太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

「呪い」に採用されるテクノロジーでハイプサイクルを実感する

Curse, Hereford Museum

非実在存在による祟りと法的リスク

 小松左京の『日本の呪い―「闇の心性」が生み出す文化とは (カッパ・サイエンス)』によれば、物部村の祈祷師が災厄や病気(障り)の原因宣告には大きくわけて「祟り」と「呪い」があるという。「祟り」は神仏や精霊のタブーを破ったことによる神秘的制裁であり、「呪い」は特定個人の生み出す怨念による影響とする。

 主体人格の存在しない「祟り」であればお祓いで済むが、実行主体が存在する「呪い」に対しては呪詛返しなどの「報復」がセットとなる。それでなくても、「その病気は○○さんの呪いが原因」と言われれば、その真偽はさておき私刑に駆り立てられてもおかしくはないし、祈祷師自体が名誉毀損や人権侵害で訴えられる可能性がある。これを回避するために近年では「祟り」と宣告したり、「呪い」であって特定個人を明示しないようになっているそうだ。

 非実在存在を原因に挙げることで法的リスクを回避するのは、非実在青少年の議論を彷彿とさせるわけで、その法律が真に実効的なのかを測る指標として「呪い」から排除されているか?という観点がありえる。つまり「呪い」の適者生存の要件にも「コンプライアンス」が求められているのだ。

「呪い」に採用されるテクノロジーでキャズムを実感する

 ところで、精神病の症状のひとつに、電波を通じて頭の中に声が届く「電波系」と呼ばれるものがある。電波を通じた命令も「呪い」の一種であろうが、この症状は無線やラジオが一般化した昭和初期ごろから現れはじめ、その「発生源」は時代が変わるにつれてラジオ、テレビ、衛星、インターネット、携帯電話など、当時の最新技術が妄想に取り込まれきた。

 ここ最近では「RFIDの埋め込み」がでてきており、そろそろIoT、ディープラーニング、ナノマシンなどが登場する日も近いだろう。超自然的な「呪い」の媒介すらもテクノロジーによって進歩していく現象は興味深い。「呪い」に採用されることは、そのテクノロジーのハイプサイクルやキャズムを測る指標にもなる。

 信教やオカルティズムの自由はあるものの、その発想自体が法律やテクノロジーによって規定されているというか、規定されないと生き残りにくい。だからなんだというわけではないけど、人間の営みとを感じる。