本多静六『私の財産告白』
金融リテラシーを高めるための名著として名高い本多静六の『私の財産告白 』を読んだ。著者は慶応二年(1866年)に生まれた明治時代の林学博士で、日比谷公園や明治神宮の設計・改良に関わる一方で、大学教員による収入を基礎にしながら貯蓄と投資によって莫大な財産を築いたという。
60歳になると全財産を公共事業に寄付。少しづつ残していた銀行の株券なども敗戦によって紙くずとなり、僅かな恩給、賃貸収入、原稿料、講演料等で質素に暮らす晩年を送っているとあっけからんと告白している。
ベンチャー起業などをするわけでもなく、貧乏な少年時代を送った一介の給与所得者が一代にして巨万の富を築いて、また質素な生活に戻っていくおとぎ話のような展開でありながら、ひとつひとつの過程は今日でも通用する普遍的な一般論という不思議なバランス感覚が面白い。