太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

会話コミュニケーションの少ない理容師に剃刀を任せるスリルと悦楽

バーバースタイル (CLUTCH BOOKS)

床屋のちょうど良さ

 髪を切る場所に悩み続ける難民生活を続けてきていた。効果と金額と時間と予約とコミュニケーションのバランス。今時の美容師に最近の漫画はインターネットに無料アップロードされているみたいな話をされて、いやそれ違法だからと言えずに沈黙したりした記憶。

 結果として美容院と1,000円カットを行ったり来たりしてきたのだけど、現在は昔ながらの理容室(床屋)に落ち着いている。予約なしでも気軽に入れて最低限の会話でなされる手早いカットに洗髪と顔剃りと頭皮マッサージまでついて2,000円。流行りの髪型とかは難しいのかもしれないけれど、自分には必要ない。

顔剃りのスリルと悦楽

 美容室と理容室の一番の違いは顔剃りの有無である。他人に一本剃刀を当てられて抵抗されないのは医者か理容師ぐらいの物だろう。他人に顔剃りをしてもらえるのはヘッドスパやあかすりに近しい快楽がありながらも、スリルとショックとサスペンスがある。ましてや殆んど会話もしていないのだ。

 ちなみに中世のイギリスでは理容師が外科医も兼ねていたことから動脈・静脈・包帯の三色がサインポールに使われるようになったという通説があるけど、当時はまだ静脈の概念が発見されてなかったので嘘らしい。それでも12世紀のヨーロッパでは床屋が瀉血をしていた記録が残っており、血のイメージと理容師が結びついていたのは事実のようだ。

油付けてくかい?

 お互いに黙ったまま工程が進んで髪を乾かしてもらっていると唐突に「油付けてくかい?」と聞かれる。ポマードなのかワックスなのか分からない油を「ここで装備していくかい?」みたいに言われても困ってしまう。

 とは言え、さっきまで会話をしないままに顔や顎に剃刀をあてることを許してきたのだから、油ぐらいは信頼してお任せにしてもよかったのかもしれない。

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  • 発売日: 2015/12/21
  • メディア: ペーパーバック