究極の節約は結婚?
「偽装結婚」といえば言葉が悪いのだけど、恋愛感情はない信頼できる仕事上のパートナーと制度上の結婚をして家族経営扱いにしてしまった方が税制や保険や相続、各種家族割等のサービスを受けるのにあたってメリットがあるのではないかという思考実験をしたことがある。
離婚率の増加や晩婚化の煽りで、結婚したらどちらかが再婚なんて事は珍しくもない状態になりつつあり、かつ婚姻期間中の優遇措置が多いのであれば、生活上のパートナーととりあえず籍を入れておいた方が良いなんて判断もありえると思える。これってどうなんでしょうね。倫理的にはダメなんだろうけれど。
ケース1:仕事上のパートナー
例えば男性が起業している場合の共同経営者が女性であった場合。ぱっと思いつく限りでは以下のようなメリットがある。
生命保険や遺産相続によって事業継続性の確保ができる
仮にどちらかが死んでしまっても、互いに対して保険金支払いの受取人にする正当性が生まれる。スムーズな遺産相続も可能なので、不慮の事故によって事業が頓挫する可能性を減らせる。
不動産を共有名義にできる
こちらも事業継続性の観点。共有名義にしておくことで相続や譲渡による税金が掛からない。
売上が立たず給与が少なくなった場合に配偶者特別控除などを受けられる
仮に給料を引き下げざるを得ないような状態になった場合にも配偶者特別控除などの税制メリットがある。
社会保険の共用化
仮に給与が少なくなった場合において片方の社会保険の扶養家族にいれられる。そうすれば少ない保険料で双方に保険を掛けられる。
ケース2:ラノベ展開でなぜか住み着いたニート女子
インなんとかさんを何故か食べさせてるのであれば、扶養控除を受けたり、逆に役員扱いにしてしまった方が税制上のメリットがあるように思われる。
自身の報酬から役員報酬として名目上のお金を支払う
累進課税であるため、ひとりが1000万円稼ぐよりも、750万円と250万円に割ってしまった方が税金が安くなる。このため妻に形式上の役員報酬を支払っている個人事業主が多くいる。
また合資会社にしてしまった方が個人報酬よりも税金が安くなるが、合資会社は連名にすることで特別な補助制度なしに資本金1円から作れる。この辺は結婚してなくても可能だけど。
社会保険の共用化、配偶者特別控除
役員報酬を支払わない場合は扶養家族として扱った方が優遇措置を受けられる。
共通のメリット
携帯電話など各種サービスの家族間無料化・端末購入優遇を受けられる
例えば携帯電話では家族間の通話が無料になったり、家族で同時に買うと安くなるような制度が多くある。
社会的信用
特にフリーランスとして働いている場合においては、結婚している方が「逃げない」「責任感がある」と思われやすい傾向にある。逆にいい年して独身だとそう思われないところもあって、そのへんの社会的信用は案外バカにできない。
シェアハウスがしやすい
実態的にはシェアハウスとして利用するように不動産を借りるのに当たって、婚姻関係があるのとないのとでは難易度が違う。特別な関係のない二人がシェアハウスをすると不動産屋に特別な許可が必要になる可能性が高いが、結婚してれば当たり前の話だ。
デメリット
離婚を織り込んでいる場合は財産分与についての覚え書きが必須になる。また「家庭の問題」扱いになれば、刑事事件になりにくくなってしまうため、法律上のセキュリティホールを受け入れる必要がある。
もちろん心理的な悪影響があったり、未来に縁談があったとしてもそれを理由に破談になる可能性が増えたりもするだろうから、お互いに「今後とも普通の恋愛をする事はありえない」という境地になっている前提が必要になる。
制度上の問題だから
合コンで「明日、一緒に区役所行ってくれるひとー」と言われた事があって、30を超えると即結婚ネタは安全なシモネタになりつつある。
- 「明日、区役所行ってくれるひと―」
- 「iPhoneの料金が安くなるからアリかも」
- 「じゃあ生命保険にも入ってね♥」
もちろん冗談だけど、その会では互いにちょっと浮いてて「そういう選択肢も絶対にありえないわけじゃないのかも」と盛り上がった。「結婚ならできるけど、恋愛は難しい」とか「じゃあ、どちらかに好きな人が出来たら離婚しよう」とか。
独身税が現実化したら、本格的に偽装結婚を考える。
電波少年による嘲り
でも、これは特殊過ぎる話でもなくて、結婚や離婚なんて制度上の問題に過ぎないという事をパフォーマティブに表現したのは『進め!電波少年』である。
松村と実際に婚姻→離婚する女性を番組で募集、プレゼントとして指輪(婚約指輪扱い)が用意された。これに当時26歳の看護師(交際相手なし)が応募し、松村・松本とあるレストランで対面した。
まず、女性と松村は婚姻届にサイン、松村から女性に婚約指輪が渡された。女性は婚姻期間(3日間・1週間、1ヶ月)と生活形態(別居・同居)を選ぶことになっていたが、迷わず「3日間の別居」を即答で選択。「初夜を共にできる」と期待に膨らんでいた松村の落ち込みは激しかった。
ここで松本が登場し、「バツイチになるために離婚届を書いていただきます」と書類を渡すと、女性は「はい」と即答でサイン。松村は「離婚し……ますか?」と苦悶する。レストランの玄関で見送る際に「僕達夫婦だったんですよね」「別れても幸せになってください」としつこいまでに別れを惜しんだ。
後日、松本が実際に中野区役所へ婚姻届を、3日後に離婚届を提出。これにより、今の松村は戸籍上「バツイチ」である
今やったら無茶苦茶に叩かれたんだろうけど、当時の反応はどうだったんだろう。松村は兎も角として相手の女性はテレビにちょっと出るためだけにここまでしてしまったという事に言い知れないものを感じるし、やはり「その程度のもの」なのかもしれない。「いくら支払われたら結婚後即離婚をできる?」ってアンケートをしたら、30万円ぐらいでOKする人も出てくるように思われる。
永遠はあんまり信じられないけれど
現在の日本では婚姻率が下がる一方で、離婚率はじわじわと上がっている。DINKS(子供なし、共働き)家庭も増えた。なので良いとか悪いとかではなく、事実として離婚自体はそんなにオオゴトでもなくなった側面もあるのだろう。自分の周りの何人かはバツイチだし、むしろモテてている。
つまり結婚する時は永遠を誓いつつ、一定割合ではそうではないっていう現実を目の当たりにしているのだ。その時は「嘘だと思っていなかった」という強度こそが重要だとも思うが、外形的な判断なんてできない。また性的マイノリティや夫婦別姓等の問題によって、事実婚状態にありながら控除等の優遇措置が受けられない状態にあるため、同性愛者の友人同士で形式上の異性結婚をして生活基盤を安定させるケースもあるようだ。国籍が絡むものは犯罪に使われる場合もある。
あくまで思考実験ですし、不正確なところもあると思うが、別に特別な恋愛感情がない段階でも法律上の婚姻関係を結ぶことで独立した生計を立てるよりも暮らしやすくなるし、離婚そのものへのハードルが下がっているので、とりあえず結婚ってのも増えていくのかもしれない。と、おもってたら、本当に偽装結婚する漫画もあるのね。