太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

『がっこうぐらし!』完結で突きつけられる考察厨の虚しさ

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がっこうぐらし!完結

 学園日常系とゾンビサバイバルが悪魔合体した『がっこうぐらし!』が完結した。「わたしたちはここにいます」を回収したり、能力主義や規律管理は極限状態でこそ破綻していくといった内容が描かれていてよかったのだけど、各所にある思わせぶりな表現が想像以上に投げっぱなしになったなぁという感想も抱いた。

 リアルタイムでは『がっこうぐらし! 管理人 考察のまとめ 『クローン実験説』について!(ネタバレあり)』みたいな話で盛り上がっていたのだけど、そんな話は一切なく。もちろん妄想的なこじつけや作画ミスなどもあるのだろうけれど、主人公の制服だけ青色になっている理由すら不明というのは流石にしんどい。

 同じような謎構造にある『進撃の巨人』がクライマックスに向けて丁寧な伏線回収をしていってくれているから余計にそう感じる。

考察厨の虚しさと過程を永遠に続ける楽しさ

 原作者の海法紀光氏は無名世界観と言われる『ガンパレートマーチ』や『式神の城』などの裏設定の方が多いんじゃないかという複数ゲーム内世界観における「世界の謎ハンター」筆頭格になっていたりもして、そういう「世界の謎」が少しづづ明らかになっていくような仕掛けまで期待しなかったと言えば嘘になる。

開発会社であるアルファ・システムの経営戦略の中で、「開発したゲームの権利は制作会社に渡ってしまうが、世界観は使いまわせる」という発想を元に、同じ世界観をベースにいくつものゲームを制作し、継続してファンを獲得しようとした「統一世界観構想」の元作り上げられた世界観および各種世界設定である。主に芝村裕吏が中心となって作成されているとされているが、芝村だけが作り上げたものでもない。Web小説に関しては芝村裕吏ではなく矢上総一郎の影響が強い。海法紀光の小説も、翻案ではなく無名世界観における公式な描写として扱われることになっている。

 とは言え、謎の回収がされること自体が面白いわけでもなく、リアルタイムに考察している時間が一番楽しかったりもする。そもそも大抵のゾンビ映画では発生原因さえロクに描かれない作品がほとんどだ。巻末メッセージにある「もう少し続く」に期待して、永遠に終わらない世界の謎ハンターを楽しむのも一興なのかもしれない。