太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

ChatGPT-4のWeb browsing標準化とクッキー規制によりログイン・ウォール化していくWebメディアの衝突

5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?

ChatGPT-4のWeb browsingとPluginsが順次利用可能化

If you are a ChatGPT Plus user, enjoy early access to experimental new features, which may change during development. We’ll be making these features accessible via a new beta panel in your settings, which is rolling out to all Plus users over the course of the next week.

 ChatGPTに課金しているユーザーの中でも一部のみが利用可能になっていたWeb browsingとPluginsの機能が来週にかけて順次開放されるというアナウンスされた。僕自身もWeb browsingについては使えるようになっており、おじさんが得意気に言いがちな「ChatGPTは2021年9月までの情報しかないからね」というクリシェが嘘になったことを確認した。

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 そんなわけで、壁打ち散歩がより楽しくなったのだけど、いくつかのパターンでうまくいかないこともある。

 もっとも分かりやすいのはビジネス情報の調査で、日経のサイトの本文はログインしないと読めない認証・認可の壁が設定されており、ChatGPTから利用することができない。このような「ログイン・ウォール」によって対話型AIを用いた情報調査が阻害されたり、ブラックリスト入りなどによって検索エンジン代替となり得る対話型AIサービスからリーチされてなくなってしまうコンフリクトが起こっていく事が懸念される。

クッキー規制により強まるメディアのログイン・ウォール化

 新聞系メディアについては以前から購読料のパラダイムを前提にした認証・認可が入っており、ペイ・ウォール(有料登録の壁)の前段階としてのログイン・ウォールと見なすこともできる。しかしながら、昨今においてはWebブラウザのサード・パーティー・クッキー規制の文脈からログインウォールを設けるメディアも増えてきている。

米グーグルは、2022年初頭と予定していたWebブラウザー「Chrome」のサード・パーティー・クッキー廃止を、23年後半までに延期すると発表した。デジタル広告業界の反発により2年弱の猶予が生まれたことになるが、利用者のプライバシー強化に向けた世界の流れはもはや止まらない。

 Safariがサード・パーティー・クッキーを制限していることはCMにもなているが、Chromeについても制限されることが発表されている。そうなると高度なアクセス解析や広告ターゲティングが行うことができず、メディアのマネタイズが難しくなってしまうため、有料購読化までは考えてなくともログインによるID識別を前提としたメディアは増えていくと思われる。この流れ自体は生成系AIの隆盛とは関係のない文脈から発生したことだからこそ、コンフリクトが悩ましい。

検索エンジンのニュースサイト見出し表示は引用の範疇か問題

ニュース記事の見出しをネット上で無断配信され著作権を侵害されたとして、読売新聞東京本社が24日、ニュースリンク配信システム「LINE TOPICS」を運営するデジタルアライアンスを相手どって、見出しの使用差し止めと損害賠償約6,800万円を求める訴訟を東京地裁に起こしていたことが明らかになった。

 とはいえ、Webメディア側からすると勝手に引用されたくないというお気持ちが昔から存在しており、AIの学習元や引用元にもなりたくないないからこそログイン・ウォールを建てることに価値を見出すパターンもあり得る。

 しかしながら、ログイン・ウォールによる本文掲載拒否サイトは検索エンジンの代替となりうる対話型AIのリーチから除外されてしまい、これまでSEO投資をしてきた検索エンジンに対して robots.txt によるクローリング拒否を設定するような対応になってしまう可能性もある。今のところは検索エンジンを完全に置き換えるとも思えないが、状況が全く変わらない可能性も低いだろう。

ログイン・ウォールメディアのマネーフォワードが欲しい

 そんな状況においてひとつジャストアイディアとして考えられるのはChatGPTなどのサービスにログイン・ウォールメディアのアクセスキーを登録できるようにすることか。必要に応じてメディア内のログインを代行するAPIを経由して認証・認可された本文のみをモデル自体に反映するのではなく、あくまで揮発性の入力として取得・利用可能とする。イメージとしては、ログイン・ウォールメディア版のマネーフォワードのようなものだ。Pluginsとしてでてきそうな気もする。

そして本日、このコンテキストに、米国以外の初めてのコンテンツパートナーである「日本経済新聞 電子版」(以下、日経電子版)が加わり、Evernote上で作成するノートの内容に関連深い、日経の最新記事が表示されるようになりました。また、日経電子版のサイト上では、記事に関連するEvernote上の自分のノートが表示されます。

 メディア側からしても、AIから全文利用することを認可する有料プランやメールマガジンなどによるマネタイズ手段を用意するといった施策が考えられる。日経に話を戻すと、かつてのEvernote Business Planにおいてはノートの内容に関連深い最新記事を表示したり、全文を読める機能を提供していたのだけど、このような取り組みによって共存する道をあるだろう。Evernoteは終わってしまったけれども。

 購入した電子書籍がコピーできない不便は仕方がないと受け入れるが、要約したり、文章構造を可視化したり、チャットで返答できるプログラムのインプットにできない機械損失は受け入れがたいと思っている自分もいる。これは、まさしく購買者には学習元にする権利も渡して欲しいという要望であるが、権利者側が明示的にコントロールする必要が出てくるのだろう。

 Web3には全く興味が湧かなかったが、ここのところのAIの進化とそれに付随する変化を妄想するのはWeb2.0黎明期の頃のワクワクが戻ってきている感覚もある。オープンAPIスクレイピングをプロンプトされたユースケースに応じてMapして、機械学習モデルにReduceさせるという観点ではWeb 2.0のリブートであるからWeb2.1ぐらいの感覚。Web3はロッキーでいえば5だし、ハロウィンでいえば2。「なかったこと」ではないが、メインブランチではなかったんだなと思ったりもする。