太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

ふろむだ『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』〜一貫して偏った、説得力のあるアジテーションで勘違いさせる力

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

運と実力だけじゃない

 本書は『分裂勘違い君劇場 by ふろむだ』を運営する ふろむだ ( id:fromdusktildawn ) 氏の著書。分裂勘違い君劇場といえば、新会社員になりたての頃に散々読み漁った記憶があるブログ。よちよちだった自分の考え方に良くも悪くも影響を及ぼしていたと思う。

 大まかなノリは上記エントリの通り。タイトル通りに運と実力よりも、他人に「こいつはすごい」と勘違いさせる力がないと相応のステージが用意されずに結果として実力もシュリンクしていく現実を説く。価値工学における付加価値算定には「使用者優先の原則」が不可欠であるが、結局のところで使用者が錯覚や勘違いを含んで判断する価値算定によって評価されるのだから、価値算定自体をハックするインセンティブも働く。

分裂勘違い君劇場の作り方

 個々に挙げられる認知バイアスなどは『ファスト&スロー』とか『ヤバい経済学』などを読んでいれば聞いた話も多くて、新しく得るものは少ないのだけど、直感的にはトレードオフを感じられなくなる心理を正そうとするよりも、そこで産まれる錯覚資産を複利的に運用して成り上がっていこうという論旨。

 ある種の偏りに対して斜に構えるよりも、それを織り込んでしまおうというのは、まさに『分裂勘違い君劇場』のいノリである。その一方で、真逆に分裂した主張であっても「一貫して偏った、説得力のあるストーリー」さえあれば真理だと勘違いさせられる実験場としての『分裂勘違い君劇場』の舞台裏の一端が明らかにされる。勘違いさせるだけではやっぱり上手くいかないのも当然である。

 インターネット人格の数値を挙げ続けるのも、検証不能リアルアカウントの実績も、初版なのに絶賛の声が帯に書かれているもハロー効果を自覚させるための実験なのか、天然なのか。なんてスレてしまった自分が悲しくなるけれど、久々に一貫して偏った、説得力のあるアジテーションが読めて楽しかった。