スーパーマリオランが最速で飽きられる
iOSで『Super Mrio Run』が配信されたので早速やってみた。リズムゲーを彷彿とさせる操作性とやりこみ要素。1-2の地下面などなかなか楽しめそうだったのだけど、早くも飽きたという声。1,200円というスマートフォンゲームにしては高価な有料要素への誘導もあって、ちょっとした炎上になっていた。
さっそく、私(中澤)もプレイしたところ、マリオは自動で走るし自動で敵を避けていく。プレイヤーが操作できるのは、ほぼジャンプのみ。「スタコラサッサー」と走っていくマリオをたまに「ピョーン」とジャンプさせる。「スタスタスター → ピョーン → スタスタ → ピョーン → スタ → ピョーン → スタスタ」とやってると、あっ……ゴールした。
(中略)
──1日どころか2秒で飽きている人までいた。私もプレイしてみて、ゲーム性の乏しさには一瞬肩透かしを食らったが、きっと楽しみ方がわかっていないだけだと思う。
『スーパーマリオラン』という名称から、ステージを最速で駆け抜けるゲーム性が連想されやすいが、そういうゲームじゃねえからこれ。このゲームで競うのは徹頭徹尾コインの枚数のみである。キノコも敵もコインに変換する材料。
それを補強するメッセージとして、既存のマリオではおなじみのステージクリア時の残りタイムボーナスを敢えて切り捨てている。『スーパーマリオラン』は基本一方通行と制限時間があるなかで限界までコインを集める寄り道を競うゲームなのである。
娯楽があふれるなかでのゲーム読解能力
「強制的にゴールに向かう」「間に合わなかったらNG」という制限のなかで、あえて危険な寄り道をやりこむゲームに対して、最速でのステージクリアに面白さを求めれば、最速で飽きるのも当然なのだけど、それを公言するのは自身のゲーム読解能力のなさを露呈している。消費者様ならともかく、ライターが書くのはいかがなものか。
色付きのコインをコンプリートするたびに同じステージでも配置が変化してコイン集めの難易度が変わるし、ビートマニアのように同じステージを繰り返しやりこんでいくゲームシステムだから「ボリュームが少ない」という批判もやや的外れ。コインの位置やギミックを覚えてからが本番。
むしろ、1-1のブラックコインをコンプリートできるぐらいから扱えるテクニックを理解できるので、その前の段階から色々なステージを有料解放して漫然とステージクリアをしていっても「なんか損したな」という感想になってしまうのは仕方がない。
マーケティングとゲーム性の不一致
とはいえ、マリオといえば横スクロールのステージをクリアしていくゲームであるし、名称やイメージからして駆け抜けていく雰囲気を醸し出している。話題性に乗ってみただけのカジュアルゲーマーも多いであろう。本来のゲーム性を理解するまでに大量離脱されてしまうのもわかるし、他にも娯楽の選択肢はたくさんある。
1,200円で全ステージ買い切りというのも厳しい。1-4まででステージクリアのパラダイムに一旦区切りを付けて、再度のチュートリアルでやりこみ要素を強調して、そこからバラエティに富んだやりこみステージを逐次投入していけば面白さを理解してもらえたと思われる。音ゲームの文脈であれば1曲数百円という課金体系が成功しているし、ポケモンGOの「ヘルシーな課金」も巧妙だったが、ナイアンティックあってのことだなと。
海外調査会社SuperDataが新作iOS向けタイトル『スーパーマリオラン』の1ヶ月目のセールス予測をアップデートし、当初予想していた約6,000万ドルから約1,200万ドル~1,500万ドルへと下方修正したことが、海外メディアより報じられています。
任天堂の株価も随分と下げている。スマートフォンゲーム市場に本格参戦して間もないながらも面白いゲームが作れているのに、売り方やチュートリアルが残念なだけに失敗プロダクトとされてしまうのがもったいない。カジュアルなやりこみゲームとして、息の長い楽しまれ方をする余地もあったと思うのだけど。