遠征先での「この値段にしては良い」問題
旅行をしたり、友人宅に遠征した際に、せっかくであれば地元おすすめの店に行きたくなるのだけど、B級グルメであれ、居酒屋であれ、サウナであれ、地元民からのおすすめには「この値段にしては良い」という視点も絡んできがちだと気がついた。
地元民に取っては普段使いなのだからコストパフォーマンスも大事にするのが当たり前なのだけど、遠征客としてはもっと課金してよいから唯一無二の体験をしておきたい気持ちもある。遠征費用がサンクコストとして積み上がっている以上は、千円安い安くないの話は瑣末になってきているのだ。
観光地価格 vs 地元おすすめ
でも、高ければ良いのかと言われたらもっと難しい。財布の紐が緩くなった観光客に向けて、そこそこの見た目の料理をぼったくり価格で出されてしまいがちだ。如何にも観光地価格だと思える料理に当たると、せっかくの旅行気分が台無しになってしまう。
それでも、地方の安くて美味い個人店は店主や家族店員の人件費削減によって成立していることも多いのだけに、もうちょっと取っても良いからホスピタリティーをと言うジレンマを感じてしまう事もある。
地元おすすめに土足で踏み込んでいる自覚
しかし、そもそも「地元おすすめ」である以上は端から遠征客を相手にしていない訳だし、勝手に積み上げられた遠征費用こそ関係がない。そんな空間に土足で上がりこんであれこれ評価をしようとするのがおかしい自覚を持つべきであろう。
観光客とは何か? それは「特定の共同体にのみ属する『村人』でもなく、どの共同体にも属さない『旅人』でもなく、基本的には特定の共同体に属しつつ、ときおり別の共同体も訪れる」という存在のことである。
- 作者:東 浩紀
- 発売日: 2017/04/08
- メディア: 単行本
あくまで自身は「ときおり別の共同体も訪れる」だけの存在である。その土地の普段使いの空気を吸ってみたいのか、観光地ならでは豪奢なもてなしをされたいのか。前者であれば「この値段にしては良い」が密接に絡んでくることを織り込んだ遠征先での生活体験にこそを唯一無二な体験が隠れているのであろう。

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