太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

Kindle MatchBookによって「どこで買ったか?」に互換性がない時代へ

http://www.flickr.com/photos/56222080@N04/5198312613
photo by William Christiansen

「どこで買ったか?」に互換性がない時代

 AndroidスマートフォンからiPhoneに移行するのにあたって、iOSに対応していないSony Readerの書庫ライブラリが肥大化していることへの危機感があるのですが、これはSony Readerで買った書籍が、全く同じ内容であってもAmazonKindleに移行できない不自由さの問題でもありました。ほんとSony ReaerのライブラリをKindleに移行するサービスがほしい。手数料10%ぐらいは払うから。

 そして今回、『Amazon、印刷本を買うと電子版が無料〜3ドルで買えるKindle MatchBook 発表。過去の購入も対象 - Engadget 日本版』の話がでてきました。iTunesでもCDとした買った音楽をiTunes Storeからストリーミングできるサービスがありましたが、それの電子書籍版といったところです。まだ米国のみの予定ですが、なかなか衝撃的なサービスです。

Kindle MatchBook のサービス開始は米国で10月の予定。対象となるのは、アマゾンがネットで本を売り始めた1995年から現在まですべての購入書籍。のなかで、出版社側が参加して MatchBook 対応にしたタイトル。現時点では1万点以上が含まれています。


「過去から未来まですべて」が対象ながら、そもそも電子版がなかったり、出版社か参加していない場合を除くのは CD の AutoRip と同じです。またこちらも AutoRip 同様、現時点で電子書籍が存在しなかったり対応していない本でも、将来 Kindle 版がリリースされた際には無料または〜3ドルで購入対象になります。


また対象となるのは、アマゾンから新品で書籍を買った場合のみ。高価な本を非常に安く持ち回りして中古の購入履歴だけを増やして、皆でKindle Editionを安値購入するような使い方はできません。

Amazonをあんまり使ってこなかった

 しかし「Amazonの新品での購入履歴」が私にとっては壁になってきます。これまで物理本を買うときは、どちらかといえば楽天派でしたし、その前段階のネット書店黎明期では「bk1」を利用していました。

 家電や中古商品についてはAmazonが強いと思うのですが、書籍に対するインセンティブがそこまであるとは思えませんでした。ポイント大好きでしたし、基本的に本が欲しいのは書店であって、その場で購入という事も多かったです。なので、Amazonで新品の書籍を買ってこなかったのです。

 よって、このサービスが仮に日本で始まったとしても殆ど恩恵を受けることができません。既にいくつかの書籍については電子版を買った上で、紙の本をBOOKOFFで10円で引き取ってもらうという二重払いをしてしまっています。実家に戻ったりを契機に本棚を大幅に整理するとなれば、そのような事態はさらに増えていくのかもしれません。電子化ロンダリングです。

 Sony Readerの本をKindleで読もうとしても同じことが起きます。実際Rabooで買った『僕は友達が少ない (MF文庫J)』は買い直してます。死にたい。かといって「自炊」は労力に見合う価値が低いと考えています。

あと出しで「どこで買ったか?」が重視される

 これまで、どこで買っても「同一のモノ」だったはずが、「購入履歴」が付与され、それを前提としたサービスが開始することによって、その価値が後出しで大きく変わってしまうというは結構な恐怖感です。そもそも書籍は再販制度や品質特性によって「基本的にどこで買っても同じ」という前提があったわけですが、「どこで買ったか?」によって、その価値が大幅に変わってきます。

 同じような話としてApple TVでスムーズにストリーミング再生するためにはiTunesで購入しておく必要があったり、ヨドバシカメラスマートフォンを売却するときには、ヨドバシカメラで買ったスマートフォンでないとできないルールになっていたりというのがありますが、「本」のようにハードウェア互換があるのに、購入履歴の互換が後からなくなるというメディアは珍しいのではないでしょうか。

 よって本を買う時には費用対効果計算のフレームを大きくする必要があり、かつ後出しによって変わり得るボラティリティを意識しないといけない商材に様変わりしてしまったということです。ゲームなら分かるのですが「本」すらそうなってしまうというのはなんだかもにょる感じがします。「本」でゲハ的闘争*1とかしたくないよ。

 Kindleなんて日本で流行らないよ。嘲笑って軽蔑した恥ずかしい大人に、あのときなったんだね。日本でサービス開始しなければ、本当は良かったのに・・・あの日、君に投げた声に復讐されてる。やはり購入証明と相応の手数料で購入履歴を任意の小売店に移行できる「購入履歴ロンダリングサービス」について真剣に考えて頂きたいところです。世知辛いにゃーん(´・ω・`)

*1:「まじかよクソ箱売ってくる」「GK画面ブルーレイなど」