太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

コワすぎ!最終章DVD発売イベントで呪力注入をしてもらった

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』に蝕まれていく

 ニコニコ生放送の怪奇ドラマ特集で気になり、『オカルト』で完全にハマった白石晃士監督の世界。フェイクドキュメンタリー(=モキュメンタリー)を軸にしつつ、低予算ながらも貪欲にアイディアを取り込んでいく姿勢が僕自身の感性にもマッチする。

 そんな白石監督のライフワーク的なオリジナルビデオ作品が『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズである。こちらもニコニコ生放送で見るごとに引きこまれてしまい、今や自分の Twitter アカウントは白石監督 bot になりつつある。

 白石監督自身も「コワすぎ!は実験の場」と語っているぐらい、本当にあったホラードキュメンタリー作品『コワすぎ!』として口裂け女を車で轢いたり、除霊(物理)をしたり、河童と闘ったり、36分間のノーカット演出のなかでタイムスリップやら異界移動をするという無茶苦茶な演出が大好きである。

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章DVD発売イベント

 そんな『コワすぎ!』が最終章になるという事で劇場公開にも足を運んでいたのだけど、舞台挨拶回のチケットを取ることができずに残念な思いをしていた。それでも、公式のTwitterをチェックしていたらDVD発売イベントがあるとのことでヴィレッジ・ヴァンガードの渋谷宇田川店に向かった。

 店内は相変わらずのカオス空間で、どこでDVDが買えるのかを探すのにもひと苦労。この店頭ポップではどんなイベントがあることすら分からないんじゃないかと心配になりつつ、なんとか購入できた。14時の時点で整理券は10番。

 適当に時間を潰して再び店に入ったのだけど、特に集まっている感じもなし。そもそも、こんな圧縮陳列のなかでどうやってイベントをするのかと思ったけれど、開始時間ギリギリに商品棚が移動されて気付いたら結構な行列になっていた。開始時間が15時なので約1時間で15人以上は買っている計算になる(別の店でも買えたのかな)。

握手&サイン会で呪力を注入

 机に工藤D役の大迫茂生さん、AD市川実穂役の久保山智夏さん、カメラマン田代正嗣役の白石晃士監督が並んで、劇中作品としての『コワすぎ!』のスタッフになりきっているメタ空間。フェイクドキュメンタリーに形作られた「異界」が現実に侵食してく。

 サインはDVDのジャケットや持ち込んだ物に書いてもらうものだと思っていたら、ありがたい事に色紙やサイン用のDVDジャケットを用意してくれていたので色紙に「コワすぎ!」スタッフとしての寄せ書きを頼む。呪物を自身に取り込んで最強の除霊パンチができるようになった工藤Dと力強い握手をすると、なんだか呪力を注入されたような気分。

フェイクドキュメンタリーは人間の認識を揺るがす儀式

 『コワすぎ!』の根源的なテーマのひとつに「人間の認識が怪異を作る」というものがあって、それは丑の刻参りやお岩さんなどで語られる「呪い」の本質でもある。そう考えると、超展開そのものが「憑物落とし」としての効果を発揮しているとはいえ、フェイクドキュメンタリーは人間の認識を揺るがす現代の呪術と見なす事もできる。その上で「コワすぎ」のスタッフとしての握手をしてもらい、劇中内のサイン色紙を書いてもらうのは、すごく儀式めいている。

 ずっとTwitterだけのやりとりであった白石監督ファンの人も目の前に現実化していて『オカルト』の舞台になった渋谷の街を歩きながら「白石くん、ありがとな」と握手をして別れる一連の流れもなんだか夢のようであった。インターネットとリアルの境界線が揺らいでいくのも「異界」の進出のひとつである。

『超コワすぎ!』も楽しみ

 『コワすぎ!』シリーズは最終章になったとはいえ、すぐに『超コワすぎ!』シリーズとして再開する。行き着くところまで行き着いてしまったメタ展開をリセットして都市伝説を追っていく従来の方式に戻しつつ、手法が洗練化されている事に期待。

「相手から押し付けられたルールで勝てるか!ルールは自分で作るんだよ!」
「てめぇコックリか!来るなら来てみやがれ!」

 基本的にはDVDスル―作品なのだけど、渋谷のUPLINKで劇場公開もされるので最終章と同じように劇場で観ていきたいと思う。舞台挨拶もしてくれないかなー。