太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

低温真空調理の鶏胸肉を食べたら紙粘土にしてきた鶏たちに謝りたくなった

めしにしましょう(1) (イブニングコミックス)

紙粘土を食べるしかないと思っていた

 ここ1年間ぐらいで新型コロナウィルスが流行ってからジムにいくこともなくなってしまったのだけど、以前までであれば筋トレをしてタンパク質を補給するのが当たり前になっていた。

 プロテイン飲料はもちろんとして、普段の食事も電気圧力鍋で茹でた鶏胸肉や市販のサラダチキンが中心だったのだけど、端的に言えば紙粘土を食べているかのような感覚になっていた。それでも「良薬口に苦し」として我慢してきたが、最終的に受け付けなくなってラーメンなどに逃げたらむしろ体重が増えてしまったのが、これまでのあらすじである。

 正直なことを言えば安価ながらも高タンパク低糖質低脂質を食べるという実利的な側面よりも、「我慢しただけ血肉になる」といった精神的な側面のが大きかったのではないかと思う。たとえ精神的な話に過ぎなくてもプラスに働けばよいのだけど、「昨夜は我慢したのだから」という反動を許すだけの隙になっていたのが実情である。

本当は美味かった鶏胸肉

皮を剥いだ鶏胸肉、ブロッコリー、後にワカモレに使う玉ねぎをジップロックに包んでクックフォーミーエクスプレスで63度1時間以上の低温調理。茹で卵も一緒につくる。

 そんなわけで、しばらくは鶏胸肉をみるのも嫌になっていたのだけど、低温真空調理の鳥胸肉にワカモレをかけてみたらむしろ一番美味いんじゃないかと手のひら返しをしている自分がいる。しっとりとした肉汁と噛みごたえがありつつも旨味と酸味と辛みが効いた野菜ソースがよく馴染むし、冷やしてから醤油と山葵でローストビーフのように食べても美味い。紙粘土感はもちろんとしてサラダチキン特有の臭いやブヨブヨ感もない。

 『めしにしましょう』のような食漫画に肉の低温調理は美味いぞ!と言われつつも風呂場や鍋や炊飯器を使って固定的な温度管理をするのは現実的ではなかったし、食中毒も怖かった。かといって低温調理専用機は高価で手が出ないしと思っていたら既に持っていた電気圧力鍋の保温モードがちょうど63度で固定化されると知った。

 肉のたんぱく質がどこで硬化して、どの温度なら菌が死滅してという実験において中心部まで63度になってから30分以上というデータがあるため、まさに63度であることが重要だったのだ。中心部までの温度の入りかたや安全マージンをみると空気を抜いたジップロックの真空調理状態で温度固定してから60〜90分ぐらいは入れておいた方がよいだろうと判断している。

紙粘土にしてきた鶏たちに謝りたくなった

 そう考えると鶏胸肉には100g50円前後と異常に安く買えるなかでは抜群の美味しさと栄養価があるし、なんにでも高温な圧力をかけるしか能がないと思っていたクックフォーミーエクスプレスには繊細な温度管理機能がある。材料としての値段は変わらないし、栄養価だって変わらないし、既に持っている機材が使える。本当にささいな調理温度設定の違いなのである。

 これまでわざわざ紙粘土化させては我慢して飲み込んできた自分自身もそうだし、鶏たちにも謝りたくなってきた。この話自体は食事の話に過ぎないけれども、仕事であれ人間関係であれ、「何かをするためには仕方がない」という等価交換のような感覚で痛みを受け入れてしまうことこそが非合理を非合理をのまま維持させる一番の非合理を生み出してしまっているのではないかという視点で物事を見るべきだと改めて思ったりもした。