質疑応答(ask.fmより)
たとえば学校や職場で攻撃的支配的で悪意のある人間と対峙したり、逆に自分より明らかに劣るため一般論が通じない相手と過ごす事を課せられた時に生じる精神的苦痛や、支障を解消又は軽減する方法は「逃げる」以外でどんな事が考えられるかご教示頂けますでしょうか?よろしくお願い致します。
ご質問ありがとうございます。悪意があったり一般論が通じない人物と対峙した時に苦痛を感じてしまうのは仕方がないと思います。この手の事に関して、万人向けの解決方法は難しいので、一般論をお話させて頂いた上で、「僕がどうしているか?」という観点で回答させて頂きます。
リスク対応の4方式と「のほほん」
「精神的苦痛」は心のセキュリティ・ホールを突かれている状態ですね。情報セキュリティにまつわるリスクには以下の4方式で対応すべきであると情報処理推進機構(IPA)によって定義されています。
- リスクの低減・・・脆弱性を塞いで脅威発生の可能性を下げる
- リスクの保有・・・脅威と折り合うことで脅威を受容する
- リスクの回避・・・脅威の発生要因を断つことで回避する
- リスクの移転・・・脅威を他者に移すことで自身の脅威をなくす(保険など)
これを人間関係に当てはめると「適応」による低減、「諦観」による保有、「逃避」による回避、「交代」による移転などが考えられます。一般的には「適応」を試みつつ、「諦観」をしつつで折り合う事になります。この状態は「のほほん」とも呼ばれます。
人生は大いなる漠然とした不安との夫婦生活だ。どこへ逃げても逃げ場は無く、眠っても悪夢となって悪妻はやってくる。悪妻からは逃れられない。だからむしろ自分から悪妻と付き合うようにして、何とかカノジョを手なづけてしまえばいいのだ。生きることから逃げないようにして、何とか折り合いをつけるようにするのだ。
折り合いのついた状態を”のほほん”と言う。
のほほん、のほほん、のほほんと生きたい。
- 作者: 大槻ケンヂ
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優越型適応
のほほんを実現するのための適応方法にもいくつかのパターンがあって、例えば「やりがい」「生き甲斐」「罪悪感」などが一般的に取られる方法なのですが、そこに乗れない人には「優越型適応」が処方できるのではないかと考えています。
これは僕自身が「趣味は人間観察」というクソ野郎なので、気が利かないとか、一般論が通じないとかの人にイラッとさせられる方が「逆に面白い(©水野敬也)」からというのもあります。敢えてその手のアンチパターンを探して2chや増田や底辺系の小説を読みあさっているぐらいなので、「天然物」を直接観察して「取材」できるのは僥倖だと思えてくるんですよね。
ちゃんとしている人って「自分はこの人に助けられている」という意識すらさせないのがうまいんです。離れてみて、しばらくたってから気づくというか。逆に頭のおかしい人は、違和感を感じさせながらも恩着せがましかったりするので、自分の中の感覚を徹底的に言語化したくなる衝動が維持されます。
「取材」として接していくこと
その言語化作業が創作やブログなどに反映されていくわけで、「取材」をしているときに怪我をしない範囲で無茶苦茶してくれると、ありがたいとすら思えてきます。無料で合法的に一般論が通じない相手と過ごすのなんて最高じゃないですか。
また、「ブログに書く」という「逃げ方」が出来るからこその挑戦もしやすい側面があります。クソゲーハンターという連載があって、そこでは「クソゲーを掴まされてしまった時には、それを綿密にレポートすることで『元を取る』」なんて事が宣言されていました。これって、人生全体や一部がクソゲーであったとしても有効な考えになっている側面があると思うのですね。
僕自身は、過去の過労や裏切りなどから患ってしまった慢性体調不良や厭世観と付き合っていく必要がありますが、だからこそが書ける事も多々あります。
なので、話が通じない人と応対するときほど、嬉々として行動をメモしたり、相手の思考回路をエミュレーションしたり、周りの反応を聞き出していきますね。ここで重要なのは自分の尺度だけで「劣る」という判断を勝手にしないことです。あくまで間主観性を重視して相手の適応度合いを判断しなければ、社会適応できてなかったのは自分の方だったのかもしれないという可能性を疑えない状態になっています。
ミステリーの読み過ぎだからかもしれませんが、相手の思考回路の推定結果と外形的な行動の辻褄が合うようになっていくと結構なカタルシスがありますし、そんな事をしていると精神的苦痛も殆んど感じなくなっていきます。また気持ちの悪い趣味が露呈する事になりましたが、以上でご回答になりましたでしょうか。