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全巻一冊 北斗の拳は自費出版や全集復刊として普及しそう

Sublime WoW: Inspiration 02

全巻一冊 北斗の拳の電子書籍

 9月13日にオープンした「Kickstarter」日本語版のローンチプロジェクトとして『全巻一冊 北斗の拳』が公開された。300万円のプロジェクトに対してすでに1000万以上が集まっており、その注目度の高さがうかがえる。

作品への没入感を高めるために、慣れ親しんだ紙のマンガ本の良いところをたくさん再現しました。そのひとつのこだわりが「紙感」です。「全巻一冊 北斗の拳」の外装は、紙でつくられています。手触りは紙のマンガそのもの。まるで紙のマンガを読んでいるような心地よさに包まれることでしょう。 表紙にはカバーも付けました。もはや見た目も「紙のマンガ」そのものです。

 既存の電子書籍との最大の違いは、本棚においても違和感がない「モノとして価値」という点にあげられるだろう。あえて汎用的な電子書籍リーダーにはしないからこそ、ネット接続もアカウント認証も必要がない割り切ったインターフェイスが可能となるし、貸し借りの可能性も生まれてくる。

自費出版や全集復刊として普及しそう

 ネックとなるのは3万円を超える価格であろう。ハードウェアとコンテンツの買い切りであるため、どうしたってコストが掛かる。Kindle Paperwhiteと『北斗の拳』電子版の全巻を組み合わせるだけでも2万円以上するのだ。紙版を簡単に手にいれられる状況も割高感を増大させる。これがネックとならない出版形態は自費出版と全集復刊なのではないかと思う。

 自費出版とはその名の通り、期待できる部数やその内容によって商業出版が困難な本を著者自身が費用を出して出版する形態である。その対象は自分史や詩吟などであるため、モノとしての価値が必要となり、小ロットであるから印刷の単価が高価になりがちである。

 特定著者の全集としての復刊も状況が似ている。例えば『苦役列車』の西村賢太は、藤澤清造に傾倒しており、藤澤清造全集の個人編集と自費出版を手掛けているのだけど、こちらも高価な印刷費用や在庫管理がネックとなる。

『全巻一冊 司馬遼太郎』がほしい

 これを解決する方法として全巻一冊の一冊の仕組みが使えるのではないか。基本的なハードウェアは量産化して、表紙の印刷とデータの差し替えでモノとしての価値を保ちながら、印刷費用や在庫コストは最低限にできる。

『太宰治全集・280作品⇒1冊』

『太宰治全集・280作品⇒1冊』

 すでに青空文庫にはいった著者であれば『全巻一冊』にかかるコンテンツ費用すら最低限だ。吉村栄治、司馬遼太郎、江戸川乱歩、海野十三など、19,800円以下なら、売れそうな全集のラインナップが思い浮かぶ。図書館などにおいてもよいだろう。

電子データの愛蔵版

 過去にケータイ小説の紙書籍化が爆発的に売れた文脈として「電子データの愛蔵版」としての需要があったと言われる。そこにあるのは電子データであるからこそ、あくまでモノとして手に取れるコンテンツ一体型のハードウェアであることが重要となる。

 ミニスーパーファミコンもコンテンツ一体型ハードウェアである。Nitendo Switchのコントローラーで遊ぶエミュレーターでもなく、カートリッジによるソフトウェア差し替えでもなく、あくまでモノとしての形態を保ちながらデジタルの力で小さく集約する。『全巻一冊 北斗の拳』にはそんな可能性を感じた。

北斗の拳 世紀末ザコ伝説 (ゼノンコミックスDX)

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