はてなハイクはじめました
はてなハイクを始めてみた。ブログに長文を書くのがなかなか難しい状態にあるけれど、Twitterでは短文過ぎたり、コンテキストを明示していくのが難しいので中間のメディアが欲しかったのだ。基本的にはブログの下書きに使おうと考えている。使い始めるまでは単純に「文字数制限がなくて過疎っているTwitter」ぐらいのサービスであるという認識であったが、意外に面白いサービスである事に気がついた。
はてなハイクでは投稿欄に「お題」と「本文」がある。Twitterの素晴らしい発明は「タイトルをつけない」で書けるところなのであるが、はてなハイクの場合は「お題」を付けるところ、正確に言えば「お題」を見つけるところから始まる。
「お題」がそのままWikiのようなキーワードとなっており、関連する発言を一覧する事もできるし、そのお題に対して発言し続けることもできる。Twitterにもハッシュタグという概念があるが、短文かつ都度入力する必要があり、また後から辿りにくいために面倒であった。
はてなハイクとシステム手帳
既存のお題に対して大喜利をしたり、議論をするといった使い方もできるが、自分の場合は独自の用語を作って発言を追記していく事を想定している。「お題」をお気に入りで管理する事も可能であり、タイムラインとは別に自分の懸案事項となっている「お題」を表示しておく事ができるのが便利。この構造について考えると、システム手帳に似ているのではないかと気がついた。ゲームデザイナーの芝村裕吏氏がシステム手帳について以下のように呟いていた。
次に、情報のとらえ方を変えてください。
— 芝村裕吏 (@siva_yuri) 2010年1月30日
現代ではシステム手帳の運用は戦場での運用形態に先祖返りしています。
つまり、同時並行に複数ページを書いたり捨てたり、運用していきます。
おおよそ。30事案程度を同時に進行させていきます。
バイブルサイズのシステム手帳が縦に長いのは、この運用にあっているせいです。追記して行くのがやりやすい訳ですね。
— 芝村裕吏 (@siva_yuri) 2010年1月30日
一ページ(一リフィル)に事案一つ、複数ページにはわたらず、一枚に納めるという原則を護って、書いていきましょう。
今、現代において数十の問題を個人がかかえているのは普通ですが、同時に数十を推し進めるのは、人間には不可能です。
— 芝村裕吏 (@siva_yuri) 2010年1月30日
ですから、この手の道具というのは、かなり有用です。あると、なしが、かなりの差を生みます。
僕自身も紙の手帳で同じ事を行なっている。
しかし、ブログにする事を考えると最初からコンピュータに打ち込んでおいた方が楽である。システム手帳のメタファで考えるとコンテキストを「お題」で絞って追記していく方式は相性が良い。この時に最初から「編集」ができてしまってはいけない。「編集」はブログや別のハイクへの「転記」する際に行えばよくて、時系列の過程を捨て去る必要はないのだ。
豊富な資源とクリエイティブ水子
糸井重里氏は『インターネット的 (PHP新書)』において「クリエイティブの水子」という既存のメディアは有限であるために形に残らないまま消えていく無数のクリエイティブがあると指摘し、水子の供養場所が必要であると提言している。それにTwitterは一定の範囲では役に立つのであるが、後から使おうとするのは至難の技であった。ノマドワーキングとか電子書籍とかに関して2年以上前にそれなりに正確な予想とか考察とかTwitterに書いていたはずだが、そもそも読まれていないし、誰の記憶からも消えてしまったであろう。なにせ書いた本人も忘れていたりするし、コンテキストが明示されていないから後から提示する事も困難であった。
葬式は生者のためにするものである。供養というのはそこで終わりではなく、死を周知し、墓に刻まれたエピタフを後から辿れるようにするということでもある。それはコミットされなかった「取消線」が明示された幽霊としてミームを半透明に生き延びさせてやるという事でもあるのだ。盗作を疑われた時のエビデンスにもなる。
有限の世界においては、クリエイティブ水子を捨て去るからこそ相対的に重要なものだけが残されるのであるが、使われるクリエイティブの絶対数が少ないのであれば、安牌を狙わざるをえないスキームに追い込まれてしまうし、文章を書く絶対量が少なければ良いものはかけない。素人の安牌なんて一番要らないのである。かと言ってブログに短文の追記をしていくというのもクオリティコントロールが難しいし、そこに良い物が混じっていたとしても埋もれてしまう。だからまずはハイクに書いていって、ブログにまとめるという運用方式が良いのではないかと思ったのだ。
TwitterとEvernoteに連携する
ただ、はてなハイクというサービスは外部サービスから孤立しており、Twitter連携すら『告田戦車のkokuda.org』という外部サイトを利用しないとできないし、はてなブックマークとの連携も難しいようだ。どんなサービスを利用してもログはEvernoteに全文とっておきたいので、RSSを読み取ってEvernoteにメールするサービスである『Free realtime RSS and Atom feed to email service. Get your favourite blogs, feeds, and news delivered to your inbox.』を用いて連携するようにした。あくまでクリエイティブ水子の供養であってあまり前面に出す気もないので非公開アカウントの方にのみ連携するようにした。
まだ使いはじめたばかりであるが、Macから使う分にはなかなか快適であると思う。出先から使う時にどうなるのかが見えていないが、適材適所で活用していけたらと思う。はてな村限界集落と言われて久しいが、はてブは既に欠かせないし、ハイクも欠かせなくなりそうな雰囲気。ニッチなものに判官贔屓してしまう性ではあるのだけど、良い所が多いので頑張って頂きたいと思う。
タイトルを付けなくてよいメリット
@TM25021 なるほど。てっきり、増田同様に、はてなハイクの、別に無理してタイトルを付けなくても無題の文章を書きやすい雰囲気が気に入っているのかな、と妄想していました。表題付けを意識することで失われるものとかあるので。
— まめ狸@パラオ泊地 (@mametanuki) 2012年11月19日
無理にタイトルを付けなくてよいのがメリットであるという発言もあるが、僕の場合は「お題」があるのが良いと思ったので人によって違うのだと思った。でも、「お題」は「カテゴリ」としての運用が主で「タイトル」ではない。カテゴリという意味ではフォークソノミーとして、ある文章を複数のお題に属させたいという感覚もある。
Facebookもそのような運用に適しているのかもしれないが、どうしても仕事上の関係の人も参加してくるので真っ先に「鯖を分けたい」サービスであった。そこはシステムよりも参加者の性質と自分の関係性が重要というところではある。その意味ではてなハイクは「孤独のSNS」に適しているのだと思う。
過疎のメリット
id:kanose さんが『2012-11-23』で挙げているのだけど「過疎」というのもメリットではある。ブログにあまりに生焼けの情報を書くのはリスクが高いが「鯖を分けたい」という要望を叶えてくれる。
サービスが過疎になるほど大槻ケンヂの言う「机SNS」「透明下敷」でのパッシブな好きなものアピールに似てくる。教室の机に描かれた落書きを見て会話が始まる事を期待するわけだけど、机に描かれた落書きを見て反応してくる人なんて基本的には性質が似ている人ばかりであるからできることだ。それはシステム手帳を開いたまま机に置いたり、過疎のサービスを利用しても実現できるのではないか。やっぱり、はてなハイクとシステム手帳はちょっと似ている。

- 作者:近藤 淳也
- 発売日: 2006/02/13
- メディア: 単行本