んでいるシーンは本当に美味そうだし真似したくもなる。そもそも飲み会の翌朝の乾いた身体に一番嬉しいのはビールだ。チェーンスモーカーならぬチェーンドリンキングは睡眠を経てからのが染み込む。

 それでもビールだったら大丈夫な気もしてくる。もともとタバコは吸わないし、蒸留酒はサワーやホッピーやハイボールで限界まで薄くしないとまず呑まない。日本酒も家では呑まないようにしている。筋肉にも尿酸値にもよくはないけど、アル中の倫理感としてそれだけは頑なに守っていることに妙な安心感を感じてしまったりもしているのだ。

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)

地図のない街 (ハヤカワ文庫JA)