太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

タバコ休憩に対抗しての「活字休憩」にはiPhone版Kindleが便利

タバコ休憩ってズルい

 一般的な職場環境において、「タバコ休憩」が暗黙的に認められている事が多い。「タバコ休憩」とは昼食やトイレなどとは別に、自主的なタイミングで5~10分程度タバコを吸うために離席して休憩を取れるというものだ。判例としても「トイレによる離席等と同様に労働時間に含む」という結果がでており、生理現象として特権化しているところがある。

 僕自身は喫煙者ではないが、吸いたくなる気持ちも分かるし、とやかく言うつもりもない。ニコチン中毒者にも慈悲深く寛容です。その代わりといってはナンだけど、非喫煙者は「活字休憩」をしても良いのではないか。

有意性中毒者

 僕自身は重度の活字中毒……正確には有意性中毒とでも言うべきものを罹患しており、視界の片隅や聴覚の片隅に意味のある言葉が存在する状態にないと手持ち無沙汰で気分が悪くなってしまう。

 正直なことを言えば眼前の人間や絵画や映画においても言語に変換してから受容しているところがある。あらゆる状況を言語化してからでないと理解できないので、球技や運転などの反射神経を伴う作業が苦手だったりもする。

言語化中毒と相貌喪失

 また軽度の相貌喪失を自覚しているのだけど、それは完全に言語化しきれるだけの語彙も記憶力もないのに特徴を言語化して覚えようとしてしまう事から発生している側面もあると思われる。そこまで興味がない人についてはカテゴライズぐらいの言語化しかできないので、高頻度で「○○さんと××さんは僕の中だけで激似」となってしまう。

 オフ会などでも相手からの反応があってはじめて「あ、この人は以前に会った事がある人だ」と分かる一方で、ブログやTwitterの内容を詳細に覚えていたりして気味悪がられる事もある。顔ではなく文字列で覚えているのはネット時代には適合するが、リアルで2回以上会う人には不審がられやすい。そのような言語化にによる印象の比率が強い段階で人格そのものを尊敬したり、ましてや「恋をしちゃいました♪」は、互いにとって不幸になる。

活字中毒者にとってのタバコ休憩

 話が壮大に飛んでしまったが、有意性中毒者の僕は「意味」を吸引する必要があり、濃密な「意味」を短時間で得るためには「読書」が効率よい。実際、短時間の読書によるストレス解消効果は「活字中毒」に限らずとも効果があると実験からも明らかになっているようだ。

イギリスのサセックスにある大学で、心拍数などから読書・音楽視聴・1杯のコーヒータイム・テレビゲーム・散歩それぞれのストレス解消効果を検証したところ、読書は68%・音楽試聴は61%・コーヒータイムは54%・散歩は42%・テレビゲームは21%ストレス解消効果が現れたそうです。また、静かなところで読書を行えば、わずか6分間で60%以上のストレス解消効果を得られるとのこと。

 Kindleで買った本はiPhoneやAndroidで持ち歩くことができる。仕事場で文庫本を持ち歩くのは目立ってしまうが、スマートフォンを眺めるのは誰もがしていることだ。Kindleによってタバコ休憩にも限らず、電車の中であったり、踏み台昇降をしながらであったり、色々な文脈で「意味」を吸引できるようになった。

意味吸引器としてのKindle

Kindle

Kindle

  • AMZN Mobile LLC
  • ブック
  • 無料

 スマートフォンのバックライトが使えるため、電気を消してからベッドの中で読むこともできる。寝煙草は厳禁ですが、「寝読書」による意味吸引は可能だ。手元灯も不要だし、眠くなったらそのまま寝らる。防水ポーチがあれば風呂に入りながらも読める。

 そんな感じで、意味吸引をする頻度が増えていくというのは本当に良い事なのかとも思いつつも、ジャンキーになっている。これは電子書籍について「物理的な在庫がなくなった」「原価が安くなった」という話とは全く別レイヤーの衝撃である。

『新耳袋合本版』で怪談千物語を摂取

 スキマ時間に意味を吸引をするのには再現なく続く短編集がよい。例えば、『新耳袋』である。新耳袋とは実話風の短編怪談が1冊につき99篇収録されている書籍である。木原浩勝氏のドライな文体と因果関係や解釈を介さない「オチなし」感が不思議な中毒性を持ちます。かなりの人気になっていたので、タイトルぐらいは聞いた事がある人も多いだろう。

 この『新耳袋』なのだけど、Kindleで5冊分をまとめた合本版が前後編で出版されていて、合計990篇の怪談が読めるようになっている。「怪談990篇」という物量に圧倒されるが、ちょっとしたスキマ時間で一篇づつ読むのにはちょうどよい。

タバコ休憩代わりの活字休憩

 そんなわけで、『新耳袋』をタバコ休憩に対抗しての「活字休憩」として読み進めている。流石にパターンも分かってきて、もはや「怖い話」としては機能していないのだけど、それはそれで百人一首のような面白さがある。書き出しから、どう展開するのかを予想するクイズゲームというか。

 スキマ時間にiPhoneを覗くと Twitter などを読みがちだったのだけど、『新耳袋』を読み進めていくというのもなかなか乙。タバコ休憩がよいなら「活字休憩」をしたい。仕事でイラッとしても怖い話でほっこりして、また仕事に集中できるのだ。読んでる途中に話しかけられると驚いてしまうけれども。