テスト氏
「テスト」と聞くと、どうにも『テスト氏 (福武文庫)』を思い出す。教養コンプレックスだったときに読んだ本であり、僕が毎日書く事に改めてこだわり始めたのは、ヴァレリーの「カイエ」の影響もある。
ヴァレリーは23歳から死ぬまで公表を前提としない「カイエ(=ノート)」を書き続けて、その量は26,000ページにもなっているという。「テスト氏」は、その結晶とも言えるキャラクターであり、彼の分身であると言える。序文には以下のように書かれている。
或る種の人々の特異性や、良いにせよ悪いにせよとにかく並外れた彼らの価値が、時として、それらを生み出した人間のほんの一時的な状態に由来するといったようなことも、結局のところ、ありえぬことではない。不安定なものがこのようにして伝えられ、なにがしかの生のみちを辿ることもありうるのである。それにまた精神界においては、これこそ、われわれの著作という機能であり、才能というはたらき、仕事の対象それ自体ではあるのではないだろうか、つまり、これこそ、自分が手に入れたもっとも稀有なものを自分の死んだあとまで存続させたいというあの奇妙な本能の本質ではないだろうか?
大抵の人は仮に並外れた何かができたとしても、あくまで「一時的な状態」にすぎない可能性が高い。それでも、数をこなすことで時々はうまくいくパターンが蓄積され、それらを組み合わせる事で、ある程度は意図的に良いものが出せるようになる。
カイエのみで満足してしまうこと
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