太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

地主恵亮『ひとりぼっちを全力で楽しむ』〜自分の代わりに全力で蕩尽してもらう背徳感のスパイス

ひとりぼっちを全力で楽しむ

友だちがいない、恋人がいない、一緒にお昼を食べる人がいない、仕事がつらい、お金がない、結婚できない、家がない、Facebookにいいね! がつかない… そんなことで悩んでいませんか? 孤独は否定するものではなく、むしろ積極的に楽しむものなのです! めざましテレビ、行列ができる法律相談所、ゴロウデラックス、朝日新聞、イギリスの超一流ガーディアン紙やアメリカのCNN……など、国内外のメディアに取り上げられ、話題をかっさらった「ひとりマスター」地主恵亮が贈る、驚くほど人生が豊かになる孤独力の鍛え方

 本書はデイリーポータルZで「一人で女子とカフェデートしている写真を撮る方法」などの妄想彼女記事を書き続ける地主恵亮氏の自己啓発書……のテイで進むネタ本。

 恋人がいない。友達がいない。お金がないといった悩みに対する「それでもいいんじゃん」「でもやるんだよ」といった文章の後に「はい、これがダメ考え方です。」というオチがついて、斜め上の解決策が提示される展開。

発想の転換とそれを実際にやってしまう偉大さ

 斜め上の解決策を妄想するまではよくある話なのだけど、それを実際にやってみるカラー写真付きのレポートがキモ。個別のネタバレをしてしまうのも無粋だがら詳細は伏せるけれど、何度も海外に行ったり、大御所漫画家にインタビューしたり、本当にしょうもないネタだったりがいつものノリで進んでいく。

 2個目のネタからは悩みからの解決策をどうするのかを予想する別の楽しみが生まれる。一気読みすると胸焼けするから、バズってSNSから回ってくるぐらいの周期で読んでいくのがちょうどよい感じ。ひとりぼっちを全力で楽しめるようになる効果は一切ないけれど、奇妙な面白さが続く。Webでよいじゃんってのもあるけど、 Kindle Unlimited なら無料。

自分の代わりに蕩尽してもらう背徳感のスパイス

 昔からデイリーポータルZをよく読んでいるのだけど、この手の記事ってバカバカしいことなのに全力でやってみるのを第三者視点で追体験できるから楽しいのであって、自分で同じことをやろうとは思わないし、その場にいたいわけでもないという構造がある。

 「確率は低いけど、もしかしたら? 」に挑戦して案の定失敗したり、稀に成功する様を眺めていると、自分の代わりにお金や時間を全力で蕩尽してもらったかのような奇妙な共感性と疎外の同居によって生まれる背徳感が面白さのスパイスとなる。仮想通貨やFXにひりつくような賭けを眺めているのが楽しいのも同根だろう。

ラーニング・ゾーンにいれば様々な間違えを犯してしまうのが日常となるが、それを素直に受け入れるのが難しい。だから実戦で間違えないための十分な準備と机上の空論をこねくり回しながら、誰かのゲームプレイをベガ立ちで見つめているうちに色々なことが閉店時間になってしまった。

 僕がひとりぼっちなのは、そういう所やでってのは分かっているけど、ひとりぼっちだから楽しめることもあるか。