太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

女子目線で語る『すべてはモテるためである』感想戦~恋の規制緩和で自分の中のモモレンジャーを圧倒的成長させたい

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

女子目線で語る『すべてはモテるためである』感想戦

 昨日は『すべてはモテるためである』の読書会。男4人・女2人で3時間の侃々諤々。事前に書いた感想文を含めて、なかなか濃い話ができたように思います。お疲れ様でした。僕なりの感想を述べさせていただきます。

 サブタイトルに「女子目線で語る」と敢えて入れたのですが、これは本書内にある「自分の中のモモレンジャー」という話に繋がります。自省系ナンパクラスタなどのホモソーシャル空間で流通されがちな「モテ必殺技」「実績の解除」「圧倒的成長」といった要素は少年漫画的文法のリフレインであって、ミニ四駆対決で全てを決定する「ミニ四駆の惑星」と大差ないよねと僕の中のモモレンジャーが言うわけですが、こういった疑問について本物の女性に聞くことで確証を得ていこうとおもったわけです。

 「相手の気持ちに立ったつもりで独りよがりな事をする」または「当事者間の問題を第三者に委ねる」のは意味がないどころか害悪ですらあるので「自分の中のモモレンジャーを鍛えていく」ための機会を増やす事が大切なのだと改めて感じています。その一方で恋愛そのものへのリスク意識とコスト意識が高まっている事が草食化や絶食化に繋がっていて、それが自分の中のモモレンジャーを成長させるための機会を逃しているのではないかという図式があります。

「恋愛禁猟区」とリスクの問題

 自分の中のモモレンジャーを鍛えていくには、良くも悪くも試行錯誤が必要であり、自分にとっての「失敗してもよい場所」を作ろうという話になりました。本書の中でも「キャバクラ」や「オフ会」として書かれている事ですね。ただ若い人からの意見で「現在のSNSでは絶対に失敗できない」という話が出てきて、それさえも実質的な「恋愛禁猟区」になっているのであろうと感じました。

 これは振られることへのリスクではなくて、振られた後に情報共有されてしまうリスクではないだろうか?

 そもそも不確実性のない=リスクがない状態なんてのは存在しないので、リスクだと思ってるのはその後の影響ですよね。

 例えば、はてな村内でその手の失敗をした場合のリスクは途方もなく高いわけで、はてなに思い入れがあるほど「はてなID持ってる女子はちょっと……」となりがちです。はてな女子とホットサンドを頬張りながらホッテトリの話をしてたら楽しい人生になりそうだとしてもね。その一方で、共同幻想としての「恋愛禁猟区」をうまく活用して無双している人もきっといるのだと思います。だって、競争相手が少ないし、禁忌によって燃え上がるものもありますし……それがサークルクラッシャーですね。

 だけど、僕らもいい大人になったわけですし、そんな事を言って足を引っ張りあってる場合でもあるまいという話になりました。既婚者だって珍しくない中でさえ中学生マインドのままでいるのはどうなんでしょうと。そもそも「恋愛禁猟区」自体がそれぞれの妄想の中に存在しているだけであって、具体的にどうなのかと掘り下げると大した話ではありません。それでも女性側から肉食になってもらった方が、モラハラ・セクハラ的な問題になりにくいという構造はあるなぁと思いましたが。

感情労働としての恋愛とコストの問題

 もうひとつの視点として申し訳程度の恋愛をしていると「感情労働」に疲れるという話があります。何が好きなのかをリサーチして、デートコースを作って、レストランを予約して、プレゼントを選んでるうちに「なんか疲れちゃったな」と思う事もあります。「HOW」の情報ばかりが流通しているからこそ、もはや「サービス業としてのプライド」みたいな話にすり替わっているという当事者疎外の少年漫画的なパラダイムです。女性側からしても「良き妻を演じる」みたいな話があると聞きますし、【あなた】を疎外したまま行われる「べき論」の諸々に疲れてしまう事もあるのだろうと思います。モモレンジャーは成長するほどに、優しくて気まぐれで嫉妬深い等身大の【あなた】に近付いていくはずなのです。

 ただ、そういうのが全く苦にならない相手も時々はいて、それが「ちゃんと愛している」という事なのだろうけれど、相手もその感覚を共有してくれているとは限りませんし、むしろ勝手な自分比で「特別な事」をしてしまうので、あまりうまくいきません。「うまい」というのも「まずい」というのも同じ三文字だからコストは変わらないという話もでましたが、そこは僕自身が不必要なぐらいに潔癖なんでしょう。ボーリングでも順当なスペアを狙わずに、敢えてスプリットを狙ってから頑張るタイプと言われました。これも少年漫画的パラダイムですね。

木を隠すための森を育てる

 そんなわけで、一般層になるほどリスクやコストを惜しんで恋愛流通量そのものが少なくなっているから、余計に失敗できなくなったり、いまひとつの相性に消耗してしまうのではないかと思うわけですね。だからもっと「自分から好きだと言おう」「愛される準備をしておこう」が結論なわけだけど、もうひとつの視点があって、つまりコミュニティ内での恋愛が当たり前に流通していれば、いちいちひとの事なんて気にしてられないんじゃないかという事です。

 色恋沙汰で失敗したという情報自体がレアなコミュニティほど、ひとつひとつに騒ぎ立てて当事者同士の健全な話すらできなくなるし、失敗できない=挑戦できないとなってしまうわけですが、はてな婚活だって当たり前の話になれば、ひどい話以外はスルーされるようになると思うんですよね。つまり木を隠すための森を育てるという事です。そんな表参道ヒルズ高校白書化計画による恋の総量規制緩和がうまくいった暁にこそ勇気を振り絞りたい……という事で僕にインストールされている少年漫画脳はそう簡単に治らない事が分かりました。

 そんなわけで、読書会へのご参加ありがとうございました。普段はあまり語らない題材だったので新鮮で楽しかったです。また次回は異なるテーマで考えていますが、よかったら参加を検討してみてください。

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