太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

読書-書評

借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』〜ヒロイックな発達障害の制約と誓約の嘘

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術 “カドカワさん「そういうわけで、やる?期間は半年。その間にすんごいPV達成したら書籍化。PVが残念な数字だったら残念賞。やる?」” 8月が終わるけどどうなったんだろう / “プレ公開と経緯説明、そ…

地主恵亮『ひとりぼっちを全力で楽しむ』〜自分の代わりに全力で蕩尽してもらう背徳感のスパイス

ひとりぼっちを全力で楽しむ 友だちがいない、恋人がいない、一緒にお昼を食べる人がいない、仕事がつらい、お金がない、結婚できない、家がない、Facebookにいいね! がつかない… そんなことで悩んでいませんか? 孤独は否定するものではなく、むしろ積極的に…

本多静六『私の財産告白』〜明治時代のブロガーが明かす貯蓄と投資の極意

本多静六『私の財産告白』 金融リテラシーを高めるための名著として名高い本多静六の『私の財産告白 』を読んだ。著者は慶応二年(1866年)に生まれた明治時代の林学博士で、日比谷公園や明治神宮の設計・改良に関わる一方で、大学教員による収入を基礎にし…

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』〜愛は祈りであり、祈りは起こってしまった過去を治す自己療養の試み

Love Love Love You I Love You 舞城王太郎を語るのは難しい。京極夏彦、清涼院流水、森博嗣、浦賀和宏、高田崇史、西尾維新、佐藤友哉、etc、etc。講談社発刊の文芸雑誌『メフィスト』に綺羅星のごとく登場してきたスター作家達をみると学生時代を思い出し…

浦賀和宏『記憶の果て』〜厳密に似ている同士の社会的劣性遺伝子

記憶の果てにあるものとは? 父が自殺した。突然の死を受け入れられない安藤直樹は、父の部屋にある真っ黒で不気味なパソコンを立ち上げる。ディスプレイに現れた「裕子」と名乗る女性と次第に心を通わせるようになる安藤。裕子の意識はプログラムなのか実体…

ハインライン『夏への扉』〜過去へのコントロール不可能性を超えて

『夏への扉』を読んだ 『夏への扉』は1957年にロバート・A・ハインラインによって書かれたSF小説の古典であり、日本での人気が非常に高い。その一方で、評論家や海外での評価はそれほど高くないというギャップがある事までは知っていた。 hatena内でオススメ…

二村ヒトシ『すべてはモテるためである』〜この恋愛に【あたし】と【あなた】はどこにいる?

いまになって「モテ」本を読むことについて Skype読書会にあわせて『すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)』を読みました。33歳独身。それなりの過程はあれど「いま/ここ」には何も残っていません。そろそろ夫婦関係の秘訣や子育て日記を書いていても良…

西加奈子『通天閣』〜工場とスナックが交わる通天閣でこれまで言えなかった全員分の「好きや!」を叫ぶ

『通天閣』で交わるふたつの生活 『サラバ』で第152回直木三十五賞を受賞した西加奈子氏が、2006年に発表した小説である。「底辺」とか「場末」という言葉似合う工場勤務のおっさんと、スナック勤務の女性の生活が交互に描かれながら、大阪の「通天閣」を交…

岡本欣也『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの発想』〜それを伝えられた人はどうしたくなる?

コピーライターは「翻訳業」 本書は「日本郵政」や「キリン」などの広告を手がけた事で知られるコピーライターの岡本欣也氏による「コピー」の解説書である。そもそも「コピー」とは広告内で使われる言葉であり、見出しにあたる「キャッチコピー」、補足説明…

西村賢太『二度はゆけぬ町の地図』〜『苦役列車』の前日譚となる私小説において「自虐的な道化師」として描かれる貫多の日乗

二度はゆけぬ町の地図 本書は、中卒で日雇労働をしながら、酒と女に蕩尽してきた筆者の「私小説」である。西村賢太について、僕としては『苦役列車 (新潮文庫)』の芥川賞受賞が話題として消費されつつあり、作者が甚だ不満だという映画化をされてから知る事…

『"文学少女"と死にたがりの道化』〜太宰にシンクロする青春のほろ苦さ

文学少女と「場」が引き起こすループ 「文学少女」シリーズとは文学を物理的に食べて生きる「文学少女」と、覆面の天才小説家だった過去を持つ主人公が織りなす学園青春ミステリーである。その一作目である本書では、太宰治の『人間失格』を軸に、今まさに起…

未(ひつじ)を巡る冒険が始まる朝に100%の女の子と出会うことについて〜村上春樹『カンガルー日和』

カンガルー日和 「ねぇ、年越しに読む本は何がいい?」 そんな台詞から始まった会話は「未年にちなんで羊が出てくる作品が尊い」という結論になった。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や『羊をめぐる冒険』を想起したが、同じ羊男ならばと『カンガル…

2035年からの終活戦線、「弱いつながり」だけでは異常アリ〜吉田太一『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』

「孤立死」の問題 テレビのドキュメンタリーにおいては「孤独死」という言葉がピックアップされる事が多いけれど、日本政府においては「孤立死」という言葉になる事も多いのだそうだ。確かに「孤立死」という言葉の方が、親族や気にしてくれる人が周りにいた…

内田樹『街場のメディア論』〜贈与と反対給付義務の「前借り」で読み解くメディア論

講義録のような「街場」シリーズ 内田樹の「街場」シリーズ4作目。「街場」シリーズとは、大学でのディスカッションのテープ起こしを元に書かれた本であり、既に多数の「街場」本が出版されている。 街場の現代思想 (文春文庫)作者: 内田樹出版社/メーカー: …

岡田斗司夫の『「いいひと」戦略』は「イヤなひと全損社会」の背反を考えれば分かりやすい

「いいひと」の定義 もし「表層的な偽善者」が「いい人」だと評価されるのが「評価経済社会」だとしたら、そんなうさん臭い未来は心配しなくてもやって来ないので大丈夫です。なぜなら何度もいうように、「いい人」を“演じて”もバレるから。上っ面だけ整えた…

「情報はフリーになるべきだ」から「情報はフリーになりたがる」への変遷にみる「モノの式神化」

「情報はフリーになりたがる」の歴史 「情報はフリーになりたがる」という言葉は、なんとなく聞く機会が多いです。インターネットに限らず、情報を引き出すためのコストは下がり続け、提供者の側も無料であることを前提としている人が多いです。『フリー~〈…

ソーシャルメディア時代における「本当の私」はどこにある?〜平野啓一郎『私とは何か――「個人」から「分人」へ』

「分人」再検討 本書は平野啓一郎が自著の小説である『ドーン』で描いた「分人(dividual)」という概念について、著者自身の自伝的な要素を含めて一般に向けて解説した書籍である。 ドーン (講談社文庫)作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 201…

岡田斗司夫『いや、上京するの面倒くさいし地元の方が楽だよね』〜地元で楽に暮らせるナリワイを作るには「えこひいき」されるようにしよう

地元志向とネット 本書は香川県で行われた岡田斗司夫の講演「ネット時代こそ地方在住者のチャンスだ!」を再構成した電子書籍である。東京と地方での活動の違いや、今後の働き方や人口流動などが話題になっている。 無理やり一人暮らしする必要はないし、親…

毎日新聞社『リアル30's "生きづらさ"を理解するために』〜何かを期待して裏切られた世代のダウナーなオフ会

30代のリアル 本書はいわゆる「失われた20年」に青春期を過ごして、就職時には氷河期だった30代の人々へのインタビュー集である。現在における30代の人々はバブル景気の中で幼少期を過ごし、学歴重視や大手企業信奉の非常に強い時期に青春を過ごしている。そ…

東浩紀『弱いつながり』〜環境管理型権力を出し抜く「観光客」の生き方

Googleが予測できない言葉を手に入れろ! 東浩紀の新著である『弱いつながり 検索ワードを探す旅』。現代日本におけるインターネット論でありながら旅行記でもあり、著者の思想が平易な言葉で引用・解説されながら、一種の自己啓発的な様相も帯びる自在性が…

久住昌之『野武士、西へ 二年間の散歩』〜孤独の東海道中膝栗毛

月一散歩で大阪まで 『野武士のグルメ 増量新装版』から勝手に続いていく野武士シリーズ。もともと「野武士」というのは『孤独のグルメ (扶桑社文庫)』の文庫版にのみ収録されてる巻末エッセイで、店に入ったら野武士のように一言「酒!」と言えば万事が済む…

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

photo by Louis Engival (Pentax only) もし僕らのことばがウィスキーであったなら 予定のない週末。ハニーローストピーナッツを齧りながら、ウィスキーを舐め、フュージョンを聴きながら小説を読む。僕が僕自身に満たしたい瞬間はここに集約されている。だ…

切符を耳の穴に入れて運ぶライフハック

photo by ed_needs_a_bicycle 切符をなくさないように 村上春樹おじさんのエッセイ集である『村上朝日堂 (新潮文庫)』を少しづつ読んでいるのだけど、その中にある「電車の切符を耳の穴に入れる」という話が頭の中に残っている。曰く、切符をポケットにいれ…

馬乗りされたい僕と応じるたびに変わる君〜谷崎潤一郎『痴人の愛』

婚活小説としての痴人の愛 谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んだ。馴染み深い表紙の新潮文庫版ではなくて中公文庫版。Kindleで買うと新潮文庫版が490円で、中公文庫版が350円だったという即物的な理由なのだけど、そもそも電子書籍で価格差が発生することがある…

第2回Skype読書会『一九八四年』〜意志力対決に勝ち続ける意志力

photo by Diodoro 自己洗脳 連続出張でやられてるからちゃんと寝ようとしてるのに、夜中に会社からの電話で起こされたり、仕事量がパンクしてるのに長時間のMTGがあったりして頭がラリックマになっている。壊れかけのレディオがターゲットだったと想定できな…

『1984年』の言語論的転回と際限のないバズワード生成について

photo by Nina J. G. 1984年 『一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)』を読んでいる。この作品って「監視社会」の代名詞的に言われるけれど、むしろ「言語論的転回」の話だと思う。「ニュースピーク(=新言語)」がまさにそうなのだけど、例えば「国家社会主…

松澤大之『リングノートでムダな勉強をやめなさい』〜本のミニチュア化で「分かる」から「できる」へ

リングノート勉強法 『捨てる技術で能率アップ リングノートでムダな勉強をやめなさい 階層構造化で難関試験もらくらく突破!』で紹介されるリングノート勉強法は、資格を効率的に取得することを主目的とした勉強法です。リングノートというよりも、ファイリ…

大槻ケンヂ『サブカルで食う』〜普通の事が出来ないボンクラがサブカルで食うための4Jとは?

サブカルで食う 全国のサブカル糞野郎の皆さんハロニチワ。僕はサブカル糞野郎のフリをしている普通の人です。『渋谷直角 『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』〜自意識の不良債権を背負ったサブカルクソ野郎達への鎮魂歌 - …

山口揚平『なぜゴッホは貧乏、ピカソは金持ちだったのか?』〜ピカソはなぜ小切手を使い続けたか

photo by eVo photoゴッホとピカソ ゴッホといえば、「死後に評価された悲劇の画家」として有名です。生前に売れた作品は1点のみであったり、耳を切り落としたエピソードなどが思い起こされます。一方でピカソと言えばオークションを活用するなどして莫大な…

全ては自分メディアへの養分とするために。でもそんなに育ててどうするの?〜ちきりん『「Chikirinの日記」の育て方』

「Chikirinの日記」の育て方 本書は人気ブログである『Chikirinの日記』が、どのような戦略をもって運営されてきたかの裏側が書かれた本です。KDPによる自費出版であり、レイアウトを含めて id:Chikirin さん自身がされたとのことです。 その中の「気づき」…