太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

独り暮らしの自炊で食費を節約できているのは同じ食材を食べつづけられる特殊能力者だからかもしれない

今週のお題「おうち時間2021」 まあそんなことしなくても普通の生鮮食料品店で1週間の予算をちゃんと決め、献立を考えて買い物し、冷凍庫をうまく使えば安くあがるのは間違いない。ただし、そんなことができる人間はそんなに多くはないに違いない。人類の大…

河野啓『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』感想〜超高度ノー酸素単独登頂デスマッチの無観客興行に内包されるプロバビリティの死

河野啓『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』 【第18回(2020年)開高健ノンフィクション賞受賞作!】両手の指9本を失いながら〈七大陸最高峰単独無酸素〉登頂を目指した登山家・栗城史多(くりきのぶかず)氏。エベレスト登頂をインターネットで生中…

今村夏子『あひる』感想〜現実と直交する「やった感」によって「にぎやかな我が家」を作り出そうとするカーゴ・カルトの悲哀と祝福

今村夏子『あひる』 我が家にあひるがやってきた。知人から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。娘のわたしは、2階の部屋にこもって資格試験の勉強をしている。あひるが来てから、近所の子どもたちが頻繁に遊びにくるようになった。喜んだ…

福本伸行『賭博黙示録カイジ』電子版全巻605円セールで改めて体感する初期カイジの凄み

賭博黙示録カイジのセール これまでカイジシリーズについてサウナやネットカフェなどで何度も読んでいたものの、改めて買おうとなると尻込みしていた。それが Kindle セールで賭博黙示録シリーズ全巻が605円になっていて購入した。3巻までは誰でも無料。Kind…

柳澤健『2016年の週刊文春』感想〜毎週毎週行われる一億円の大博打を続ける雑誌界の銀河系軍団

『2016年の週刊文春』とノンフィクション いま、日本で最も恐れられる雑誌と、 愚直な男たちの物語――。 花田紀凱と新谷学。ふたりの名編集長を軸に、昭和、平成、令和の週刊誌とスクープの現場を描く痛快無比のノンフィクション。 2016年の週刊文春作者:柳澤…

『鍵泥棒のメソッド』感想〜記憶喪失者のメソッド演技法によるリサーチと感情の差異的な追体験

鍵泥棒のメソッド 部長が観た邦画リストは打率7割5分は固い邦画リストなので初心者にもおすすめなのです pic.twitter.com/LtCEldwOIR— 服部昇大/映子さんseason8準備中 (@hattorixxx) 2020年12月14日 『鍵泥棒のメソッド』といえば『邦キチ!映子さん』の部…

松本千秋『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』感想〜実録38歳女子のイケメンパラダイス異世界転生

38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果 cakesの大人気連載、待望の書籍化! 幻冬舎+テレビ東京+note「#コミックエッセイ大賞」第1回入賞作品 もうすぐ40歳、再婚する気まるでなし。 イケメン沼にハマったチアキの実録恋愛ストーリー 38歳バツ…

カレー沢薫『ひとりでしにたい』〜ロマンティックな孤独死は存在するか?

カレー沢薫『ひとりでしにたい』 バリバリのキャリアウーマンで生涯独身だった伯母が孤独死。黒いシミのような状態で発見された。衝撃を受けた山口鳴海(35歳独身)は婚活より終活にシフト。誰にも迷惑をかけず、ひとりでよりよく死ぬためにはよりよく生き…

風間一輝『地図のない街』感想〜地獄の断酒の中で取り戻していく未来と名前が描かれた地図

地図のない街 雪の夜、チンピラ二人組にボーナス袋を強奪され、北岡吾郎の平凡なサラリーマン人生は終わりを告げた。彼は相手を叩きのめしてドロップアウト、いつしか山谷に流れついていた。自由気儘なその日暮らし、今では立派なアル中だ。そんな彼が、同じ…

2021年の目標は給料全部お小遣い制をやめて「2021年に買ってよかったもの」を投稿しないこと

「2021年に買ってよかったものまとめ」をしない意思力 2020年は膠着感のあった2019年と比較すると在宅中心への仕事や生活の環境変化によって「いま持っている物に不満を抱く」機会が増え、さらには旅行や飲み会などで散財欲が解消できなくなったことで住環境…

一見して分かる怪しい広告は転換的デリタゲとフールペナルティによるLTVの沼を狙っている

デリタゲが重要となる時代 デリタゲとは「デリートターゲティング」の略称で、一般的には既に商品購入済みのユーザーを広告配信ターゲットから除外するような手法を指す。商品購入済みのユーザーを広告ターゲットから外す理由は「再度購入する確率が低いから…

今村夏子『こちらあみ子』感想〜環世界に埋めがたいズレがあるのに発揮される積極性の罪と罰

『こちらあみ子』の衝撃 以前に、『ピクニック』を読んでも何も感じない人間について書いていたのだけど、表題作の衝撃度のが高かった。 あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母…

ダークパターンの最大の罪は消費者の自尊心を削る加害行為にこそある

ダークパターン議論の盛り上がり ダークパターンは、主にウェブサイトなどでユーザーを騙すために慎重に作られたユーザインタフェースであり、「"購入ボタン"よりも"定期購入ボタン"の方が目立つ配色や大きさになっている」や「登録は簡単なのに退会が非常に…

情報ビオトープを整備するために後で読んでこなかった「あとで読む」をときめき駆動で棚卸し

あとで読んでこなかった「あとで読む」 Twitter や RSS で見かけた記事をあとで読むために Pocket に保存していたのだけど結局あとで読まないことが多かった。目についた記事をいちいち読んでいったら時間がいくらあっても足りないし、現に読まなくても自分…

Evernote をやめて Mac/iOS 標準のメモアプリで iCloud デバイス同期したら諸々便利

さよなら Evernote 5年ほど前には Evernote に依存して文書管理をしていた。Evernoteに関する複数の著書が出版されていたし、エクストリームな使いこなしがひとつのトレンドになるぐらいだったのだけど、結果として自分の普段使いからはヘビーで必要のない機…

柚木麻子『ナイルパーチの女子会』感想〜怠惰なブロガー的コミュニケーションの隘路とラブファントム

ナイルパーチの女子会 商社で働く志村栄利子は愛読していた主婦ブロガーの丸尾翔子と出会い意気投合。だが他人との距離感をうまくつかめない彼女をやがて翔子は拒否。執着する栄利子は悩みを相談した同僚の男と寝たことが婚約者の派遣女子・高杉真織にばれ、…

テレビを捨ててNHKを解約すると手取り年収が2万6040円増やせる

テレビを観ない生活が当たり前になった 4年ほど前にはテレビを観ている時間が多かったし、NHKの朝ドラやドキュメンタリーなども観ていたのでNHKと契約しないわけにもいかなかったが、現在の部屋にはテレビが必要ない。Apple TVが接続されたプロジェクターな…

『事故物件 怖い間取り』感想〜若手芸人にとっての実存的恐怖は心霊なんかよりも10年やってても売れないこと

事故物件住みます芸人の史実を元にしたフィクション TV番組への出演を条件に、「事故物件」で暮らすことになった芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)。その部屋で撮影した映像には白い“何か”が映っていた…。番組は盛り上がり、ネタ欲しさに事故物件を転々とするヤ…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想〜THRICE UPON A TIME

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観た もちろん総括的に観ることになると思うが、現時点で映画館に行くには密が過ぎるし二時間半の上映時間には憂鬱も混じってくる。自宅には快適なホームシアター環境があるし、他と同じように配信レンタルが出てからで…

ネタバレ回避駆動と感想戦参加チケットに変わりゆく映画館での鑑賞体験

シン・エヴァンゲリオンで揺れる思い 新世紀エヴァンゲリオンが完結する。深夜放送で話題になった頃に録画したり、考察コミュニティに入り浸ったり、二次創作やゲームを含めて楽しんでいたのだけど旧劇場版で自分の中ではいったんの終結。序破Qも映画館で鑑…

今村夏子『ピクニック』を読んで何も感じない人間と外部の語りにこそ本質が宿るドキュメンタリー

『ピクニック』を読んで何も感じない人間 既に32回ぐらい詳細なネタバレをくらって高精度な脳内上映ができるようになってしまった『花束みたいな恋をした』。本作に「『ピクニック』を読んでも何も感じない人間」という台詞が二回あると教えてもらって読んで…

月額課金をまとめてみて「ま、金ならあるし」と思えなかった件について

月額課金をまとめなおす 8年ほど前に節約生活をしていた頃の月額課金をまとめたエントリを発見した。当時は家賃も安かったし、インターネット利用費も無料。月額課金を請求するようなサービスがでてきても無料でやり過ごせないかを試行錯誤していたものだっ…

おうち時間を見直さざるを得なかった2020年に買ってよかったもの買わなくてよかったもの

お題「#買って良かった2020 」 もう2021年になってしまったが、2020年に買ったものを振り返っておきたい。 ベストバイをするには、「いま持っている物に不満を抱かせる」というプロセスが必要になるのだけど、今あるガジェットから劇的な不満を抱くのは難し…

『カメラを止めるな!』に描かれる野戦昇進の爽快さと危うさ

カメラを止めるな! 映画館で『カメラを止めるな!』を観ていたのだけど Amazon Prime で無料になったのでもう一度見直した。当時はリピーター客が多くて序盤の伏線で「分かっている笑い」をされてちょっと嫌だったのだけど、確かに二回目こそが面白い映画で…

原尚美『マンガでわかる管理会計』〜真のコスパ厨として不確実性を排した儲けの意思決定力を身に付ける

マンガでわかる管理会計 『マンガでわかる管理会計:はじめてでもわかる儲けのからくり』を税理士の原尚美先生から献本いたただいた。 経営をよくする管理会計のしくみと基本が、マンガで楽しくわかる! 本書は、父親の経営する和菓子会社の経営改善のために…

都知事選出馬の供託金300万は大型広告出稿と考えると安い

広告メディアとして都知事選 都知事選ポスター「300万円払えば都民1400万人にリーチできる爆安メディア」のようになってて、ひどい— 小山和之|designing (@kkzyk) 2020年6月25日 都知事選に出てくる面子がかつてないほど荒れている。これまでも又吉イエスや…

『Dead by Daylight』で相手の気持ちが分かる男になる

デッドバイデイライトにどハマり ここの所でやっているゲームは『Dead by Daylight(以下DBD)』である。ネットラジオで話題になったり、実況配信を観たりしているうちに自分でもやりたくなったのだ。 DBDの特徴は「非対称ゲーム」と呼ばれるネット対戦ゲーム…

若者のスクショ共有文化はもう戻せないのでカジュアルOCRを推進すべき

若者のスクショ文化 若者のスクショ癖を腐すの嫌なんだけど、1万回注意してもアシスタント(25歳)が参考資料などをスクショで送って来るので1万1回目のキレをかましてしまった地図でもサイトでもスクショで送ってくる情報追えねぇからURL貼れっつってもURL…

バイオハザード攻略はロングランバッチ処理のRDBMSコミット戦略説

はじめてのバイオハザード 実の所でこれまでバイオハザードシリーズをプレイした事がなかった。次世代ゲーム機ではセガサターンを選んでいたし、ラジコン操作に頭が痛くなりそうで初代から敬遠していた。ナンバリングタイトルは順番にやっていかないと気が済…

久部緑郎『らーめん再遊記』感想〜コロナ直前のラーメン事情と安全なイデオロギー闘争

ラーメン語りの再定義 TRYラーメン大賞2019はラーメン語りの世代交代が明確になった記念碑的な会となっていた。 石神秀幸は、そう残して完全引退する。ラーメンという大衆食の評価を少数の権威に任せるのは難しい時代になった。大衆が人気店を決める中でも評…