「無邪気な拒否」をする人がどれだけいるか
iOSのアドブロックについて話題だけど、話題にすればするほど無邪気な拒否が増えるのだろうと見ている。「無邪気な拒否」というのは、なんとなく表示や通信や早くなるとか、バッテリーの持ちがよくなるといった情報に感応しやすい層のこと。自分の気持ち至上主義者として、科学的な判断よりも、「確からしい」という気分に応じて一気に動く浮動層がソーシャルメディアを中心にマジョリティ化しているように思われる
妄想をするのは楽しいけど、実情はそんなところ。ただし、ここまで騒いでしまえば一般層にもアドブロックの知識が届くので、そちらの影響の方が大きいと思われる。PCのブラウザも含めて。
ディスプレイ広告の拒否もそうだけど、トラッキング拒否も広告にとってのダメージが大きい。特定のサーバーへの通信をブロックすればアクセス解析が狂うし、サードパーティクッキーの利用ができなればユーザーを識別してのリターゲティング広告も行動ターゲティング広告も配信できないので「閲覧者に関係のない広告」「閲覧者が不快に思う広告」が配信される可能性が高まる。
サードパーティクッキーは通常サービスでも利用されている
サードパーティクッキーについては以下の記事で解説した(あからさマーケティング)。要するに言えばブラウザ内のクッキー情報を異なるドメインのサイト間で共有するための仕組みである。
本来、クッキーは異なるドメインのサイト間で共有することができません。しかし、広告配信会社が複数の契約先Webサイトで広告配信のために共有利用するクッキー(サードパーティクッキー)を発行することで、広告主サイト以外のWebサイトでも広告主サイトの情報を利用したリターゲティング広告の配信が行われます。
ただし、ウェブサービスを現状を考えるとサードパーティクッキーの拒否は結構難しいんじゃないかとも思われる。例えば、はてなブログでは以下の異なるドメインでブログを作ることができるし、独自ドメインも設定できる。
- hatenablog.com
- hatenablog.jp
- hateblo.jp
- hatenadiary.com
- hatenadiary.jp
サードパーティクッキーを拒否したら、これらのドメインで情報が持ち回せないので、異なるドメインのブログに移動するたびにログインをする必要がある。はてなブログに限らずとも、複数のドメインを利用しているサービスは多いし、Facebookの「いいね!」ボタンにもサードパーティクッキーが利用されている。
利便性との取引を作る
そういう意味では、サードパーティクッキーについては「利便性」による均衡が保たれやすいと思われる。「アドブロックは割れ厨」などという倫理をいくら説いたって、実際的な効果はあまりなくて、なんらかの取引を作らないと難しいとは思われる。アドブロックブロックもひとつの方法だけど、広告主への最終効果を見ていないメディア側の独善としか思えない。
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ここでいう「使ってもらえる広告」は『UNIQLOCK』を指すのだけど、そこまで奇を衒わなくても利便性を与えつつのブランドリフトはオウンドメディア全般に言える。広告についても、もっとスマートなAmazonのレコメンドのようにユーザーの利便性優位で表示されるのであれば、そこまで拒否されないんじゃないかなと思いつつ、アドネットワークから表示されるディスプレイ広告だと難しいよね。誤クリック狙いとか自分で自分の首を締めている感。なんか良い方法ないかな。

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