太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

初手はマカロニサラダのソースがけ! やきとん屋でこそ『食の軍師』の兵法を考える甲斐がある

食の軍師 兵法の二 もつ焼の軍師

 先週から、『食の軍師』のドラマ版が始まったのだけど、第二回の「もつ焼き」はまさに兵法を考えたくなる筆頭であろう。小さな店内に人がひしめき合い、品切れ品や多種多様な黒板メニューを頭にいれつつ、焼きロットを乱さず、食のペースを乱さず、最高の費用対効果を目指す。

 個人的には「もつ焼き」ではなく「やきとん」と呼びたい。らーめん二郎のロットバトルのような妄想は二郎だけの専売ではないのだ。

焼きとん屋の初手はマカロニサラダ

 まずは酒とクイックメニューを頼みたい。串は注文してから焼いたものを食べるのだから、待ち時間を豊穣にする必要がある。ドラマではお新香を頼んでいるが、初手はマカロニサラダが最上である。仕込み済みだからすぐに出てくるし、局面に応じてサラダにも主食にもツマミにもなるパートナー。ソースをかけるのも好み。ポテトサラダもよいが「味じゃが」を頼むならジャガイモが被ってしまうから事前情報が重要。お通しも把握して被らせない事が望ましい。

日本酒二合 or 瓶ビールをパーマネント化する

 お酒には好みがあるのだけど、個人的には初手に日本酒二合か瓶ビールを頼んでサラダをツマミをチビチビとやってるのが好きだ。ビール一杯分の値段で最後まで呑めるし、店主を煩わせる事もない。生ビールをがんがん頼んで割り勘にされると「和民に行け」って気分になるぐらいには度量が狭い。

 焼きとんが焼き上がるまでには時間がかかるという前提で、テーブルにはパーマネントをデプロイしておかないと、バーンアウトまでのディレイに手持ち無沙汰となってしまう。マカロニサラダやポテサラダもしかり。外部要因と内部要因を切り分けて、内部要因化できる部分でペースを握っていくよう兵法を重ねていくのが肝要である。

シモネタは紙に書いて渡せ

 レバー塩とシロタレは必須として、そこから何を頼むのかは気分によるのだけど、文字通りのシモネタについて口に出すのが恥ずかしい。最近は、用紙に書いて注文できる店も増えているので大分緩和された。他の人に何を頼んでいるのか知られる事もない。

 それでも、想像しちゃって食べにくいので遠慮する事のが多い。生レバーとか蛙とかは平気で食べているのに不思議なものだ。食わず嫌い王決定戦の正解が虫かシモ関係になる地獄絵図。好き嫌いがないといえば嘘になってしまうが、「苦手な食べ物」として認識している方がおかしいという話でもある。

 部位によって焼き上がり時間にムラがあるので、一気に持ってきてもらうためには同じ時間で焼きあがるものを頼みたい。焼き上がるたびに渡す事を厭わない店であれば、自分の食べるペースを先読みして注文を仕込んでおく。

やきとん屋は戦場

 そんなわけで、やきとん屋は戦場なのである。特に店主ひとりで全部をやっているような店でへんな頼み方をすると露骨に嫌な顔をされたり、質がばらついてしまう事があるので、気をつけたい。

 対抗する第二陣には「がんもどき・ちくわぶ・ウィンナー」と「もどき3種」を布陣。ガンの肉を模した生揚げ、ちくわを模した麩、羊の腸を模した人工ケーシングに詰められた挽き肉。煮込んでしまえば味を吸いやすい「もどき」のがうまくなる不思議。

 おでん屋も兵法はできる。そろそろ新生活にも慣れて「馴染みの店」を作りたいと思う時期だろうし、ぜひ焼きとん屋での兵法合戦を楽しんでほしい。