太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

勝間和代『勝間式 超ロジカル家事』感想〜合理主義の伸び代は家事にこそある

勝間式 超ロジカル家事

ロジカル家事の実践

自身も3人の娘を育ててきたワーママである勝間和代が、仕事でつちかってきた超効率化、経済スペシャリストのスキルを全力投入して確立した、家事と家計を徹底的にラクにする方法をわかりやすく紹介します。

 勝間和代と言えば、公認会計士マッキンゼーの経歴を活かした「年収10倍アップ勉強法」でブレイクしてカツマーブームを引き起こしたりもしてたのだけど、ここ数年は生活環境改善についての追求が多かった。

 仕事の内容は多種多様で「最適解は場合による」となるのに対して、家事に求められる効果はある程度普遍的だ。それでいながら工学的・科学的な最適化の追求が緩かったし、精神論が跋扈しがちな分野でもあったため「伸び代」が大きいと言える。本書は勝間和代によるロジカル家事の実践書である。

ロボット家電と価値工学イノベーション

「掃除と洗濯は機械がやってくれる。料理だって最近は、ボタン一つで〝ほったらかし料理〟ができる調理家電が増えているのだから、それを駆使すれば自分でなんとかなるはず!」

 著者は家政婦に頼り切りだった部屋の断捨離をしてロボット掃除機を動かしながら、そう気付く。「ハンス・ロスリングと魔法の洗濯機」という素晴らしいTEDトークがある。

では何が魔法なのか? 私の母は洗濯機を初めて使った日に それを教えてくれました 「ハンス 洗濯機に 洗濯物を入れたから あとは洗濯機がやってくれる その間図書館に行けるのよ」と これが魔法なのです

 既に洗濯機が当たり前に受け入れられた現代社会においてロボット掃除機や自動調理機を否定する理由はあまりない。むしろ価値を感じる部分にだけ手間をかけて、それ以外は自動化していくバリューイノベーションを目指すべきなのだ。

最大の無駄遣いは不健康

 個別のテクニックについては本書を読んでいただきたいが、根幹にあるのは「最大の無駄遣いは不健康」という思想だろう。本当に手間だけを考えたら外食やレトルト食品を食べればよいし、1ヶ月単位でまとめ掃除すれば時間的な総量は減らせる。

 それでも、毎日の自炊と掃除に拘るのは健康でありたいという欲望と不健康になってからの認知資源や金銭的な浪費への警戒であろう。もちろん100%の因果関係があるわけではないだろうし、どれだけ気をつけても病気になる可能性はあるのだけど、日々の生活環境から健康である確率をあげようとするのは「コスパがよい」のだ。

 奇しくも酒を飲まないとか、最新型のロボット掃除機に買い換えるといった勝間和代と同じ行動を自分もしていたのだけど、あるパラダイムに沿って考えると同じ結論になるべくしてなるのかもしれない。そう考えると試行錯誤のアウトソースとして本書を読んで良かったと思える。